拝啓、地平線の君へ───

玄花

今日話 拝啓、地平線の君へ───

教室の片隅に僕が居る。そして、

同じ教室の何処かに一人の少女が居る。


これは共学の学校においては当たり前の事実で

あり、驚愕する理由なんて物からは何処までも

程遠い事象である。だが、自称も他称も通称も

分からない。は何と呼ぶべきか?

この心の名前を僕はまだ知らない。は間違いなくたがいなく隙も無く、普遍的でも、

全く不変的でもないそんなモノ。僕にとって彼女は地平線よりも遠く、果ての無き者。

途方もない距離のその先に居る存在だ。

存外かけがえのない存在は近くにいるという

言葉なんて信用ならない程に、だ。賭博の如く

その地平線をどれだけ駆けようにも辿り着け

ず、その距離にどれだけの数を掛けようとも

事足りる事なんて有り得無い。逆に割って

みるべきか?もう遅いのだけれども。

僕の心の奥底に不覚にも入り込んでいる彼女。

もうとっくに割り込まれてしまっているのだ。

そう、遠くとも割り切れない程に。

僕が視界に入れたその瞬間に。

さて、自身を点と表したのなら彼女は天とも

言えるだろろう同じ読みがあったとて

線として結ばれる事なんて有り得ない。

遥か遠くにいる、遥か高い空に咲く高嶺の花。

値打ちなんてものじゃ計り知れない。

図らずとも僕の心にはそう見えてしまう。

流石だと言うべきか?いや違う

光を返すだけの石じゃない、それでは僕の

意思が意識が軽石の如く飛ばされて流れて

しまっている様な物だ。彼女を思う心が

ただ流るる石の如く、だなんて軽薄希薄な

考えは要らない。流星の如く、自身で輝き

燃える様なこの心。流水の様に流れ込み、

僕を大蛇の様に締め付ける何か。気迫では

解けない程に絡まり捻れたこの解を、

僕は深く追い求める。深海よりも深淵よりも

信念を貫く様に一点の無を。広がり続ける真空

を無色透明で至極当然の様にそこに在る。

その真実を本心を、永久凍土のように

溶ける事なく解かれる事無く事切れず

この上無く、唯一無二の問いとして。



教室の片隅に僕は居た。そして、

同じ教室の何処かにまた、その少女も今───


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拝啓、地平線の君へ─── 玄花 @Y-fuula

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