2、前世を思い出す
その後何度試してみても使い魔は召還できなかった
諦め帰ることになったローゼリア、帰りの馬車では父と母がずっと慰めていてくれたがその慰めも心には響かないぐらい傷心していた。
屋敷につくと世話もいらないとしょげた様子で部屋に一直線に戻っていった。
(なんでよ……なんでなのよ)
ローゼリアの目にはじんわりと涙が浮かんでいた
やりきれない思いをベッドの上で枕をぽすぽす寝具に打ち付けることで消化する
「召還紋は確かに有るのに……」
手の甲を見ると召還者と使い魔を繋ぐ召還紋が刻まれている。
召還者は手の甲に使い魔は身体の何処かに契約した証として刻まれる召還に失敗したかと思われたローゼリアの手の甲には確かに召還紋があった。
(でも、召還したパートナーが居ないんじゃ意味ないわね……)
泣き疲れたローゼリアは睡魔に襲われていった、そしてとある夢を見た。
そこでは黒髪黒目の自分が小説を読んでいるところだった。
「それにしてもローゼリアやることやるわね」
小説を一通りよんだ自分はローゼリアがいかにひどい女か呟いていた
小説の中のローゼリアはヒロインの教科書をビリビリに破いたり、階段から突き落としたり毒殺未遂を起こしたりいた。
「でもまぁ、最終的に断罪されるんだけどね」
「せいせいするわ~」
「それにしてもローゼリアは太ってるな~挿し絵のローゼリア足と腕がむっちむちじゃない、そりゃヒーローも可愛いヒロインを選ぶよね」
小説のローゼリアは持ち前の巨体でどしんどしんとヒーローの皇太子に近付いてすり寄っては無下にされていた。
「でもローゼリアは召還失敗してからやけになって周りに当たり散らかすようになるけど、実は召還失敗してないのよね、設定資料集にも書いてたし、勘違いって怖~」
そうローゼリアは召還に失敗していなかったのである、ただ見えていなかっただけで……
「でもその召還していたのが虫って嫌だな~
進化するらしいんだけどそれ以上は書いてないんだよね」
(わたくし召還出来ていたの?それも虫……?)
はっと目を開けると朝日が窓から差し込んでいたいつの間にか朝になっていたようだ。
やけにリアルな夢で自分のことを話していた黒髪黒目の女。
(……思い出したわ……私は前世でこの小説を読んだことがある……!)
この小説は身分違いの恋で揺れるヒーローとヒロインを描いた作品だった
そして自分は小説の中のヒロインを虐めた罪で断罪される悪役令嬢……!
設定が使い魔を軸とした作品だからもの珍しくて覚えていた。
ベッドから起き上がり、ドレッサーの前に走って行く
(間違えない……この真っ赤な髪に血のような真っ赤な目、紛れもなく私は悪役令嬢ローゼリアだわ……!)
そこには十年後に悪役令嬢として断罪される前の七歳の少女が写っていた。
「落ち着きなさいわたくしまだ断罪されると決まったわけではありませんのよ……そして、まだ太ってない!」
夢の中の自分はローゼリアを散々馬鹿にしていたけど自分は太ってなどいない…!
多分使い魔召還を失敗してから自暴自棄になって暴飲暴食を繰り返してあの体型になったのだと思われる。
そしてあの言葉
『ローゼリアは召還失敗していないのよね、召還したのが虫なのが嫌だけど』
「わたくしは虫を召還していた……?」
その声に反応するように一匹の蚊が手のひらにちかよってきた。そして召還紋にぴとっと止まった。
「ぎゃ~!!!なんで蚊なのよ!!!!!」
そうローゼリアは蚊を召還していたのである。
「お嬢様!?いかがなされましたか!?」
ローゼリアの叫び声を聞いてメイドが部屋に入ってきた。
このことを話そうか迷ったがやめた虫だから退治されるに決まってる。
「なんでもないわ……ただちょっと叫びたくなっただけ…」
苦しい言い訳だったが、昨日召還に失敗して傷心して帰ってきた主のことを思うとメイドは悲しそうな顔をして
「……ローゼリア様おきになさらないでくださいませ、気分転換に朝食を持って参りますので食べてくださいますか?」
「ええ食べるわ、下がっていいわよ」
ひくりとした笑みを張り付けてローゼリアは言った。
まさか自分が蚊を召還していただなんて、だから召還しても見えない探せないはずだ
蚊は手の甲に止まって此方を伺っているのか手を擦りあわせて様子を見ている
(まじまじと見ちゃった気持ち悪いわ!!)
「……あなたが私の使い魔さん?」
蚊は手を擦りあわせてなにも言わない。だが、召還紋に乗っている様子から自分がお前の使い魔だとアピールしているようだ。
ローゼリアは白目を剥きそうになっている。
だが召還に失敗していないのだということを知れてなんとか踏ん張ることができた。
召還されたのは蚊だけど。
「いいわよ……幾らでもわたくしの血を飲みなさい…!わたくしがあなたをれべるあっぷさせて見ますわ…!」
蚊は待ってました!と言わんばかりに血を吸い始めた。
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