☆隠すとためにならないエロ同人みたいなことになるぞ!
共通歴2025年、初夏――
仲間が信じて送り出してくれたあの日から、かれこれ3ヶ月が経った。
長い放浪生活で着たきり雀していたレンジャー装備が日差しと土埃に色あせ、ショートボウの弦がいささか弛んできた頃。
俺はようやく手がかりの一片を掴み取った。
今日までの俺の旅路は童謡【犬のお巡りさん】だった。
『貴方のお家はどこですか?』と聞かれても、
『わからない。俺が元々いた世界はなんと呼ばれている場所なんだ? 名前は御船浅次郎と申す、お家がわからねぇからお家の場所を聞いてるんじゃないですか! わかんないけど教えて下さいよ! ニャンニャンニャンニャンッ!』
と聞き返す他にない。
とにかくわからない、わからない。
俺はわからない場所をずっと探し続けていた。
しかし俺はこの学術都市アサティスで、異世界からの召喚魔法を生み出した賢者の――孫弟子さんを発見した。
「さあ吐け!! 隠すとためにならないエロ同人みたいなことになるぞっっ!!」
ためになるエロ同人があったら、ちょっとだけ読んでみたい。
「い、言えませんのっ! そもそもあの魔法は禁忌の術……っ。貴方のような怪しい、全身緑色の人に教えられるわけがありません!」
「み、緑は関係ないだろっ、緑は!?」
孫弟子はたれ耳のエルフさんだった。
少しポッチャリとした、足の太い、眼鏡の、なんか好きな人はメチャ好きそうなキュートな女教授さんだった。
アサティス学術大学の研究室に忍び込んだ俺は、あくまで紳士的に女史との交渉に入った。
ちなみに夜なのに、朝でぃすってな。
「いいえ、全身緑なんて怪しいですの!」
「き、貴様……っ、ちょっとぽっちゃりしてて眼鏡でかわいいからってっ、言ってはならないことを!」
「それに無駄です! 賢者様はあの術の応用を恐れて封印されたのです! その孫弟子であるわたくしが、少し拷問されたくらいで秘密を吐くわけ――――ひっっ、ひあぁぁっっ?!」
俺が器用さ:9999の人差し指で、女史の耳に『ちょんっ』触れると悲鳴が上がる。
そしてその指を『スススス……』と触れるか触れないかの絶妙な間隔で横に滑らせると――
「んっ、んあっっ、は、はひっ!? はっ、はぁぁぁーっっ!?」
敏感なエルフ教授は内股になって床に崩れ落ち、しばらくの間、ピクピクと身を震わせるばかりでまともに動かなくなってしまった。
「ククク……さあ、異世界召喚魔法の秘密を吐け! さもなくば次はっ、肩とか背中とか首筋に同じことをしてやるぞ!」
「そ、そんな……っ、そんなことされたら、わ、わたくし……っ」
「フハハハッ、耐えられまい。ならば素直に吐くのだっ、召喚魔法の秘密を!」
「ま、負けません……っ、貴方のような緑の人には、絶対……負けません……っ!」
「緑が好きで何が悪い!!」
好きな色を否定された悲しみを怒りに変えて、俺は強情なエルフ教授の首筋を4本の指でジェントルタッチした。
「んっんあっっ、はっ、はぁぁぁーーっっ♪♪」
エルフ教授は世にも幸せそうに甘い声を上げて、先ほどよりも激しくビクンビクンと身を震わせて、ついには失神してしまった。
おお、なんと恐るべきセクハラ力!
禁じられた力!
こんな品性のかけらもない力を持ちながら、いまだに童貞なんだから恐れ入るぜ、俺!
・
「ぁ……わ、わたくし……」
彼女が失神から目覚めるまでしばらくの時間が必要だった。
やっと目を開いたエルフ教授は頬を上気させながら、ハァハァと甘ったるく息を乱し、期待の眼差しで俺を見ていた。
「さあ、吐け! 元の世界に俺が帰還するために!」
「はい……♪」
「そうか、まだあらがうか! よかろ――って、あれぇっ!?」
禁忌の術って言う割にギブ早くねぇ!?
「全部知っていることお教えしますから……もっと……もっとして下さい、緑の方……♪」
エルフ教授は切なそうにふとももをすり合わせていた。
出会って10分も経っていない女性の目に、俺はハートマークが見えたような気がした。
「あの、どうしても、もっとしないと、ダメか……?」
オレ、コノチカラ、アマリ、ツカイタクナイ。
だって下品じゃん!
俺のやってること最悪のセクハラでしかないし!
てか普通に性犯罪みたいな!?
「はぁ、はぁ……ん、んん……っ♪ わたくしぃ、カエルを連想してしまうので、はぁぁ……っ、長らく緑色が、大嫌いだったのですが……。好きに、なってしまったかもしれません……♪」
「バカ者ーっっ、お前は緑をわかっていなーいっっ!!」
「はっ……はぁぁぁぁぁーーんっっ♪♪」
むっちりしたふとももに指先を滑らせてワンタッチでわからせると、エルフのお姉さんはまたもや失神していた。
・
エルフのお姉さんは目覚めると、抱えていたストレスが全て消えてしまったかのような、スッキリと爽やかな賢者モードの顔をされていた。
それから洗いざらい、本当に全部を語ってくれた。
「ミフネ・アサジロウ様、これがわたくしの知る全てです。貴方が元の世界に帰還されるには、【賢者ドロシー・トト様の散逸した手記】を集め、本当の異世界召喚の魔法を覚えるのが、正道かと」
学者さんの言うことは専門用語がやたらに多くて、概要すらてんでわからなかった。
「えーと、つまり、どいうこと……? バカにでもわかるように簡単に言い直して?」
「散逸した3つの手記を集めて下さったら、わたくしが貴方に、真の異世界召喚魔法を教えます」
「すごい、バカでもわかるーっ! とにかく【賢者の手記】を集めればいいんだな!」
「はいっ! そうすればもう一度……緑の方とお会いできて、わたくしも一石二鳥ですから……」
「俺、そんなに緑色かな?」
「はいっ、ここまで全身緑の方は初めてです!」
そんなに、緑かな……?
レンジャーマント、レンジャーウェア、レンジャーズボン、レンジャーグローブ、レンジャーバンダナ。王に支給させた装備はブーツ以外全て緑色だった。
「あ、あの、緑の方……手記が集まったら、わたくしと、ゆっくりとお食事でも……」
「もちろん。協力してくれるなら金でもなんでも払う」
「い、いえ……っ、それよりもまた、さっきのを……たくさん、二人っきりでして下さるだけで、十分ですから……♪」
「あ、はい……」
怖……。【器用さ:9999】怖……っ。
ちょっと撫で撫でしただけで女性がこんなにデレるとか、もはや催眠と何も変わらない!
ジゴロ王に、俺はなれるっ!
いや、ここはエルフ教授がチョロい女性だっただけだ、と考え直しておこう……。
「そういえば、エルフ教授の名前を聞いてなかったか?」
「あっ、すみません! あっちにイッている間に自己紹介したつもりが、あれは気持ちのいい夢だったのですね!」
「さ、さっさと教えろっ!」
女性との交際経験のない俺は、『イッている』という単語に動揺する自分をひた隠した。
「わたくし、ナタネ・シルフィードと申します。あ……それとこの子は、クローディア」
いつからそこにいたのか、大きくて黒い猫が目の前を横切った。
猫はナタネ教授に抱かれて、不機嫌な金色の目で俺を睨んでいる。
「フシャァァァーッッ!!」
さらには牙をむき出しにして威圧された。
しかしなんと艶やかで、高貴なる漆黒の毛並みだろう。
しかも日本人の憧れ、長毛種!
ああ、羨ましい。
俺もこの子のを抱っこしたい……!
ここだけの話、俺は獣が好きだ!
もふもふっとした生き物が大好きだ!
「お客様にダメでしょ、クローティア」
「そ、その猫……っ」
「はい?」
「触ってもいいか!?」
「ンミャァァァーッッ!!!」
盛りのついた雌猫のようなもの凄い鳴き声で、黒猫は俺の要求を拒んだ。
「はい、どうぞ、緑の方……♪」
「大丈夫だ、クローティアちゃん。俺はこう見えて、撫で撫での天才なんだっ!」
逃げ出そうと暴れる黒猫を空中でキャッチして胸に抱いた。
「フシャァァァァーッッ!!!」
「ちょ、ちょっとだけ、ちょっとだけだから許して、クローティアちゃん……! お、おおっ!!」
爪を腕にえぐり込まれながらも、黒猫のお腹を撫でた。
それは、実に、素晴らしき、天にも昇るようなサラサラのもふもふの毛並みだった……。
「ア、アォ……!? ア、アアッ!? アォ、アオォォォ……ッ♪」
「よーしよしよし。俺、こう見えて動物に好かれるんだぜ。どんな動物も、こうやって撫で撫ですれば……」
「オォォォーン♪ アォッ、アォォーンッ、ニャゴォォーーンッッ♪」
「まあ♪ クローディアも白目をむくほどに気持ちいいのねー♪」
たっぷりと黒猫を堪能してから飼い主に返した。
「わたくし、ここで待っていますから……。手記探し、がんばってきて下さいね♪」
「ありがとう、見つけたらまたくるぜ。うおっと……!?」
「ああ、緑の方……わたくしも撫で撫でして下さい……♪」
器用さ9999を悪用したら、エルフ女教授が俺の虜になりました。
頭を撫でたらうっとりして、そのままぐっすりと眠ってしまったので、そろそろ出立しようと思う。
「フシャァァーッッ!!」
『もう帰れこの陰獣!』と言わんばかりに激おこの黒猫に見送られて、俺は賢者の手記探しの旅に出た。
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