第7話-影喰いと初めての料理
■メインビジュアル(
https://kakuyomu.jp/my/news/16818093090644023638
休日の昼下がり。
「たまの休みくらい静かに過ごしたいもんだよな~。」
その時、キッチンから黒いぽっちゃりシルエットのカゲが姿を現した。
「おい航。」
「ん?」
航はコーヒーを飲みながら適当に返事をする。
「俺、オムレツ作る。」
「……は?」
航はカゲを見つめながら目を瞬かせた。
「影ばっか喰ってると飽きるだろ?たまには人間の食いもんを作るスリルを味わいたいんだよ。」
「いやいや、影喰い専門が人間の料理に手を出すなよ!」
カゲはシンクを覗き込み、キッチンの中を物色し始めた。
「ほら、卵あるじゃねぇか。それに牛乳もある。」
「お前、それでオムレツ作る気か?」
「だって、料理番組で見たぞ。卵と牛乳で作れるってな。」
「……間違ってないけど、お前にできるのか?」
カゲは自信満々に尻尾を揺らすと、冷蔵庫から卵と牛乳を取り出した。
「さぁ、俺の芸術的センスを見せてやるぜ!」
「芸術とかいらねぇから普通に作れよ!」
カゲはフライパンを火にかけ、卵を握る。
「割るって、こうだよな?」
「いや、力入れすぎだろ!」
航が叫ぶ間もなく、卵は殻ごとフライパンに投入された。
「ほらよ!」
「おい!それ全然割れてねぇ!」
航が慌てて殻を取り除いていると、カゲは牛乳を豪快に注ぎ込む。
「はい完成!」
「まだ焼けてもいねぇよ!」
航がフライパンをかき混ぜる間、カゲはスパイス棚を発見した。
「これだ!料理番組で見たスパイス使いだ!」
「使いすぎるなよ!」
その瞬間、カゲは山盛りの胡椒と唐辛子をフライパンに振りかけた。
「これでパンチの効いた味になるだろ?」
「効きすぎだって!」
やがて、フライパンから湯気と共に何とも言えない匂いが漂い始めた。
航は一口試すしかないと覚悟を決めた。
「……いくぞ。」
航はフォークで一口食べる。
――その瞬間。
「ぐはぁっ!!なんだこれぇぇぇ!」
航は声を上げて床に転げ落ちた。
「辛い!しょっぱい!苦い!なんだこの三重苦は!」
カゲは満足げに尻尾を揺らしながら言った。
「芸術的だろ?俺のセンスってやつだな。」
「センスどころか凶器だろ!」
航が涙を流しながら口を押さえると、カゲがニヤリと笑う。
「でもよ、お前の影、いい感じに苦悩が混ざってきたぞ。喰わせてもらうか?」
「俺を苦しめといて影喰いする気かよ!」
航がツッコミを入れたその時、突然カゲが神妙な顔で一言。
「なぁ、次はチャーハンに挑戦しようぜ。」
「絶対にやらせねぇ!!」
次回予告:
「カゲさんが影に飽きて新たな趣味に挑戦!?次は影を使ったインテリアデザインだ!」
航とカゲの奇妙な同居生活は今日も大騒ぎだった――。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★読者のお悩み相談コーナー: 「カゲさんに聞け!(ↀДↀ)✧」
お悩み: 「料理に自信がないんですけど、どうしたら美味しく作れますか?」
(読者: 一人暮らし・20歳)
カゲ:
自信なんていらねぇよ。
影喰いと同じで、やってみて失敗してから学ぶんだ。
ただし、失敗が積み重なると料理だけじゃなく影も濃くなるから注意しろよ。
俺?
俺は影喰い専業だから失敗しても喰えるんだよな~。
ま、航みたいな奴を巻き込むのも一興だぜ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【影喰いの黒ねこ】本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16818093090548222724
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