第6話-影喰いと掃除機バトル
休日の朝、陽射しがカーテン越しに部屋を照らす中、
「さて、年末に向けて少しずつ片付けるか。今日は床をピカピカにしてやるぜ。」
航は意気込んで掃除機のスイッチを押す――その瞬間。
「おい!」
カゲが突如、ソファの上で飛び起きた。
「なんだ、その筒みたいな機械は!怪しいぞ!」
「お前、掃除機知らねぇのか?」
航は呆れ顔で答えるが、カゲはその黒い尻尾をピンと立てながら警戒を強める。
「なんだその動きは……影喰い界の貴族様が機械にビビってんのか?」
「ビビってねぇ!俺はただ、この異物の危険性を考えてるだけだ!」
カゲは自分の体型を隠すように尻尾で覆いながら、ソファの隅に身を縮めた。
航はため息をつきながら掃除機を動かし始めた。
「ほら見ろ、ただの掃除機だよ。ただの埃吸う機械だ。」
「ふむ、埃ねぇ……。」
カゲが興味深げに掃除機をじっと見つめる。
その瞬間、航が何気なく掃除機のノズルをソファの近くに向けると、カゲは突如として大きく飛び退いた。
「おいおい!今なんか吸い込もうとしただろ!」
「ただの埃だっつってんだろ!」
航は苦笑いを浮かべながらノズルをカゲに向けた。
「なっ、なんだその筒の吸引力は!これ、俺の尻尾まで吸い込むつもりか!?」
カゲが慌ててソファから飛び降りると、部屋中を逃げ回り始めた。
「おいおい、部屋掃除するんだから大人しくしてろよ!」
航が掃除機を持って追いかけるが、カゲは影喰いの俊敏さを見せつけ、次々と家具の下に潜り込む。
「うわっ!待て、カゲ!今、埃を吸い取ってるんだから邪魔すんな!」
航がノズルを床に向けると、カゲが急に反応を止めた。
「……おい、この音、よく聞いてみろ。」
カゲが耳を動かしながら、じっと掃除機のモーター音に聞き入る。
「お前、今さら音が気になるのか?」
航は怪訝そうに聞き返すが、カゲは真剣な表情を浮かべる。
「この音だよ……この何ともいえない低音、そして徐々に高まる音のトーン……!」
「いや、ただの掃除機のモーター音だろ。」
「違う、これはまるで、影喰いの儀式を思わせる厳粛な音色だ!」
「お前の儀式、そんなに機械的なのかよ!」
カゲは興奮した様子で掃除機にじりじりと近づいていく。
「ちょっと触ってみてもいいか?」
「ダメだ!お前が触ると壊れそうだ!」
航が必死に止めようとするが、その瞬間――。
バシッ!
カゲが勢いよく掃除機のノズルを叩いた瞬間、スイッチが入って掃除機がフル稼働し始めた。
「うわぁっ!」
吸引力に驚いたカゲはその場で飛び上がり、尻尾をブンブン振り回す。
「なんだこれ!俺の影まで吸い込む気か!」
「だから影は吸えねぇんだよ!」
航が叫びながらノズルを取り上げるがカゲはまだ警戒を解かない。
「待てよ、この掃除機……もしかして、影を吸い取る新兵器なんじゃねぇのか?」
「お前、陰謀論に走るなよ!」
最終的に航が掃除機のスイッチを切り、一息ついた頃にはカゲは部屋の隅で丸まってふてくされていた。
「ったく、何だよこの疲れる攻防戦は……掃除だけで一日潰れるじゃねぇか。」
カゲは尻尾で顔を隠しながらボソリと呟いた。
「掃除機なんてもう使うな……俺の影喰いのプライドが傷つく。」
「いや、プライドと埃は関係ねぇだろ!」
航が掃除機を片付けながら叫ぶと、カゲが尻尾を振り上げ毒舌を放った。
「お前もちゃんと影の掃除をしろよな。埃だけじゃなく心の掃除も忘れんな!」
航は肩をすくめながら、部屋の窓を開けた。
外から入る清々しい風が、少しだけ気持ちを軽くしてくれるようだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★読者のお悩み相談コーナー: 「カゲさんに聞け!(ↀДↀ)✧」
お悩み:
「カゲさん、掃除がどうしても好きになれません。やる気を出すコツってありますか?」
(仮想読者: 会社員・29歳)
カゲ:
掃除が嫌いだぁ?まぁ分からねぇでもない。
埃なんて放っときゃそのうち消えるだろって思いたくなるもんな。
でもよ、掃除ってのはな、影喰いと同じで“溜めすぎると後が大変”なんだよ。
やる気を出すコツか……そうだな、掃除機の音を儀式のテーマ曲だと思え。
「ゴゴゴゴゴォォォ!」って音を聞きながら、
「おお、この神聖なる吸引力で埃を浄化せよ!」ってノリでやるんだ。
そしたらちょっとは楽しくなるだろ。
いや、ならなくても気分は高まるはずだ。
あとは、航みたいな奴を召喚するのも手だな。
勝手に片付けてくれるぞ。
ただし、「お前、何もしてねぇくせに影だけ喰うな!」って怒られるかもしれねぇけどな。
結論?とにかく、やる前に色々考えすぎんな。
掃除なんか適当でいいんだよ適当で。
埃に勝とうとするな共存するつもりでやりゃいいのさ。
次のお悩みも待ってるぜ!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【影喰いの黒ねこ】本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16818093090548222724
【カクヨムコン10に参加してます応援よろしくお願いします】
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