第2話-影と洗濯物:カゲの侵略と航の攻防
■メインビジュアル(
https://kakuyomu.jp/my/news/16818093090644023638
休日の午後、天気は快晴。
航は洗濯物を抱えてベランダに出ていた。
「よし、今日のミッションは全て干し終わるまで30分以内に終わらせることだな。」
シャツやタオルを次々とハンガーに掛け、物干し竿に並べていく。
その頃、部屋の中では黒いぽっちゃりとした“何か”がゴロゴロしている。
そう、カゲだ。
「……ったく、俺に影を喰わせるどころか、洗濯物優先とはな。」
カゲは尻尾をパタパタさせながら航を横目で見ている。
航がベランダでせっせと干している最中、ついにカゲが動き出した。
ぽてぽてとベランダに近寄ると、ぷっくりしたフォルムを陽射しの中に晒しながら、首を傾げる。
「おいおい、航。これいい影だな。」
「はぁ?何がいい影だよ。」
航はシャツを干しながら振り返る。
カゲは興味津々で干したシャツの裾をクンクン嗅ぐようにしながら、
「お前、洗濯物に影がついてんじゃねぇか。これ、俺に喰わせろ。」
とニヤリとする。
「喰わせろって、お前な……これ、ただの洗濯物の影だろ!?」
航がツッコミを入れるが、カゲはますます前のめりになる。
「いやいや、この影は絶妙だぞ?ほら、タオルの皺が作る陰影とか……芸術的じゃねぇか!」
「芸術じゃなくて、ただの陰だっつーの!そもそも洗濯物がシワシワになんの困るだろ!」
航は慌てて洗濯物を守るように腕を広げた。
しかし、カゲはその隙をついて、ふわっとシャツに潜り込む。
「おいおい、これ、案外居心地いいなぁ。」
シャツがぷっくりと膨らむ姿に、航は頭を抱える。
「やめろおおお!それ、今干したばっかりなんだぞ!」
航が必死にシャツを引っ張るが、カゲは丸くなってしまい、びくともしない。
その時――。
「……なんだろう、猫でも暴れてるのかな?」
隣の部屋から女性の声が聞こえる。
航は一瞬で凍りつく。
「(まずい!こんな得体の知れないシルエット、猫に見えるわけがない!)」
隣人に気づかれたら説明がつかない、と焦る航。
するとカゲはさらに調子に乗って、シャツの袖からひょっこり手足を出した。
「やっぱり俺、普通の猫じゃないんだよなぁ~。これぞ唯一無二の影喰いのフォルム!」
そのまま、陽射しの中でシルエットを投影。
それを見た航は絶叫した。
「おい、完全に狸の置物じゃねぇか!!」
確かに、カゲの影は狸の信楽焼そっくりだ。丸っこいフォルムに短い足。
猫らしさゼロだ。
隣人の女性がさらに疑念を深める声がする。
「……あれ、猫じゃない?狸かな……?えっ、狸!?」
「やめてくれえええ!」
航はカゲを引きずり出そうとするが、カゲはどっしりと洗濯物に居座ったままだ。
「おい航、俺のこと狸扱いするなよ。これでも影喰いの高貴な存在なんだからな。」
「高貴な存在が洗濯物に居座ってんじゃねぇ!」
最後は航が無理やりカゲをシャツから引きずり出し、なんとか洗濯物を守り抜いた。
しかし、干したばかりのシャツはクシャクシャになり、タオルにはカゲの体型に合わせた皺が残っている。
「次からベランダ出禁だ!」
航が息を荒らげながら宣言すると、カゲは悠然と部屋に戻っていく。
「ま、これでお前のストレスがちょっと減ったんなら、俺の勝ちだな。」
「勝ちも何もねぇよ!」
航とカゲの奇妙な同居生活は今日もこうして続いていくのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★読者のお悩み相談コーナー: 「カゲさんに聞け!(ↀДↀ)✧」
お悩み: 「カゲさん、影喰いしてるときに一番気をつけてることって何ですか?」
(仮想読者: 大学生・20歳)
カゲ:
気をつけてること?そりゃ簡単だ。
喰いすぎて腹壊さないことだな。
影も結構消化が大変でな、濃い影だと腹に溜まりやすいんだよ。
それに、喰いすぎるとこのフォルムがさらにぽっちゃりするから、航がうるせぇんだよな。
「影喰いのくせにダイエットしろ」って。
まぁ、気にしてねぇけどな!影を喰うのが俺の仕事だ。
それにしても、お前も影育てすぎるなよ。
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【影喰いの黒ねこ】本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16818093090548222724
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