【一話ごと完結】影喰い日記: 一匹と一人の同居生活【スピンオフ短編集】
yukio
第1話-リモコン争奪戦!影喰いとテレビ鑑賞の攻防
■メインビジュアル(
https://kakuyomu.jp/my/news/16818093090644023638
部屋の中で静かに響くのは、壁掛け時計の秒針の音だけだった。
外はまだ明るく、窓から差し込む陽射しがソファに寝転ぶ航の顔をじりじりと照らしている。
「さて始まった!!」
今日は長年応援しているチームが特集されるらしい。
しかし、その平穏は長くは続かなかった。
ソファ横の床にどっしり座る黒い“ぬいぐるみ”
――いや、正確には影を喰う謎の存在・カゲが、うんざりした声で口を開いた。
「おい、今日は俺に影を喰わせなくていいのか?」
「……は?」
航は画面から目を離さないまま答える。
「何だその反応。影溜め込んでるんじゃねぇのか?最近またイライラしてるだろ。」
「別に……溜め込んでねぇよ。今、特番中だから!」
航はリモコンを握り直し、身を乗り出す。
画面には華麗なドリブルを披露する選手の姿が映っている。
カゲはじっと航を見上げながら、どっしりと座った体をゆっくり揺らす。
その動きは狸の置物そのものだ。
「ったく、お前がストレスで影育てまくると、俺が太るんだぞ。見てみろよ、この腹!」
カゲは自慢げにぽっこりとしたお腹を両手(前足?)で叩いてみせる。
「だからそれはお前の運動不足だろ!」
「俺は影喰い専門だって言ったろ?運動なんて柄じゃねぇんだよ。」
航はカゲの文句を無視し、再び画面に集中しようとする。
すると、カゲがむくりと立ち上がった。
「しょうがねぇな……そのリモコン、ちょっと貸せ。」
「は?お前がリモコン持って何すんだよ。」
「影喰いの儀式でも始めるか?」
「そんなもんねぇだろ!」
航がツッコミを入れる間もなく、カゲはその丸っこい体を揺らしながら素早くリモコンを奪い取った。
「返せよ!」
航が手を伸ばすが、カゲは絶妙なジャンプでソファの背もたれに飛び乗る。
その動きはその体型からは想像もつかない軽やかさだ。
「いいか?影を溜め込むってのは良くねぇんだ。早めに処理するのが一番――」
「お前が健康法を語るな!それよりリモコン返せ!」
航が追い詰めようとソファに登ると、カゲは器用に尻尾でリモコンを押さえ込む。
「おい、これ以上近づくとリモコン落とすぞ。」
「ふざけんなよ!それ、落としたら壊れるだろ!」
緊迫した攻防の中、リモコンがついにカゲの尻尾から滑り落ちた。
「……っ!」
航が慌てて拾おうとするが、その瞬間――。
テレビ画面が切り替わり、突如として料理番組が映し出された。
「……なんだこれ。」
画面には、シェフがジュージューとステーキを焼いている様子が映っている。
「へぇ、うまそうじゃねぇか。」 カゲが画面に興味津々で見入る。
「いやいや、サッカーだろ!戻せよ!」
「ちょっと待て。これ、いいストレス解消になるぞ。」
「何で影喰いするやつが肉に癒されてんだよ!」
カゲは大きな尻尾を揺らしながらニヤリと笑う。
「肉を焼く音ってな、ストレス軽減効果があるんだぜ。知らねぇのか?」
「そんなもん信じねぇよ!」
結局、リモコンを巡る争いはうやむやになり、二人は並んで料理番組を観る羽目に。
画面に映るジューシーなステーキに、まさかのカゲの腹がぐぅと鳴った。
「お前、影喰いじゃなくてステーキでも喰えよ。」
「うるせぇ!」
航とカゲの奇妙な同居生活は、今日もこんな調子で続いていく。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★読者のお悩み相談コーナー: 「カゲさんに聞け!(ↀДↀ)✧」
お悩み:「カゲさん、理想の人生って何だと思いますか?」
(仮想読者: 主婦・40歳)
カゲ:理想の人生?
影喰いの俺にそんなの聞いてどうすんだよ。
俺に言わせりゃ、影が濃かろうが薄かろうが生きてるだけで立派だ。
影が全然ない奴なんてこの世にいねぇしな。
それに、理想ってのは自分で作るもんじゃなくて流れで変わってくもんだろ。
とりあえず美味いもんでも食って太陽の下でちょっと伸びるくらいで十分さ。
ほら、そんなこと考えてる暇があったら、美味そうなステーキでも見てみろよ
……って、航!リモコン隠してんじゃねぇぞ!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【影喰いの黒ねこ】本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16818093090548222724
【本編はカクヨムコン10に参加してます応援よろしくお願いします。】
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