第4話

設定固めてたら投稿期間空いてしまいました。申し訳ありません。


何とか年内に投稿です。

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 森を抜けてから1日程がたつ。

その日の朝方、街に向かって歩き続けていると街道を見つけることができた。


 そして夕方に近づいた頃、ようやく街に到着した。

 近づいてみると、街に入るための門には2人の門番らしき人影が見える。ただ門番は、一人は無機質で、一人は俺と同じく半透明だった。


 目前にまで近づくと、半透明の門番に止められる。

「止まれ!! 貴様どうして外にいる。 貴様のような奴が外に出た記憶はないぞ!」

「俺はそもそもこの街に入ったことがない。塔を目指して歩いていたらここにたどり着いた。」

「なに? ではなぜそんなにも軽装なのだ? ほかの街からくるにせよそんな装備では来ないはずだろう?」


 こちらに来てから俺はまだ街に入ったことがないが、この門番の口ぶりからして街の外でこの軽装はなかなかいないらしい。

 それにしてもコイツ外に出たヤツ全員覚えているのか?


「本人カらハ、マナも余リ感ジられなイ、何ヨりも上ト違ッテココならば問題ハないだろウ。」


 無機質な声が響く、マナ?上?なんだそれは? 気になるのも束の間


「うーむ、貴殿がそう言うのならば。念のため確認をする。こちらに近づいてくるがいい。」

「わかった。」


 先ほどからの上から目線に多少イラっと来るが街に入りちゃんとした寝床を確保すべく表には出さない。


 指示通りに近づくと無機質の方はなんだか人形?っぽく、半透明の方は、明らかに西洋人のようだった。


「ん?ここいらでは見ない顔つきだな、東の出か、それで、貴様はどこから来たのだ?名前は?」


 こいつには素直に言っても、おかしな奴としか思われそうであった為、記憶喪失もどきにしておいて一部だけを答えることにした。


「名前は悠斗、目が覚めたら森の中で、塔に向かって歩いてきたらこの街を見かけたからこちらに来た。」

「ふむユートか、森の中?その前は何をやっていたんだ?」

「覚えていない。覚えているのは名前くらいだ。」

「待テ、どう言ウことダ? 記憶喪失ダト?...いヤ、珍シいがそう言ウこともあるカ。」

 無機質な方の門番が少しの間無表情で固まる。そして軽装でここまで来たことより、記憶喪失の方が珍しいかのようにボヤく。

 

 半透明の方は、その相方の様子に気づかず、

「そうか、記憶喪失なのか気の毒に、改めて、ようこそヨーハの街へ、私は門番のジースという。もし何か困ったことがあれば私を訪ねてくるといい。私が消えるまでの間なら力になろう。」


(消える?やめるということか?)


「ありがとう。ぜひ頼らせていただく。早速なのだが、ここまで来るのに歩き疲れてしまった。宿を取るために金を稼ぎたい、それにはどうしたらいい?」

「うーむ、そもそも、この街には死者の為の宿泊施設はあるが、記憶喪失の貴様の場合は使える分からんしなぁ、どうしたものか。」

「いヤ、私ガそこを使ウことが出来る様ニしよウ。特別ダ。ジース少シの間ココを任セル。ユートと言ッタな、ついて来イ。」


 そう言って無機質な方の門番が街の中へ歩き出す。


 いきなりだった為慌ててついて行くと。


「そういえば名前ヲまだ言ッテいなかったな。ワタシの名ハ、ヴァイだ。それで、オマエは記憶喪失ノ為、これからは特別ニ死ンだばかりの者トほぼ同ジ対応ヲすル。」

「感謝する。」


 街は、中世辺りのヨーロッパの街並みで住人は、無機質な者ばかり見かけ、半透明の人間は余り見かけない。


 しばらく歩くと、街の隅の巨大な建築物に到着する。


「着いたぞ、少シここで待ッテいロ。」

 宿に入り、受付で何かを話している。


 しばらく待っていると、戻ってきたヴァイが、

「これがユートの部屋ノ鍵ダ。受付ヲ通サずそのまま部屋ニ行ッテ貰ッテいい。鍵ヲあそこのドアに翳セば部屋ニ着ク。あと、先ホどオマエが気ニなっていた金ノ稼ギ方ナどは、担当ノ物ガ居ル。詳シくはそいつに聴キにいケ。ワタシは門に戻る。」

「ありがとう、これで今日はグッスリと眠れそうです。」


 ヴァイが去った後、半信半疑で鍵をドアに翳してみるとドアが開き、もう一枚鍵穴付きのドアが出てくる。そのまま部屋に入った途端、無機質な声が響く。


『ようこそあなたの部屋へ。ご案内が必要でしたら入って右側にある赤いボタンを押してください。』


 突然のことに驚くが、とにかくもう寝たい気分であったため、ベッドに直行し、そのまま眠りについた。

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 久しぶりにまともな寝床で寝ることができたおかげか、目が覚めると時刻は昼頃になっていた。


 すっきりとした体を起こし、案内を聞くため、ドア付近にある赤いボタンを押す。


『こんにちは。こちら案内板でございます。字の読めない方は赤のボタンの隣にある青のボタンを押してください。』


 ここで気づく、案内板の文字は日本語ではないのになぜか文字が読めるということに。


(そういえば、言葉も日本語じゃない...)


 このことに若干の気味の悪さを感じつつも便利なため、あまり気にしないことにした。


 そして案内板には部屋の設備と使い方、各案内受付への行き方が書いてあり、部屋でシャワーを浴びてからそちらに行くことにした。


 シャワーを終え、案内受付に行くと、そこは閑散としていた。

そこそこの広さがあるのに対し、受付には座って資料を読んでいる一人しか居なかった。


 そのままその受付嬢に近寄っていくと、

「オヤ! お客さんですか!珍しい。ようこそ!こちらは総合案内所になります!どうぞどうぞこちらに座ってください!」


 無機質で人形のような少女が呼びかけて座るように促してくる。

その勧めの通りにカウンター前の椅子に座ると、

「改めましてローチェと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?...イヤー、皆さん興味のある受付にしか行かなくって、この総合案内受付に来た方は大分久しぶりなんですヨー」


 どうやらここはあまり使われないようであった。も左もわからない俺のような人間しか来なさそうではあったが。


「実は、色々聞きたいと思ってここに寄ったんだが色々質問しても?」

「エエ!任せてください!どんどん質問に答えていきますよー」

「ではまずここってどこなんだ?起きたら半透明になっていたんだが。」

「アー、ということはあなたが昨日報告にあった記憶喪失のユートさんですか。」

「まぁそうだけど」

「ヨーシ、じゃあ、基礎的なことから教えていきますねー」

「マズ、ここの世界は、下層世界のヘルっていう世界です!一般の方が死亡すると幽霊となってこの世界に来ます。幽霊の方はみんな半透明になってしまいます。そしてあなた半透明なので死んじゃってこの世界に来たのだと思われます。」


(あの状態から生きているとは思わなかったが、やはり俺は死んでいたのか。)


「悲しいことなのですが、幽霊の方はヘルで過ごすとマナに還ってしまいます。そしてヘルにいられる時間は個人のマナ総量と犯した罪の総量で決まります。なのでマナが少なく若いあなたは、もうそろそろマナに帰るか、記憶喪失前とんでもない極悪人ってことになりますね!」


(なるほどこいつら俺のことを極悪人と勘違いしているのか、道理で門番やコイツの対応が悪いわけだ。)


「ソレデ!どうなんです?極悪人だとほんとにじわじわとしかマナが削れないので相当に苦しいって聞きますけど!」


「いやーまぁほどほどだな、ちなみにそれって善人だとどうなるんだ?」


(ほどほどって答えたが、マナが削れていく感覚ってなんだ?そんなもん感じないぞ?)


「ソウデスネー、善人の方は浄化される感覚って言われてましたねー、ちなみに老人の方は長い人生で小さい罪をって方が多いらしいので、こちらにいる時間は少し長くなってもそこまでの苦しさではないという話でしたよ?」

「そうなのか」

「ハイ!では続けますね。そんな元極悪人のあなたにも大チャンス!もしかしたら生き返れるカモ? なんと塔に入り試練を攻略できたなら生き返れちゃう大チャンスです!」


「?!」(なんてでたらめな世界だ。)


「実は塔の試練は100コインで受けれちゃうんです!あ、ちゃんと試練の時はマナが万全になりますし、試練の中で死んでも受けるところからやり直しになるだけですよ?」

「...コインって?」

「アー、そうでした、あなた一文無しなんですもんね...コインは死んでから街の祭壇で幽霊として目覚めた直後、祭壇から配布されるヘルの通貨みたいなものです。また、ヘルで労働しても手に入ります。ある程度実力のある方ならゴブリン討伐のような魔物退治、あなたのような一般人なら町の清掃とかがオススメですよ?時間かかりますけど。」


「いや、それなら魔物退治を請け負いたい、どこで受けれる?」


「ウワー無謀ですねー、あなたのような貧弱なマナでは、ゴブリン一匹倒すのも苦労しますよー」

「問題はない。」

「マァ、自信があるなら行ってきてください。詳しくは討伐ギルドという門の近くにあるこのような剣が×字状になったマークの看板のところにあります。」

 そういって紙に書かれた絵を見せてくる。

「わかった。」

「ホカに何か質問はありますか?」

「ああ、マナってなんだ?」

「...エ?」

「だからマナってなんだ?」

「ナゼそれを知らないのです?」

「記憶喪失だからだろう?」

「ソンナバカナ、アリエナイ...」

「いいから教えてくれないか。」

 ローチェはまるで処理が追い付かなくなったロボットのように機械的に答える。

「ハイ、マナとは全テの物の根源、全テはマナからできていマス。マタ、マナを扱エル人間ハ、貯蓄マナを消費シ身体ヲ強化シたり、魔法ヲ使ウことができマス。

 そして、マナを蓄エている魔物ナドの生物ヲ殺スことにヨリ自身のマナ総量ヲ増ヤすことができマス。

 貯蓄マナとは訓練ヲすると自身ヲ構成スるマナではなく、呼吸ヤ、食事ナドの外部カら接種シたモノによって貯蓄デキるものデス。一般的ニ、マナと言ッタらこちらを指シマス。」


(なるほどゴブリンを倒したときのアレはマナが流れてきていたのか)


 そしてローチェが元に戻る。

「ハッ!ワタシ一体何を?ありえないことを聞いて少し前までの記憶が飛んでいる気がします!」

「そんなことはないんじゃないか?」

「ソッソウですよね!ほかに何か質問はありますか?」

「大丈夫だ。」

「ハイ!ではまた何かありましたらお越しください。それでは、良い死後をお過ごしください。」


 その声を背後に俺は討伐ギルドへと向かっていった。


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ちなみに善人の方の方が支給されるコインがだいぶ多いです。

後はこの世界の住人だったらマナのことは本能的に理解しているのでこんな質問をする人はいません。

(身体強化と魔法、貯蓄マナのところ以外)



ここ、こーしたらいいんじゃないとか、ここ良かったよとかなんでもありがたいので

批評、感想、誤字脱字報告お待ちしてます。

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