第3話


 今、俺は塔に向かってひたすらに歩いている。見えている塔はあまりにも遠かったらしく、ここ2、3日ひたすらに荒れた森の中を歩いたのだが、未だに近づけている感覚がない。


 そしてやっと現在、荒れていない森が目の前に広がっている...


(ま、まじかよこんなに歩いたのに人工物どころか、やっと普通の森があるだけ?)


 ちょっと心が折れそうだった。


 幽霊ということもあってなのか飲食は必要ないみたいだったが、疲れはするし、疲れると眠くなる。


 今のところ、あと少しぐらいは眠らなくとも大丈夫そうではあるのだが、そろそろ休息をとって眠りにつきたい気分だ。


 しかし、昼夜問わずゴブリンがたまにうろついているため、どこか安全を確保してから眠りにつくことができたら幸いだ。


 なんなら、ここからは普通の森だから最悪木の上で寝てもいい。

今までの荒れた森だったら木の上ではとてもではないが眠ることはできなかっただろう。


 そんなことを考えつつ歩いているともうすぐ夜になってしまいそうだったため、さすがに今日こそは寝たいと、急いで寝床になりそうな場所を探す。


 残念ながら寝床に適しているであろう洞穴などは見つけることはできなかったが、幸運?なことにしっかりとした大木を発見できた。本当ならばもっといい場所を探したい気持ちはあったのだが、もう周囲が暗く時間がなかったため、急いで登り、ある程度整え、落ちないような格好で眠りについた。


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 俺は、灰色の海にいた。自身の体は海底に横たわっている。

海面ははるか遠く、体が浮いてゆく気配もない。


 自分の力の大部分が海に流れていく感覚があるが止め方がわからない。

意識はぼーっとしていてどんどんと眠くなる...


______________________________________


「うおっ、あっぶない」

目が覚めると、剣の重さにつられてか体が木からずり落ちそうになっていた。

また、変なところで寝ていたせいで若干体が痛い、が、特に夢なども見なかったし調子自体はいい。


 大木から降り、朝の運動として素振りをし、体をほぐす、そんなことをしていると、

木の陰からひょっこり顔を出したゴブリンと目が合う...

この間の個体とは違い、今回はこん棒を持っていない。


「Gu? Gyaa---」


 ゴブリンはこちらを見るなり叫びかかり、襲いかかってくる。


 その行動に剣を少し意識すると、剣がこう動いた方が良いと言っているかの如く

自分の動きのイメージを送り付けてくる。


 俺は、意識してその動きをしようとしつつ、こちらも走り出す。


 ゴブリンが勢いのまま爪でこちらを引き裂こうとする。


「Gya?」


 それを軽く方向転換することで避け、すれ違いざまに首を落とす。


 ゴブリンだった物の首から勢いよく血が飛び出す。

それにかからないように少し距離をとると、

今度もまた、なにか微小に力が流れてくるのを感じた。


(剣の鋭さに大分助けられている一撃だったけど、大体剣のイメージ通りに動けた。)


 どうやらこの剣は意識か何かでもあるようで、ありがたいことにこちらが意識を向けると、なんとなくの意思や、剣に関連するイメージで今の自分に可能な戦闘または、修練方法を示してくれるようだった。


 これから俺は、このありがたい剣の意思を内心で師匠と呼ぶことにした。


ゴブリンとの戦闘も終わり、塔に向かって歩くのを再開する。


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 あの時、ゴブリンとの2度目の戦闘をしてから大体15日程たった。

 歩いて塔に近づくのはいいのだが、近づくにつれゴブリンが増えてきたせいで、いくら回避しようとしても回避しきれず、何度か戦闘になってしまった。


 さらにはゴブリン以外の何かを見かける時もあった。

 明らかにゴブリンより強そうな異形ばかりだったため、それら見つけるたびに気配を殺し、なんとか遭遇せずにやり過ごすことができた。


 また、時に2体3体同時にゴブリンと遭遇してしまうこともあったが、囲まれることの

ないよう、うまく立ち回ることで何とか倒し、進む。


 何度か戦闘をこなすと疲れで眠くなってしまうのでその都度大木の上で睡眠をとる。

残念なことに、いつも大木以上の寝床を見つけることはできていない。


 そんな感じでこの15日間は

歩く、歩く、ゴブリン、歩く、寝る、歩く、歩く、歩く、ゴブリン...

本当に地獄のような日々であった。


 もう、最後の方はほぼ無心で、俺は歩き続けるマシーンになってしまったのではないかと錯覚するほどだった。


 時折、師匠のイメージ通りに鍛錬でもして、気を紛らわせなければ頭がおかしくなっていただろう。

 また、ゴブリンを倒すごとにほんの少しずつだが力が上がっていっている気がする。

そのおかげかはわからないが最初と比べほんの少しだけ快適に過ごせているような気もする。まあ慣れてきただけかもしれないが。


 そんなこんなで歩き続けていると、とうとう、やっと森を抜ける。

これまでの代わり映えしない風景から解放されると思うと胸がすく思いだった。


 森を抜けた先は開けた草原になっており、

遠目に見るよりも近くで見る塔はまさに圧巻で、まるで世界に壁ができたかのように巨大だった。                                                                    


(なんだあれ...いくら何でもでかすぎんだろ、確かに横の規模も大概にやばいが、高さこれ一体どうなってんだ... 上限が見えない。)


 かれこれ数十分ほど呆けていると視界の左端に何かが見えた気がした。


 正気に戻り塔の左の方をよく見てみると、はるかその先の塔のふもとには壁に囲われた街が見える。


 2週間以上かけて、とうとう街を見つけることができた。

 今まで、人生の中でこれほどまでに人工物を見ない時間はなかったからか安心してしまい、疲れからついここで足を止めてしまおうか、という気分になってしまいそうだった。


 壁の大きさから街の規模はとても大きそうではあった、しかしどうしても塔の大きさと比べてしまうと、なんだかとても小さく感じる。


 ここから街までには、まだまだ距離があり、まだ歩かないといけないのかとガックリする。しかし、しかしだ、もうゴールが見えているという歓喜も相まってか、俺は、改めてやる気を捻出し、街に向かうのだった。


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本当は、森を出た時に塔をぐるっと1周した街を出そうと思ったんですけど、そうしちゃうと街の大きさがとんでもないことになっちゃうことに気づいたので止めました。



ここ、こーしたらいいんじゃないとか、ここ良かったよとかなんでもありがたいので

批評、感想、誤字脱字報告お待ちしてます。

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