第2話


 自分という存在の決定的な消失感を感じる。


けど、すぐに明るくて冷たいナニカが、次に暗くて暖かいナニカが俺の中を埋めてゆく感触がする。


意識はプカプカと灰色の海の中を漂っているようで心地いいようなよくないような矛盾しているけどそうじゃない、なんかこう裏と表みたいな近い感覚。


徐々に沈んでいく、沈んで沈んで...意識がここからは、なれ、、


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 ゆっくりと意識が覚醒する。なんだか変な夢を見ていた気がする。


 ただ、いくら非現実的だったとしても自分が女神に斬られた後、死んだということは明瞭に覚えている。


「ここ、どこだ?」


 周囲はなんだか嵐でも通ったかのように荒れた森、明らかに死んだときの周囲の状況とは違うし、この光景に身に覚えはない。そしてなんとなくだが日本でもなさそうだ。


 わけのわからない状況に思わず頭をかこうとすると


「うわっ! て、手が...」


 自分の手が透けていた、そのことに驚愕し、改めて全身を確認すると全身が半透明になっていた。

 急いで自分の体を触ったり地面を触る。


「あれ?触れた。」


 服を確認したり、なんやかんや実験してみると一応実体?はあるようだ。

ただ体が半透明になっているだけ。面白いのは服は脱いだら半透明じゃなくなるし、そもそもペンなどはそのままだ。

 そして今気づいたことだが、カバンはこっちに持ってこれなかったようだ。


「これは幽霊にでもなったか?他人からは俺の事見えなかったりして。」

 と自分を少し嘲笑してみても現実は変わらない、

ただ確かに俺は死んだんだという納得はあった。


「というか、死んだんだったらなんで意識があるんだ?

もしかしてここ地獄?いやけど、閻魔様らしき人物には会わなかったし...

まあ神様みたいなやつらの争いには巻き込まれたけれども。」


 死後の世界なら周囲に同じく死んだ誰かいても不思議ではないはず、そう思い口に出してみたが周囲からは反応がなくシーンと静まりかえっている。というか周囲にはなんの気配も感じ取ることができない。


 まるで世界に俺一人しか居ないかのようだった。


 色々混乱しつつも、とりあえず周囲の状況を確認しないことにはどうしようもないので

周囲を見渡す。


 周囲は荒れた森、近くには、人間大の白と黒の石?が1つずつ、

そして、ありえないことに遠目には天を貫く塔が見える。


「で、でけー」


 思わず声が漏れてしまうほど塔は大きかった、宇宙に届いているのではないかと思うほどに。果たして人類にあれほどの建造物を作る技術があったのだろうか?

あの規模だと神様が建てましたと言われた方がよほど納得感がある。


 しかし、遠くにある塔を気にしていてもしょうがないので先ず気になっていた人間大の白と黒の石?に触れてみることにする。その2つの石はそれぞれ人一人が丁度石になったかのような大きさだ。


 触ってみるとなんだか親近感がわく様な気がした。

だが、特にそれ以外の特徴はない。意味深にそこにあるにも関わらず特に何も起こらないことに落胆する。


(何も起こらないし、周りにはもうこれ以上何もない、仕方がない大人しく塔に向かってみることにしよう。)


 そうして塔の方へ歩いてゆく、少しすると圧を感じた。

そう、あの女神に似た圧が...そこで思い出す。

あの美しさを。


 俺は、体の奥から湧き上がってきた熱に浮かされるかのようにフラフラその圧に引き寄せられてゆく。


 塔への道から脇道にそれてしばらく行くと、そこにはあった

直径10mほどのクレーターの中心に刺さっている両手剣が...


(これは...まさかここに剣が落ちてきてこうなったのか?)


 そう疑問に思いつつクレーターを慎重に降り、剣に近づき、よく観察してみると、


まるで月光を閉じ込めたかのような白銀の輝きを放つ両刃の刀身

中心が丸くくぼみ、星の輝きが十字に伸びたかのような鍔

鮮やかな血のごとく赤く上品な革が巻いてある柄


 まさしくそれは剣という概念が結晶になったかのような美しさだった。


 あまりのすばらしさに思わず柄に手を伸ばす。

 一瞬本当に大丈夫なのかと理性が警告していたが、その警告はすでに遅く、

  剣に触れる。


「ァガッ...」


 白銀の柄に指先が触れた瞬間、冷たい金属の感触が皮膚に突き刺さる。息を飲む間もなく、頭の中に雷鳴が轟いたかのような衝撃を受け、、視界が真っ白に染まった。あまりの衝撃に気絶しそうになるが、この瞬間気絶したら何かがまずいと本能が告げていた。


 一瞬のような数時間のような時が過ぎ、何とか衝撃に耐え忍ぶと、するとスンっと頭の中がすっきりした。

 そしてなんとなくこの剣を引き抜かなければならないという使命感を感じ、引き抜く。


 すると剣が放っていた威圧感がパッと収まり、

まるで自分の体と剣が一心同体になったかのようだった。


 さらに剣に集中するとなんと剣からなんとなくの意思を感じる『私をこう振れ』と、その意思に従い素振りをする。


 剣の送ってくるイメージ通りに振ると着実に腕が上がってゆく感覚がある


(これはすごい!これならばあの女神にすらたどり着けるかもしれない!)


 あれに近づけるかもしれないそう考えただけで歓喜の感情が心の中から湧き出てくる。


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 そしてしばらく歓喜で我を忘れて剣を振っていると、

剣の圧力がなくなったからであろうか小柄な何かが近づいてくる。


 近づいてくる何かに気づき素振りをやめ、じっとその姿を見つめてみると、

どうやら人ではないようだ。

近づいてきたそれは醜い顔、緑色の肌に黄色い目であった。


(何だあれ?もしかしてゴブリンってやつか?まんますぎるだろ。)


 少しの間、ゴブリンがこちらに近づいてくる姿を唖然としながら見ていると、

ゴブリンが吼えた。次の瞬間、ゴブリンの黄色い瞳がギラリと光り、持ち上げたこん棒が勢いよく振り下ろされる。


 その突然の行動に、俺の身体は勝手に反応し剣を構え、こん棒を防ごうとすると、腕に多少の負荷と共に、スパッ とこん棒が切断される。意外な展開に思わず俺もゴブリンも数秒固まってしまう。


(まさか切れ味がよさそうとは感じていたがここまでよいとは思ってもみなかった。)


 ハッとして剣を正眼に構える。一方、ゴブリンはまだ衝撃から抜け切っていないようだ。

どうしようかと一舜固まっていると、あきれの感情と共に剣がこう切れというイメージを伝えてくる。俺は無意識にその指示の通りゴブリンに切りかかる。


 刃先が空気を裂いた。鋭い感触が腕を伝い、ゴブリンの胴体がすんなりと断たれる。

黒ずんだ血が飛び散り、地面に叩きつけられる音が耳に焼き付く。


 上段からの剣はゴブリンの命をあっさりと断ち切った。


 この無意識に動きこの結果が起こったため少し固まっていると、ゴブリンからなにか微小に力が流れてくるのを感じる。その何かで根源的なものが満ちてゆく気がする。


 しかし自分でも意外だったのは、ゴブリンを切り殺したというに嫌悪感などの負の感情を何も感じない、ただ感じたのは始めて実践をこなしたことにより剣の腕が上がったのであろうといううれしさだけであった。


 そして今更のような気もするが、この時が

ここは死後の世界ではなくて異世界なのかと感じた瞬間だった。


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実際に自分で書いてみると高頻度で投稿している人たちがいかにすごいかを感じますね。


それでは力尽きたので続きはまた後日。

エタらないよう頑張っていきます。



ここ、こーしたらいいんじゃないとか、ここ良かったよとかなんでもありがたいので


批評、感想、誤字脱字報告お待ちしてます。

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