戦のアリスティア - 女神に脳を焼かれてしまった男の話 -

とうふめんたる

第1話 プロローグ


俺、『剣崎 悠斗』はその日、運命の軌跡に触れた。


 ああ、きっと俺はあの日見たあの美しいものに脳を焼かれてしまったんだ...

 


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 肌寒くなってきたなぁと感じ始めていたその日、いつものように会社で仕事をし、珍しく今日は上司の機嫌が良かったため定時で帰ることができた。


 駅から出て、自転車にまたがる。ただ、今日がいつもと違ったのは、久しぶりに定時で帰れるという解放感からか気分転換として、少し遠回りしながらサイクリングでもするか、と思い立ったことであった。


 サイクリングの最中、普段は通らない道を選び、静かにゆったりと走る。、周囲が畑で人通りのない道を進んでいると、夕暮れの日差しがまぶしいと思った。


 その時—— 突如、嫌な音と共に空が割れた。


 深淵にでも繋がっているかのような深い黒、まさに次元の裂け目とでもいえるような空間の裂け目が突如、これから行く先のはずの道に現れた。


「なんだ、これ...」

 思わず言葉が漏れる。


 現実ではありえないその光景に驚愕し、混乱していると、突如その裂け目から、ブロンズ色の髪をなびかせた男が背中から勢いよく飛び出してきた。その男は、神主のような装いをしているが、どこか不自然で、荒い呼吸と所々破れた服がその異質さを際立たせていた。


 最初はコスプレをした外国人かと思ったが、その男が放つ雰囲気は人間ではないかのようであり、吹き飛ばされたかのように出てきたにも関わらずきれいに着地を決めていた。


 しばらく、状況を飲み込めずにいると、次に裂け目から堂々とした足取りで別の人影が現れた。


 それは、美しい女だった。

 透き通るような美しく輝く黄金の髪、神聖さと凛とした意思を宿す黄金の瞳に、そして清廉さと豪華さを兼ね備えた白銀の西洋鎧を着たその人物?は、一目見た瞬間それだけで魂に重圧を感じるような圧迫感と神々しさを感じた。


 この女は先ほどの男を追ってきたのだろうか?

 女のあまりの美貌に先ほどの男も相当なイケメンだったが、この女は格が違う。もはや人間の域を超えている。

普通なら一目ぼれしてしまいそうだが、今、この異常事態がそうはさせてくれない。


 我に返ると、女が裂け目から出てきたのを一緒に見ていたはずの男は、すでに先ほどの場所にはおらず、空間の裂け目から距離を取り何かを準備し警戒しながら見ていたようだ。


 そして女が裂け目から出てきたことを確認すると焦ったようにさらに距離を取り、素早く何かの札を投げ、周囲に結界のようなものが展開される。

 すると、景色が一変した。


 急激な変化に驚いて周囲を見渡してみると、畑と用水路は消え、周囲は広大な草原へと変わった。遠目に見えていたはずの林が近くより広大になり、そして致命的に違ったのは、そこそこ近くにあったはずの鉄塔が霞として消えてしまったかのように何もなかった。


 まるで違う世界に来てしまったようだ。


 現実とは思えない光景に呆然としていると、男が叫ぶ。



「くそっ!!『アリスティア』! なぜだ!なぜ追いかけてこれる!俺は異界に渡ったはずだぞ!?」


 女はこちらをチラッと見た後、当たり前だろう?といった表情でこう答える。


「そんなの簡単であろう、貴様が空けた空間の穴をこじ開けて固定すればいいだけのことだ。」


「だからと言ってこちらに正確に来れるわけがない!」

 

「ふむ、確かにピンポイントで異界に繋がる穴をあけ、この場所に来ることは難しいな。」


「だったらなぜおまえはここにいる!?」


「貴様がとってきた道を正確にこじ開ける程度なら造作もない。」


「クソッ!どれだけでたらめなんだお前は!そんなこと簡単にできるわけないだろうがこの化け物め!」


「まったく、化け物とは心外だな、まぁ貴様とは力が隔絶しているのは確かだろうがな。」


 どうやら男にとって意味不明なことを女は簡単にやってのけたらしい一体この2人にはどれほどの差があるのだろうか?

そんなことを考えているうちに一気に空気が張り詰める。


「貴様が逃げるのは構わないがそう簡単に逃げれるとは思わないことだな」


「ッチ!やはりそう簡単にはいかんか。仕方ない」


 男はそう言うとよくわからない呪文のようなものを口走りながら背後に赤青緑の光の球を準備し、女はいつの間にか手に持っていた白銀の剣を持ちながら自然体で男を見ている。


 次の瞬間、爆発的な魔法と剣技が交差した。

空気が一気に爆発し、思わず目をつむり、しりもちをついてしまう。

目を開けると2柱による凄まじい戦いが繰り広げられていた。


 男が3色の光球を次々繰り出して炎水風を巧みに操ることによって女へと攻撃を仕掛けていく。

その攻撃のたびに周囲が一気に熱くなり、湿度が高くなり、そして荒れ狂うかのような風を感じる。


 まさに荒ぶる神が暴れているかのような光景だった。


 しかし、しかしだ、その矛先が向いている女には何一つとして効いていない。

女は攻撃をしていなかったが別に男の攻撃を攻撃とも思っていないかのような立ち振る舞いであった。


 なぜなら涼しい顔をしながら、炎も水もそして風さえまるで現実とは思えないほど狂わしく美しい剣技を使い一太刀で切り裂いてゆく。その光景は、まさに剣の神がそこに降臨しているかのようだ。


「ふむ、やはりこの程度か、防御魔法を使うまでもないな。異界に逃げ込んだときはもう少し期待したのだが...」


 女は男の攻撃を軽々しく防ぎながら1太刀で男を切り裂く。


「早く出てこい私に幻術のような小技など効かん」


 どうやら男は周囲に幻術という催眠術のようなものを掛けこの場から離れようとしていたみたいだ。

だが、どうやらそれは女には効かなかったらしくまた逃亡を防がれていた。


「畜生!こうなったら後のことはもういい!ありったけをくれてやる!!」


 幻術が効かなかったからか、とうとう男は腹を決めたようだ。攻撃がいっそのこと激しくなってゆく、今までは光球をそのままでしか放っていなかったが、透明にしたり、ワープさせたりと様々な工夫を凝らしている。また、念力でも使っているのかその辺にある木々や岩などをぶつけに行っている。


 だが女は少しギアを上げたくらいでちっとも苦にしていない。


「やっとやる気を出しましたか。」


 どうやら2柱は先ほどまで1%も力を出していなかったらしい、どんどんとペースが上がってゆく。

そしてある一定のラインを超えたのか男が攻撃をしながらも大技を繰り出そうと準備を始める。


 本来ならばこの戦闘、俺には速過ぎて見えないはず、だがなぜか走馬灯と一緒に見える。

そして自身の限りなく圧縮された世界の中で俺は、で女が放つ美しい剣技に対し、光に蛾が誘われるかのように

ふらふら近づいて行ってしまう。


 とうとう技の準備が終わったのか男が吠える。

「これでもくらえ!」


 それに対応してか女はとうとう剣を正眼に構えた。

「いいでしょう真っ向から打ち破って差し上げます。」


 いつの間にか俺は、男が大技の最終準備のため攻撃を中断した隙に神々の間に入り込んでいたようだ。

奇跡的なタイミングで2柱の間に入ったのだろう女神の飛ぶ斬撃が男神の炎が俺に直撃するコースだった。


「 絶技『飛斬一閃』!!」「『天日劫火』!!!」


 次の瞬間、俺の体は斜めに真っ二つになっていた。

俺は、いつ女神の剣が振るわれたのか理解できなかったが、その剣技はあまりの美しさに目が離せなくなるほど。

そして感傷に浸っていた刹那、いつの間にか俺の体は猛烈な熱を感じ意識とともに焼失していった...


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ここ、こーしたらいいんじゃないとか、ここ良かったよとかなんでもありがたいので


批評、感想、誤字脱字報告お待ちしてます。

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