第9話
「宮下くん」
廊下でふいに、後ろから話しかけられた。今はもう放課後になっていて、そこそこ活気のある状態になっていた。話しかけられたから後ろを向くと、5’s Hの1人、三浦冬乃が立っていた。
「どうしたの、三浦さん。俺になんか用事でもあった?」
俺がそう尋ねると、意を決したように手を握り締め俺に話しかけてきた。
「晴果ちゃんもヘレナちゃんも返り討ちにしたって聞きました。2人の仇討ちは私がする。だから…勝負してほしい。ちょーっと顔がいいからって調子乗ってるでしょ。あなたくらいのレベルの顔ならたくさんいるんだから、調子に乗らない方がいいわ。それに、んぐっ」
ごちゃごちゃうるさかったから指フェラの刑に処すことに決めた。それに、俺の顔はよくない。確かに、5’s Hクラスともなるともっと上位層の顔面をお求めなのかもしれない。まぁそんなの俺には関係無いが。5’s Hの中でも特に顔が小さい三浦冬乃の顎を握り、腰を捕まえ親指を口に突っ込んだ。親指が唾液まみれになるが、気にしない。
「舐めて」
主導権は俺、ということを植え付ける。俺の腕の中から抜け出せないらしく、大人しく舐めていた三浦冬乃だったが、不服だったらしい。若干赤くなった顔でこちらを睨んでくる。全然迫力がなくて笑い出しそうだった。
「なんでわたひが…!」
「あれ?キスをご所望?だったらキスもしてあげるよ」
指フェラは気に入らなかったみたいで、キスに乗り換える。キスをすると、廊下にいた周りの生徒たちから黄色い悲鳴が上がる。ちゅ、ちゅと可愛らしいキスなんかしてやらない。唾液でぐちゃぐちゃになった口には、すでに俺を受け入れる準備が出来ている。舌同士をぬるぬると擦り合わせてザラザラとした感触を楽しむ。俺を拒むように口を閉じるから、口蓋を舌で撫でてやれば喘ぎ声と共に口を開いて俺を受け入れる。こんな小さなことに喜んでるなんて馬鹿馬鹿しい上に、こんなことでしか優越感を得られない自分が嫌になる。
「みや、ひたく…もう、いっ、んんっ…!」
吐息と共に離れる。2人の間には銀色の線がつながっており、離れる途中でぷつ、と切れる。はぁはぁ言ってる三浦冬乃の対極的に、棒立ちの俺。
「どう、勝てそう?」
ニヤニヤしながら思わず聞いてしまった。
「うっ、今度こそ勝ってみせる…!見てなさいよ、宮下零!」
宣戦布告を受けてしまったが、しばらく向こうからのアクションは無いだろう。ああ、また勝ってしまった。残りの2人がまた刺客として送られてくるのだろう。こんな世界に転生?した時点で普通の生活が送れないとはわかってたけど、こんなに波瀾万丈に溢れたものになるとは思ってなかった。
(あぁ、周りからの視線が痛いなぁ…)
三浦冬乃が去ってからもザワザワしている廊下を振り切って、とりあえず手を洗いにトイレに逃げるのだった。
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