第2話
パチリ。そんな音と共に眩しい光が俺の視界を襲った。とりあえず、周りを見渡してみると白、白、白。真っ白な世界に薄ピンク色のカーテンで仕切られたこの世界。ここはどうやら病院のベッドらしい。
(ああ、俺死ねなかったんだ…)
またあんな奴の顔を思い出しながら生活しなきゃいけないなんて嫌だ。ちゃんと死ねたと思ったのに…なんで中途半端に生き残ってしまったんだ。
そんなことを思っているとガラガラと扉の開く音がする。もう俺は誰が来ようとどうでも良かった。けど、彼女寝取られて自殺した俺を見舞いに誰もきてほしくなかった。
「零、今日も来…!!目が覚めたの!?え、とナースコールナースコール!」
見舞いに来たのは母さんだった。なんだか、母親の顔を見た途端猛烈に申し訳なくなってしまった。
「か、あさん、ごめん。俺…自殺なんかして」
「自殺!?何言ってんの?」
俺は切り裂いた左側の首に手をやるが、手当された形跡もないし傷らしきものも見つからない。そんな長期間俺は病院で昏睡状態だったのかな。首に手をやる俺を不思議そうな目で見る母親をよそに手も確認する。確かカッターで切ったとき、上手く切れなくて手も切ったはずだ。
(あ、れ…?傷が無い?どういうことだ)
ナースコールから連絡がいったのか、医者がやっと到着した。軽い問診を受けた結果、俺は記憶の混乱と激しい鬱状態が見られるということだった。そんなことよりもだ。なんなんだ、この世界は。男女比が1:9?どうやって、この世界は成り立っているんだ。激しい混乱が俺を襲う。確かに、今俺の周りにいる人間全員女だ。だけど看護師って女の人が多い職なイメージだし、女医の先生だって別にいないわけではないだろう。
「まだ宮下さん本人も混乱していると思うので、ゆっくり治していきましょうね」
「はい、先生。ありがとうございます…ほら、零も挨拶しなさい」
「…ありがとうございます」
納得のいかないまま俺は女医に礼をして、その場の軽い診察は終わりとなった。明日からは起きたから本格的な検査をまたするそうだ。
俺の脳は混乱に負け一旦、思考を放棄することにした。鏡を見ても自分の顔は変わらないし、名前だって変わらない。今日が何年何月何日かわからないけど、鏡を見て違いを感じないってことはそんなに数年間も寝てたりしてたわけでは無いんだと思う。
たしかに死ぬ瞬間に来世では幸せになるようにって呪いをかけたよ?けど、これ来世じゃないし。もしかして…あの時の俺はちゃんと死んでて別軸の世界の俺に入れ替わった?そんなことがあり得るのか!?いや、いくら何でもそれは無いって考えたけど現実?は変わらない。ちゃんと手をつねったら痛い。死ぬ前みたいに何の痛覚も感じない体じゃない。これは情報をしっかり集めなきゃいけないなと思い、俺はまた眠りについた。死にきれずに病院に運ばれて全部夢でしたなんてならないようにと念じながら。
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