匙でココアを混ぜながら

 内心にある気持ちは抑えてぼくは笑ってみせた。

 ティースプーンでココアを混ぜながら、


「ふうん、ずいぶんと面白い話だね。それってつまりは杜さん、厄介者扱いされたんだ」


 皮肉っぽく言ったぼくにもお構いなく、杜さんは核心を突いてくる。


「そんなことはどうでもいいの。で、広瀬くんはもう気付いてるんだよね?」


「……」


 まったく、あなどれない人だ。

 ぼくは頷く。


「そうだね。つまりその子は、『犯人を捜すのは良くない』じゃなくて『犯人を怒るのは良くない』って言った。普通『捜す』は過程で、『怒る』は捜した結果だから、そもそものニュアンスが少し違うよ。だからさ、要するにその子には、? そうじゃなきゃ普通そんな言い方しないし」


「うん、わたしもそう思う」


 数秒、間を空け、


「でもね、それならどうして白ちゃんは犯人の正体を言わないのかな~って、わたし不思議なの」


 カップを手に上目使いでこちらの反応をうかがう杜さん。


「……」


 ふうん。

 だいぶ話が読めてきた。要はぼくに「犯人捜しの片棒を担げ」と言いたいんだ。


 おおよそ担いで利得が望める片棒とは思えないけど、それでも一応は乗りかかった船、途中で降りて石を投げられてもつまらない。


 ぼくは「とりあえず」という軽い意味合いを込めて訊いてみた。

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