第16話
❀あたらずといえども❀
十翼とは、超常的な存在であり、いわば、思念体のようなものである。肉体は属する自然と融合した姿であり、時代によって変化を遂げたりもする。
……だから、そんな
雑貨商石づきなめこの主人は、十翼のひとり
「
「あいつは
「それはほかの連中とて同じことじゃわい。この
風估は、商品棚の文鎮をさしだして云う。習字や書類の束が風で飛ばないように重しとしてのせる文房具である。素材はさまざまで、螢介がうけとった文鎮は、ごく一般的な細長い形状をした金属製だった。
……護身用って、
こんなのふりまわしたら
おれのほうが加害者だぜ。
「どあほう。そいつは
「そうなのか? なら、もらっときます。……これって、十翼相手にも効くのか?」
ヒュッと、文鎮のさきを炎估に向けると、あからさまに深い
「えっと、風估さん? おれ、いくつか聞きたいことがあって……」
「わしのことは
「……え?」
「もしくは、主人と呼ぶがええ」
なめこの主人は十翼という立場を気にいっておらず、螢介には
「この雑木林に迷いこんだものは、二度と出られぬよ。なぜなら、
なんとなく考えないようにしていた螢介だが、風估に死人という扱いをされた。……おれは、亭主のおかげで助かったンじゃない。……ただ、タマシイが消滅しないよう、咲夜さんがつかまえているだけなんだ。……炎估は、おれが
その日、螢介の気分はいつまでも晴れなかった。
〘つづく〙
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