第5話

──「えっと反対というか……あの、その、私と一緒に居たいみたいで……で、その子を実秋ちゃんのところに暫くおいてあげられないかなって……真夏まなつちゃんって言うらしいんだけど……ダメかしら?」


(真夏ちゃん、女の子か)


女の子であることにほっとするとともに、電話越しの母の困った顔を想像した私はふっと笑った。


「いいよ。その真夏ちゃんは私の妹になるわけだしね」


──「ほんと! 実秋ちゃん、ありがとう。じゃあ早速だけど……実秋ちゃんのLINEと住所、真夏ちゃん送らせてもらうわね?」


「はいはーい」


私はほっとした様子の母との電話を切ると、すぐに部屋をぐるりと見渡す。


「うん、バッチリ!」


掃除も片付けも好きな私にとって急な来客は問題ない。一応母がいつ来てもいいようにお客様用の簡易ベットも購入したばかりだし、狭いがここは2DKで母が使っていた部屋も一つ余っている。


「誰かがくるなんて……初めてかも」


恋人もおらず、特に家を行き来するような親しい友人のいない私の家に訪ねてくる人がいない現状にふと気づく。なんだかため息をつきそうになって慌てて唇を結んだ。


(ため息は幸せ逃げちゃうっていうし……)


「はぁ……それにしても問題なのは推し活よね……確か真夏ちゃん? 二十歳すぎだし……もしかしてマカ推しだったり? 妹かぁ……楽しみだな」


私はまだみぬ妹の姿を想像しながらすっかり冷めたハンバーグを口に頬張るとパソコンのマウスに手をかけた。


──ピンポーン

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