第6話

「……え?」


思わず固まった私は玄関扉に視線を向けたまま動けない。


(……誰?)


──ピロン


「わっ!」


LINEメッセージの受信を告げる音に、思わず声が突いて出た私は咄嗟に口元を覆いながらおそるおそるスマホの画面を開く。


──『神崎真夏です、家の前つきました』


「う……嘘でしょ‼ ついさっきで今日⁈」


私はあわててスウェットの上にカーディガンを羽織ると勢いよく玄関扉に向かって駆け出した。そして覗き穴から外を確認することなく勢いよく扉を開け放った。


「えっ」

「え?」


私と玄関先の相手の声が重なる。


「だ……誰?」


「ん……? あんたこそ誰?」


黒のパーカーに黒いキャップさらにサングラスまでかけている男が、私をみて首を捻っている。どこかで聞いたことあるような低めの甘い声だが、目の前の人物は女の子の声でもなければ、女の子でもない。


(真夏ちゃんじゃない⁉ ……こ、こんな時間に新手のセールス?)


私は目を見開きながら一歩後ずさった。


「なぁ、俺らどっかで会いましたっけ?」


「な、ないです……し、失礼します」


私がさっと扉を締めようとすると、男が扉に手をかける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る