第18話
一週間学校を休んで久しぶりに学校に向かう中周りの視線を集めながら二人で歩いていた。
先輩が家を出る際に。
「手繋いで行きたい!」
と言われて、あまりにもキラキラしていて朝から眩しすぎたその現象に、頷く他なかった。
そして、手を差し出すとギュッと握られたと思えば指と指を絡めて繋がれた。
「‥何これ」
「へへ、こっちの方がいいと思って!」
「何が?」
それを問うも先輩の耳には既に届いておらず家から出発した。
そんなわけだが、段々と学校に近づいていくうちに同じ制服の生徒にヒソヒソ言われ、見られと目立っていた。
隣の先輩を見るもご機嫌だと言うのが顔に溢れるほど笑みが浮かべられていていた。
「‥はぁ」
思わずため息を吐きながら学校まで、なにも考えず教室まで歩いて行った。
教室に着くとまた、何か言われるかと思っていたが普通だった。
席に着くと手を離そうとするも、先輩が離してくれない。
「‥離して」
「うぅ、また休み時間にくるから!絶対来るから!」
そう言って手を離して、教室を出るまで手を振って大声で宣言して出て行った。
それに対して、クラスメイトもあっけらかんにして見送っていた。
また、悪目立ちしなければ良いがと席に着くと女子生徒が数名集まってきた。
また、嫌がらせかと身構える。
「ねぇねぇ!夕伊先輩と白翔くんって付き合ってるって本当?!」
「‥は?」
「あれは、付き合ってるでしょ!恋人繋ぎで登校とか萌えるんだけど!」
「‥こいびと、つなぎ?」
女子生徒たちはテンション高く話していくもそれについていけず固まる他なかった。
「あ、この前の時は助けられなくてごめんね‥。私たちも自分が標的になったらって怖くて何にもできなかった‥」
「‥いや、大丈夫。でも、その、ありがとう‥」
そう言うと女子生徒たちは驚いたようにした後笑っていた。それは、嫌な笑みではなく先輩みたいに優しく。
「というか!あの時の夕伊先輩!かっこよかったよね〜!」
「そうそう!先輩って普段無表情でクールな時が多いんだけど、先輩ってあんな怒り方するんだって」
「‥え?陽由香先輩ってクールなの?」
普段の先輩からは想像がつかない。
だって、あんなにコロコロと表情も感情も変わる先輩がクールなんて言葉は一番似合わないと思った。
「そうそう!勉強もできて、クールな先輩で有名だよ!」
「でもでも、白翔くんの前では笑ってたりして可愛いよね〜」
「‥え?先輩って勉強できるの?」
「え?うん、大体上位に入ってるって話。有名だよ?」
「そう、なんだ」
初めて知っていく先輩のことに、いつもの先輩と真逆だ。
そのうち女子生徒達と話していれば、チャイムが鳴りそれぞれ席に戻って行った。
窓の外を見て、情報量の多いなかなんとか整理する。
クールというものは、聞いた情報でしかわからないが、物静かで人と関わらないときいた。
あまり、想像ができず今日もいい天気な空を見上げながら考える。
気づけば、そんなことも知らずに今まで一緒に居たのかと思うと胸の内がモヤッとする。
教科書とノートを開きながら、ノートに意味もないもじゃもじゃしたイラストを描いて、思いつく。
次の休み時間先輩のクラスに行ってみよう。
そのまま、考え事をしながらも授業を受けてちょっとした休み時間。
そういえば、先輩のクラス聞いていなかったと二年のクラスが並ぶ廊下で立ち尽くす。
早くしないと休み時間も終わってしまう。一クラスずつ見てまわればようやく、先輩を見つけた。
バレないようにそっと影に隠れながら見守ると、偶然なのか先輩も窓側の席だった。
窓の外を見ながら、無表情な先輩がいた。
顔がよく見えず少し顔を出しながら、眺めていると気づけば女子生徒に囲まれていた。
「え‥?」
「ねぇねぇ、君って夕伊くんのお気に入りの子でしょ?」
「えぇ!可愛い〜!」
前髪をそっと避けられて初めて顔を見られて固まる。
されるがままというのはこういうことだろう。
「なにしてんの?」
何もできずにいると、大きな背中で隠されるように先輩が前に出ると、女子生徒たちは何処か行ってしまった。
ゆっくりと、こちらを振り向く先輩の顔を見るのが不思議とモヤモヤとしていると、肩を強く掴まれて眉を下げて泣きそうな顔で此方を見ていた。
「大丈夫?!何もされてない?!」
「え‥、大丈夫。急に来たの俺だし」
やはり、いつもの先輩だ。
コロコロと表情が変わり、感情も変わって何か必死に訴えている。
それに何処か胸の内が落ち着いて、ほっとする。
「そういえば、何で俺のクラスに?何かあった?」
「別に、普段の陽由香先輩が見てみたくて‥」
すると、そのまま腕を掴まれてどこかへと連れて行かれる。
図書室まで行くとやはり、誰もおらず。
すると、掴まれた腕を引っ張られ先輩に抱きしめられる。
「恥ずかしいから、あんまり見ないでね?」
耳元でそう囁かれて、頷くことしかできなかった。
いつも聞いている声のはずなのに、耳元で囁かれると胸の内はドキドキと高鳴って止まらない。
「でも、普段と違う陽由香先輩が見れてよかった」
「もう〜!それが、恥ずかしいんだって!すましてる顔とか痛いかもしれないじゃん!」
「‥痛い?」
よくわからず、そのまま先輩に抱きしめられているとチャイムは鳴り二人で図書室で授業をサボることになった。
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