第17話
かれこれ一週間先輩に甘える生活を過ごしてしまい、学校も一週間休んでしまった。
だが、おかげで食生活も睡眠も無事元に戻り、健康的な生活を送れることができていた。
元に戻ったことは、良いのだが忘れていたことが一つ。
テスト期間であること。
俺は何とか予習までの範囲にいったが先輩は、どうなのだろうか。
この一週間俺の近くには居たが俺にかまけてばかりだった。
「よかった!元気になって!」
「うん」
もう、一週間は俺の家に泊まってる先輩は今日も今日とてキッチンに立ちホットケーキを焼いてくれた。
そこに、バターを少しと蜂蜜をかければ完璧というように目の前に置かれる。
「「いただきます」」
二人横に並んで、手を合わせると先輩が俺の分のホットケーキを切り分けて、フォークで刺して口元まで持ってきてくれる。
「はい、あーん」
「いや、もう元気だから。自分で食べれる」
そう言ってフォークに手を伸ばすも軽々とかわされる。
「だーめ、これは俺の特権でしょ?」
何だそれは。いつから、特権になったのだろうか。
確かにここ一週間食事をするのが億劫で先輩に全てを任せきっりだったが。
ニコニコと笑みを浮かべて再び口元まで持って来られる。
「あー、ん」
きっと、諦めてはくれないだろう。仕方なく口を開けて、咀嚼する。
やはり、先輩の作るものは温かい。
「おいしい?」
「不味くはない、から‥おいしいと思う」
今だに食に対しての関心はまだ生まれず、おいしいかそうでないかもわからない。
でも、温かく感じるってことは不味くはないということ。つまり、おいしいということなのでは、ないかと思っている。
「よかった!じゃあ、もう一口!あーん」
「あー‥じゃなくて、陽由香先輩一つ聞いても良い?」
一度フォークを置いて、向き合ってくれる先輩は首を傾げてこちらを見る。
「‥テスト勉強どうなってる?」
「あー‥、まぁぼちぼちとやってたよ。でもやっぱり栄養がないと集中できないというか」
「‥栄養?」
栄養ということは先輩も食事が取れてなかったのだろうか。
でも、家に来て一週間とくにそんな様子は無かったが。
そう、考えてると押し倒される勢いで抱きつかれる。
ソファーの上だからそこまで衝撃は無いが、先輩は顔を赤くしてこちらを見下ろしていた。
「‥ずっと、我慢してた。白翔くん‥栞くんに会うのも、触れるのも我慢してたら勉強になんて集中できなくて、そしたら電話が来て「助けて」って言われてびっくりした。本当に良くなって良かった」
そのままそっと、抱きつかれる。
対してして俺は、先ほどの先輩の顔が脳裏から離れず体温も心拍も上がる。
何だろうこれは、何でこんなにドキドキするのだろうか。
すると、抱きついていた先輩は顔を上げて近づいてきたと思ったら口元に口付けを落とされる。
それは、一回ではなく何度も口元に落とされて息が詰まってしまうほどに。でも、それは嫌ではなくドキドキとした感覚が高まっていき、頭の中がふわふわとする。
「ふふ、栞くんかわいい」
「ふぇ?‥なん、て?」
息をするので必死で、熱い体を治めるので必死で先輩が何を言っているのか理解できなかった。
そのまま、抱きしめられていつものように頭を撫でられてて落ち着くまで待ってくれる。
そのまま、熱が治り始めると眠気がやってきて段々と瞼が重くなる。
そのまま、閉じれば心地いい感覚のまま意識が遠のいた。
‥‥
次目を覚ませば、ソファーで横にされていて先輩はテーブルに向き合いながら勉強をしていた。
ゆっくりと体を起こせば、起きたのに気づいた先輩は眉を歪めていた。
「さっきは、ごめんね、いきなり‥しお‥白翔くんもびっくりしたよね?」
そう言うとどこか泣きそうな先輩に首傾げる。
別に嫌では無かった。
うまく表現はできないが、一番近くで一番温かい先輩の体温が感じることができて、心地よかった。
それに、先輩が初めて下の名前を呼んでくれたことに胸が高鳴っていた。
「別に嫌だったら殴ってるし‥名前もう呼んでくれないの?」
「え‥呼んでも良いの?」
「うん」
「‥キスも、これからしても良い?嫌じゃ無い?」
「‥多分嫌じゃ無い」
それに対して、先輩の周りがパッーと明るくなり再び抱きつかれる。
「ふふ、嬉しい。嬉しすぎてやばい!というか、俺も栞くんって呼ぶんだから栞くんも俺の名前で呼んでよ!」
「いつも、呼んでる」
「違う!先輩なしで!」
先輩の体が離れて、こちらをじっとキラキラと輝かせた瞳で見てくる。
それに対して、視線を逸らして口をゆっくり開く。
「‥ひ、ひゆ、か、さん‥。」
震える声で言葉にすれば、再び勢いよく抱きつかれる。
先輩から「ふふ」や「へへ」と笑い声が聞こえて余程ご機嫌なのだろう。
「これから、そう呼んでね?!約束」
小指を差し出され、同じく小指を差し出して絡めてギュッと握る。
「あ、でも、学校では先輩つけて呼ぶから、さっきの呼び方二人きりの時だけ」
「えぇ!何で〜!!?」
そのまま、それに対して追求せず先輩だけの勉強会が再開された。
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