第7話
それから、数日。
無事、連絡先交換という手段が正解だったのか不正解だったのかわからないが無事教室で授業を受けられるまでになった。
授業も受けてみれば勉強も無事ついていける範囲ですぐに理解できた。
そして、おかげで教員からの目をつけられている日々も緩くなっている気がする。
だが、静かだった携帯が前よりもうるさくなった。
今日も目が覚めて家で準備をしてるところで携帯はメッセージ通知を告げた。
『おはよう!』
寝起きの目をこすながらゆっくり、返事を打っていると再びメッセージが来る。
『今日のお弁当!』
文字と共に二つ並べられたお弁当が映されていた。一つは普通の大きさのお弁当。もう一つは小さな子が使うような小さなお弁当箱に色々と詰められていた。
確かに押されて押されて、『量少なめなら』と答えたが本当に作るとは思わなかった。
あまり、食事もしなくてもいいとは付け足し伝えたのだが、どうやらあまり効果をなさなかったらしい。
『おはよう』
とりあえず簡単なメッセージを送って携帯をおこうとしたところで、笑顔の絵文字が送られてきた。
特に返すものもなく携帯を伏せて机に置いて、準備を進めて、携帯をポケットに入れてカバンを持って玄関で靴を履く。
「いってきます」
特別振り向きもせずだからと言って、誰も返事を返さない家の中に向かって言う。もう、昔からの癖だ。
いつか、誰かが返してくれることを願った日からずっと。
‥‥
学校に着き教室に入り自分の席へと着く前。
「まじ、きもっ」
すれ違いざまに言われた一言に横目で見ると、相手は同じクラスの男子生徒。明らかにこちらに悪意のある視線を送りつけてニヤついている。
あぁ、この視線に顔に見覚えがある。
中学の時と同じ奴らの顔だ。
孤立者を玩具のように扱う。
ここに来ても同じか。
ため息を抑えて、席に座る。
俺にとっては、どうでもいいことだ。でも、連中にとっては、玩具がどんな風に壊れていくのか、それが重要なのだろう。
どれだけ、楽しんで。
どれだけ、思い通りにするのか。
まぁいい。言葉なんて俺には届かないのだから。想いだの、その感情すら理解できない。だから、孤立者になっているのだから、まったく意味をなさない。
連中は面白くないだろうが、面倒ごとはごめんだ。
すると、携帯がメッセージを来たのを告げる。
『お昼前の授業にいつもの所に集合!』
絵文字も添えられており、元気だなぁと他人事に思い返事を返す。
『わかった』
そして、ポケットに携帯を入れて窓の外を眺める。
何も変哲もない青空。今日もいい天気だ。
そして、授業が始まり黒板に書かれたことや補足をノートに書き込み勉強に取り込む。
流石に、いじめっ子も何もしてこないだろうと思ったが矢先に、何やら机に丸められた紙屑が投げられた。
『調子にのんな』
開けばそう書かれていて、横目で投げられた方向を見れば先ほどの男子生徒と数名がこちらを見てクスクスと笑っていた。
授業くらい静かに受ければいいのにと、その紙屑を机の中に適当に放り授業に戻る。
くだらないことに耳も目も貸す必要はない。
そして、昼前の授業になり携帯だけ手に教室を出る。
チャイムが鳴る前に少し急足で校舎裏に行けば、既に先輩がおり手を振っていた。
「はい!これ、白翔くんの分!」
「本当に作ってきたんだ‥」
隣に座ると今朝写真で送られてきたお弁当を渡されて、本当にあるのかと改めて実感する。
「朝にメッセージ送っただろ?一緒に食べよ!」
ここで、「いらない」なんて言ったらまたこの先輩は涙をポロポロと流して縮こまるのだろう。
それはそれで、いろいろと面倒な道につながりそうなのでお弁当を受け取り蓋を開ける。
中は簡単に卵焼きとプチトマト、ウィンナーと本当に少量のお弁当だった。
「「いただきます」」
箸をとって、卵焼きを口に入れる。
甘い。単純にそれしか思わず咀嚼して飲み込む。
次のものを口にしようとするも、隣の熱い視線を感じて隣を見るとジッと此方を見つめる先輩がいた。
自分のお弁当にも手をつけておらず何かを待っているようだった。
「どう?おいしい?」
「‥甘い。おいしいかどうかはわからないけど、まずくはない」
素直な感想を述べれば、先輩は拳を作りガッツポーズを決めて、笑っていた。
何がそんなに、先輩の感情を動かしたのかわからないが気にせずお弁当を食べ続ける。
ようやく満足したのか、先輩もお弁当に手をつけ始めて、今日のお弁当の出来を一人語っていた。
「「ごちそうさまでした」」
二人手を合わせてお弁当を片付けるとちょうどチャイムが鳴った。
今日は少し喋り込みながら食べていたからいつもより、食べるペースが遅かったんだろう。
「じゃあ、俺もう行くんで」
「うん!また、明日も作ってくるから一緒に食べよう!連絡もする!」
そう言って先輩は駆け足で手を振りながら去っていった。
俺もゆっくりと歩き出し、賑わっている校内を歩いて図書室にたどり着く。
相変わらず誰もおらず、丁度いい昼寝スペースだ。
日当たりのいい席に腰掛けて、机に顔を伏せて瞼を閉じた。
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