第4話 宇宙へ
結論から言うと、ぼくらの研究所は、政府からの依頼を了承することになった。
このことは各国の首脳級の人たちからもぜひにとのことだったらしく、ぼくらは要人たちからのビデオメッセージまで見たのだった。テレビで見たことのあるアメリカとロシアの大統領が泣きそうな声で、自分の猫を宇宙人から助け出してほしいと言っているのを見て、ことの重大さにぼくらは身を引き締めたのだった。
作戦の概要は、猫ロボNx24-04を、まださらわれていない猫と一緒に待機させ宇宙人に連れていかせる。そして、宇宙船の中でさらわれた猫たちを見つけ、待機している地球側の宇宙船に連絡を入れ、猫たちを助け出すというものだった。
地球中の猫を全部乗せることのできる宇宙船なんて地球の科学レベルで作れるのかと思って質問したら、各国が共同で宇宙空間において組み立てたとのことだった。巨大すぎて地球の大気圏を突破できないらしいが、衛星軌道上まで来た後は、これまた各国共同で作った軌道エレベーターに何回かに分けて乗せ、地球まで下ろす計画らしい。
軌道エレベーターなんて、よくできましたね? と質問すると、日本が特殊なカーボンナノチューブを編み込んで作った超高硬度のケーブルを提供したことで可能になったとのことだった。
普段は仲の悪い世界各国がこんなに力を合わせ、一つのことを成し遂げるなんてまさに「猫への愛は地球を一つにする」だな、とぼくは思ったりした。
ぼくらの猫ロボには追加の装備がいくつか足された。
改造に当たっては、日本中のロボット工学の専門家が集まった。その中には久しぶりに会う大学の先輩や恩師の顔もあった。
また、遠隔電波による操縦と、その操縦のためのAIの改良のために、アメリカと中国の専門家もやって来た。宇宙船は楕円形の周遊軌道に沿って地球に近づいてきているらしい。作戦遂行時には月の裏側に入ることもあり、電波が届かないポイントが出てくるのだが、人工衛星や宇宙ステーション、月に秘密裏に作られた宇宙基地などが電波を中継してくれることで遠隔操縦が可能となるとのことだった。
矢島によると、主任の猫がさらわれなかったのは、家全体にセキュリティのための厳重なロックがかけられているためだろうとのことだったが、大統領の猫までさらわれてるのに、どんなセキュリティなんだよと思ったりした。
その後、色々とあったのだか、結論として主任の家のセキュリティの一部を切り、主任の猫と一緒に猫ロボNx24ー04を待機させることになった。まあ、主任はかなり嫌がったのだが、最終的には世界中の猫たちのためだという矢島の説得に折れたのだった。
宇宙人に、猫を誘拐させるという作戦の初日――
ぼくは、以前まで世界各国で運用していたという宇宙ステーションに待機していた。これも色々あって世界各国での運用が止まっていたのだか、今では運用が再開され、ここまでもロシアのロケットに乗ってカザフスタンから打ち上げられたのだった。
宇宙人の巨大宇宙船の航行をモニターしていると、宇宙ステーションに作戦通り主任の猫と猫ロボが誘拐されたとの連絡が入った。一緒に送られてきた動画を、宇宙ステーションのスタッフたちと一緒に見る。
窓の外が青く光り、その光が窓から差し込んでくる。そして、勝手に窓が開いた。その光を浴びた主任の猫と猫ロボは、ゆっくりと浮かび上がると、外へと移動していった。動画はそこで切れている。
「ヤマト、準備しろ!」
ステーションのスタッフが言った。ぼくは遠隔操作用に準備された椅子へと走って行った。
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