第3章 第25話 キャラ崩壊するスイレン

スイレンがカルを見つけた瞬間、まるで夜空に突然花火が打ち上がったかのように、スイレンのテンションが一気に上がった。


普段は冷静で計算高いスイレンが、どうしてこんなにも感情を爆発させるのか。



「オーッス!カル!久しぶりーっ!」スイレンは両手を広げ、まるで無邪気な子供のように笑った。


これがいつものスイレンなら、どこか影をひそめて冷静な態度を崩さないはずだった。


しかし、今の彼はまるで別人のようにハイテンションで、どこか羽目を外したかのような姿だ。


何かが、何か大きな理由があるのだろう――だがカルにとって、スイレンの変化は予想外だった。


「カールが来ーた、カールが来ーた、どーこに来た〜」


信じられないほど甲高い、奇声とも呼べる声でジャンプしながら歌い出す始末であった。



「あの〜、なんですかそのテンション。まさか酔ってるんですか?」カルが少し警戒しながら問いかけると、スイレンは意気揚々と首を振った。


「違う違う、今日はバイブスブチ上げって感じだよ!カルに会えて、マジで嬉しくてさ!

MU(エムユー)だよ!MU!

だから、みんなで酒でも飲もや!

なんかもう、イキーパのミェーンブロたちにも持っていくから、カルも一緒に!」



スイレンはカルを連れ、ビル地下のコンビニに向かって歩き出す。



いつもの冷静さを保つこともなく、完全にその気持ちを爆発させたようだ。


コンビニで、スイレンは迷うことなく、ビールやストゼロなどを大量にカゴに放り込んでいく。


セツノもその様子を呆れたように見守りながら、どこかで「まあ、こういうのも悪くないか」と納得した様子でその場に付き合っていた。


「じゃあ、行こか、カル!」スイレンが嬉しそうにカルを引っ張りながら、28階へと向かう。


エレベーターの扉が開いた瞬間、すでにその場にいたサアラ、レイ、カナタの顔色が固まる。


彼らの目には、スイレンが連れてきた“光の魔導士”であるカルが映り、ただでさえ普段から警戒心が強い三人はその事実に驚き、さらにスイレンのハイテンションに言葉を失った。


「え、え!?なんで光の魔導士を連れてきたの!?」


サアラが疑念と警戒を込めて声を上げる。


スイレンの様子も、いつもなら冷徹で慎重な彼がまるで別人のように浮かれているのだ。何かおかしい。



「なんかどうしたんよ、スイレン、そのテンションは?」


レイもつい顔をしかめながら、スイレンを見つめる。


その一方で、カナタは少し身構えたように立ち尽くしていた。


すぐに何かが起きそうな予感がしたからだ。


スイレンは楽しげに腕を組み、得意げな顔をして言った。


「いやー、何か気分が上がっちゃってさ。

せっかくカルとも会えたし、みんなで楽しくやろうよ。

どうせ、酒の一杯や二杯飲んだって問題ないやろ?」




サアラ、レイ、カナタはお互いに顔を見合わせ、何とも言えない不安感を抱えながらも、スイレンの“テンション”に困惑していた。


こんなスイレンを見たのは初めてだ。

何か裏があるのではないか、そんな考えが頭をよぎる。


「まあ、いいけどさ…。でも、こんなことしていいのか?」

カナタがやや警戒を込めて言った。


「いいんだよ、カナタ!今日は楽しまなきゃ損じゃん!」


スイレンは自信満々に返すが、その後ろでカルはまだその状況を呑み込めずに立ち尽くしていた。


「あ、あとノリでスマホは没収ね」とスイレンはさりげなくカルのスマホはちゃんと没収するのであった。

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