第3章 第22話 新たな力

実験の結果、予期せぬ事態が展開された。


サアラ、レイ、カナタの3人はBランクの魔導士だったためか、理性を失い、Lobo Sombra(光側の呼称:Shade Wolf)の通常個体に変貌してしまった。


彼らの目には理性が消え、ただ獣の本能と暴力的な衝動だけが残っていた。


うねるように荒々しく呼吸を繰り返し、獣のような低い唸り声を上げる3人。


スイレンはその光景を見て、無情に呟いた。


「くそ、飲まれてしまったか。」


スイレンの瞳には冷徹な決意が宿っていた。


これまでの実験で計算していた通り、理性を失った者たちには支配されることもある。


しかし、スイレンにはその予測に対する対処法がすでにあった。


彼自身、そしてセツノが怨獣モードに変身できる状態になったからだ。


セツノは一瞬戸惑いながらも、何とか自我を保ち、Lobo Sombra(ロ゜ーブゥ・ソオンブラ)の力を手に入れることに成功した。


彼の表情には一瞬の苦しみが走ったが、それを乗り越え、強大な力を手にすることができた。


彼の身体は次第に変化し、怨獣モード狼(ロ゜ーブゥ)の姿へと変わっていく。


スイレンもまた、その力を自らのものにした。


これで彼にとっては、蠍(シュクルピアオン)に続く二つ目の怨獣モードだ。


彼の姿もまた狼のように変わり、威圧的な姿となった。


だが、その目には冷徹な冷静さが宿り、荒れ狂うことなくその力をコントロールできていた。


「セツノ、お前も行けるな。」


スイレンが淡々と声をかけると、セツノは頷き、スイレンに続いて自らの力を使い始めた。


二人は並んで立ち、強大な狼の力を行使する準備を整える。


サアラ、レイ、カナタが暴れながらもその様子を見守り、スイレンとセツノが力を合わせて制御する様子を目にする。


そしてスイレンとセツノが一吠えするとサアラ、レイ、カナタはたちまち人間の姿に戻った。



スイレンが二人に向かって冷たく語りかける。


「実験は半分成功、半分失敗と言ったところかな。

俺とセツノは完全にReiの力をモノにしたが、君たち3人は俺かセツノがReiの力を行使しなければLobo Sombra(ロ゜ーブゥ・ソオンブラ)になることも、また人間に戻る事も出来ない。

なので俺かセツノと一緒にいるときでなければ怨獣化出来ないことになる。」


その言葉が三人に重くのしかかる。


サアラ、レイ、カナタは、自らの力の無力さを感じ、悔しさと恐怖が入り混じった表情を浮かべる。


しかし、その中で一筋の希望を見出したのも事実だった。


二人の力に支配されるとはいえ、自分たちが怨獣になってまた人間に戻ることは一応可能になったからだ。


スイレンはその後、5人の力を試すために変身と変身解除を繰り返し、動きや技の動作チェックを始めた。


セツノも一緒に行動し、彼の動きと反応を観察しながらお互いに組手の練習を行う。


「動きが少し重いな。もっと素早く反応できるように、リズムを合わせてくれ。」


スイレンが指摘すると、セツノは自分の体を調整し、よりスムーズに動けるように工夫を始める。


「先生の反応は鋭いですね。でも無駄に力を使っていると、身体が持ちませんよこれ。」セツノが冷静に返す。


二人はその場での戦闘能力をさらに向上させ、互いに技を磨き合う。


---


実験は半分成功、半分失敗の結果となったが、スイレンとセツノの力は完全に制御され、サアラ、レイ、カナタは今後も二人に従う必要がある。


彼らの力を完全に理解し、調整するためには、さらなる訓練が必要だ。

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