第3章 第14話 驚愕の告白
黒羽りりぃの言葉はカルに突き刺さるようだった。
「カルさん、やっぱりあなたやったんですね。イェシカの……いや、スイレンの弟子って。」
その瞬間、カルの頭の中は混乱で埋め尽くされた。
(スイレン……と、イェシ姉が同一人物?そんなバカな!)
イェシカとスイレンの外見はまったく異なり、能力も共通点はないように思える。
それに、イェシカは光の魔導士として尊敬される存在だった。
イェシカはBランクではあったが、それでも上位魔導士の一角。
カル以外にも弟子が沢山いた。
カル自身も彼女に魔導の道を教えられ、恩義を感じている。
イェシカが闇の魔導士になり、敵対する存在になったなどと想像すらできなかった。
しかし、黒羽の言葉がカルの心の奥に小さな疑念を生じさせる。
(でも……確かに、スイレンの語り口調や仕草にはイェシ姉の面影を感じるところがある。
それに声もそういえば似てる。
僕がスイレンに懐かしさや妙なときめきを覚えたのは、本当にスイレン=イェシ姉だったからなのか?)
思考がぐるぐると巡る中、カルは一瞬だけ目の前の黒羽の存在を忘れていた。
カルが思考に沈む間もなく、黒羽りりぃは感情を爆発させた。
「スイレンはうちをその気にさせて、一回ヤッたらその後は都合よく自分の手駒に仕立てあげて!」
彼女の声は怒りと悲しみに震え、カルを睨みつける瞳には涙が浮かんでいた。
「それだけやない!あの人、ずーっと『弟子に会いたい』『弟子に会いたい』しか言ってくれへん!……うちのことなんて何とも思ってない!」
黒羽は叫びながら拳を握りしめ、怒りを抑えきれない様子だった。
そして、その矛先はカルに向けられる。
「それがカル!あんたやったんやな!!」
黒羽の怒りと苦しみが言葉に乗ってカルにぶつけられるたびに、彼の胸は締め付けられるような痛みを覚えた。
カルはその場に立ち尽くしたまま、何も言い返すことができなかった。
(もし本当にスイレンがイェシカなら、僕の師匠が黒羽りりぃにこんなことをしたというのか……?)
動揺と葛藤の中で、カルは黒羽の目を見つめ返し、かすれた声で問いかける。
「……スイレンが本当にイェシカさんだという証拠はあるんですか?そんなこと、信じられるわけがない……」
そう、カルは信じたくなかった。イェシ姉が自分以外の人間を抱いていたことも、闇落ちしていたことも
黒羽はその問いに一瞬だけ沈黙した後、再び怒りのこもった視線をカルに向けた。
「証拠やなんて、そんなもん自分で探しーや。うちはもう、あんたを見るだけでムカつくんじゃ!」
黒羽りりぃの感情はもはや理性を超え、戦いの再開を予感させる緊張感が場を支配していく――。
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