第3章 第12話 カルVS黒羽
黒羽りりぃは肩をすくめるような仕草をしながら、口元に薄い笑みを浮かべた。
「あの冷徹なスイレンが――人でなしのスイレンが、カルさんにだけは笑顔を見せてたんですよねえ。
正直、引っかかるんですよ。
あいつの正体とカルさん、何か関係あるんじゃないですか?」
その言葉にカルの眉間が一気に険しくなった。
「知りませんよ!」とカルは叫んだ。
「そもそも闇の魔導士なんて存在がいるのだって、最近知ったばかりです!逆に、あなたたちは一体なんなんですか!?」
黒羽はその問いに軽く首を傾げ、楽しむように答えた。
「さあ、うちらは何なんでしょうね。まあ、もしカルさんがうちと手合わせしてくれるなら……気分次第で少しだけ教えてあげますよ。」
言葉が終わるやいなや、黒羽りりぃは手を掲げ、詠唱を始めた。
「O krachtige dimensie, open je deur.
Twee werelden kruisen elkaar!(おお力強い次元よ、そなたの扉を開け。2つの世界よ交われ!)」
彼女の周囲に漆黒の魔力が渦巻き、一瞬で風景が変わった。
「これは……!」カルは目を見張った。
見渡す限りの闇と虚無に満ちた異空間が広がり、公園の景色は完全に消え失せていた。
黒羽は満足そうに笑いながら言った。
「異空間魔法。うちのオランダ語の発音が悪いせいで短時間しか保たないけど、これで周囲への被害はない。安心して暴れていいよ。」
カルはその言葉に困惑した。
(闇の魔導士……周囲の被害を気にするだなんて。)
彼の頭をよぎったのは、これまでの戦いで目にしてきた光の魔導士たちの戦い方だった。
彼らは周囲の破壊を気にすることなく、ただ怨獣を倒すことだけを目的に動いていた。
それが当たり前だと思っていた自分に、闇の魔導士たちのこの配慮が奇妙に感じられた。
「考え事してる暇はないよ、カルさん!」
黒羽が鋭い声で言い放ち、手のひらから黒い雷のような魔法を放った。
カルは即座に反応し、光の壁を作り出して防御する。
「だったら、全力で応えてあげますよ!」カルも叫び、炎の拳を突き出してにして突進する。
黒羽りりぃの異空間魔法の中では、空間自体が彼女の意志に従って動いているようだった。
カルの拳が届く寸前で、黒羽の姿が霧のように消え去り、別の場所に再出現する。
「どうしたの、カルさん?この程度じゃ、うちは倒せませんよ。」
その余裕に苛立ちを覚えながらも、カルは静かに光の力を高めていく。
「僕がここで負けるわけにはいかないんです!」
黒羽はこの前白神に惨敗していた。
白神の横暴を止めるためにも、イェシ姉にまた会ったときに褒めて貰うためにも、白神にすら負けた黒羽に負けるわけにはいかなかった。
そして黒羽が仄めかす「秘密」とやらも気になる
戦いはさらに激しさを増し、光と闇の魔力が異空間を照らし出した――その結末がどうなるかは、まだ誰も知らない。
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