第3章 第11話 囲まれるカル

倉庫内にカルの足音が消えると同時に、残された人々の間に緊張が走った。

突然の行動に驚きと困惑が広がり、誰もがざわつき始める。


「なんやあいつ!いきなり仕事放り出して……」

「何考えてんねんあいつは!」


その場に居合わせた、カルを快く思わない者たち、カルに嫉妬する者たち――橋本拓海、石黒誠(通称:イッシー)、槇原桃子、泉水なつきなどの面々も不満げな表情を浮かべる。


「これ、絶対に上に報告すべきやんね。」桃子が言う。


「いやー、同感っすね。突然仕事抜けるのはヤバすぎますよ。」橋本拓海も同意する。


そして4人は、ちょうど東京三鷹支部から視察に来ていた東京支部長・東田(ひがしだ)に直ちに報告することを決めた。

大阪支部の支部長の額田(ぬかだ)はその日、東田と入れ替わりで東京支部に出張に行っていたからだ。






一方その頃、カルは河内長野(かわちながのえき)駅に到着していた。

駅の周囲には見慣れない風景が広がり、どこか異質な雰囲気を感じ取る。


カルはスマホを取り出し、先ほどかかってきた番号に電話をかけた。

数コールの後、冷静な声が返ってきた。

「カルさん、駅前から少し歩いたところにある公園に来て。」


指示された場所を地図で確認しながら、カルは急ぎ足で公園へと向かう。





その公園はひっそりとしており、落ち葉が舞う中で静寂が支配していた。

しかし、カルが公園の中心へと足を踏み入れると、その静寂を破る声が響く。


「この間ぶりやね。カルさん。」


そこに立っていたのは黒羽りりぃ。

そして、その後ろには彼女を護衛するように取り巻きの3人の闇の魔導士たちが控えていた。


「黒羽りりぃ……!」カルは驚きと警戒心を込めて名を呼ぶ。


黒羽は小さく笑みを浮かべ、からかうように言葉を続ける。

「あなたがここに来るってわかっとったよ。素直やね。」


カルは緊張を押し隠しながらも声を張り上げる。

「何の用ですか!」


その叫び声が公園の空気を震わせる中、黒羽とその取り巻きたちは、不気味な笑みを浮かべながらカルを囲むように歩み寄ってきた。

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