第3章 第9話 地に伏すカル
渦潮から必死に抜け出したカルだったが、スイレンの次なる攻撃が彼を容赦なく追い詰める。
「Telekinetische Kracht(テレ゜ーキネティシェー・クラーヒト)!」
スイレンの詠唱が響くと同時に、カルの体が宙に浮かび上がる。
その見えない力に抗おうとするが、手足は重く、抵抗する術を失っていた。
「くっ...なんだ、この力...!」カルは歯を食いしばるが、次の瞬間、強烈な衝撃が全身を襲った。
スイレンの魔法の力で地面に叩きつけられたのだ。
土煙が舞い上がり、衝撃で地面にはくぼみができていた。
カルはその中心で倒れ込み、痛みに呻きながら動けなくなっていた。
スイレンはゆっくりとカルに歩み寄り、冷静な声で語りかける。
「流石天才魔導士、と言いたいところだがまだまだ足りないね。でも、殺すつもりはないし今日はここまでにしておくよ。」
地面に横たわるカルの目は悔しさと痛みで潤んでいたが、スイレンは気に留める様子もなく、軽く微笑んだ。
そのまま黒羽の方へ向かい、倒れている彼女を見下ろすと、軽々と肩に担ぎ上げる。
「また会おう、カル。」
そう言い残すと、スイレンは背を向け、悠然とその場を去った。
スイレンの足跡が遠ざかるたびに、カルの心には深い屈辱感が刻まれていく。
スイレンが姿を消すと、戦場には再び静けさが訪れた。カルは震える拳で地面を叩き、唇を噛みしめる。
「くそ...!次こそは...!」
敗北の痛みを胸に刻み、カルは再び立ち上がることを心に誓ったのだった。
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