第2章 第6話 カルVS白神
八尾の戦場が静まり返る。
Dire Mass(ダーイァ・メース)が倒れ、戦闘が終息を迎える中、カルはついに決断を下した。
今まで我慢してきたものが、堰を切ったように溢れ出る。
白神義影、その冷徹な支配に対する怒りが、カルを突き動かしていた。
「白神、ボクと戦え!」
彼の声は怒りに満ち、響き渡った。
周りの魔導士たちが驚き、息を呑む。
宇賀神(うがじん)もその言葉に反応し、心配そうにカルを見つめる。
「おいおい、カルくん…本気か?」宇賀神の声には、どこか切羽詰まったものがあった。
だが、カルは決して引かない。
その目は固く、もう後戻りはできないことを理解していた。
白神(しらがみ)の横暴を、今ここで止めなければならない。
白神は冷淡に振り返り、その顔には無表情な笑みが浮かんでいる。
「ふん。ええやろ。お前がどれほどの力を持っていようと、所詮はAランクに過ぎひん。それにお前はもともとはCランクかDランクやったはず。違うんだよ。生まれつきの天才の俺とは。お前らみたいな一般人出身にはわからんやろ」
そう言って、白神は静かに手に持った炎の剣を構えた。
その炎は、普通の火ではなかった。冷徹で、氷のように冷たい青い炎。
彼の魔術は火属性を基盤としているが、他の火の魔術師とは一線を画す、冷酷な力を秘めていた。
カルはその冷徹な目にしっかりと向き合い、拳を握りしめた。
「この拳の風と火でお前を叩き直す!」
その言葉と共に、カルは両手に炎をまとわせ、風を巻き起こす。
火と風が混じり合い、彼の拳は凄まじい力を持つ武器となる。
「Blaze Cyclone Strike!(ブレ゜ーイズ サーイクロ゜ン スチョラアアイク)」
カルは叫びながら、白神に向かって飛び込んだ。
その速度と力は、Aランク魔導士の域を超えていた。
これはイェシカ先生いわく「発音が正解に近いほうがより威力が増す」かららしい。
風が轟音を立て、炎が火花を散らしながら、カルの一撃はまさに猛竜のようだった。
だが、白神はその攻撃を一瞥もせず、まるで軽くあしらうかのように剣を一振りした。
その冷たい炎が、カルの力強い一撃を悠々とかわす。
「そうやって突っ込んできても無駄や。」白神の言葉は冷たく、耳に痛かった。
彼の剣から放たれた氷のような炎が、カルの攻撃を完全に無効化した。
カルはすぐに間合いを取るが、白神の目には冷徹な輝きが宿っていた。
彼は次の瞬間、カルの方へと一歩踏み出す。その歩幅が非常に短いにもかかわらず、カルはその接近に恐ろしい気配を感じ取る。
「Frostbite Slash!(フロストバイト スラッシュ)」
白神の剣が一閃。
氷のような炎がカルの身体を直撃した。
カルは「The Shield」と叫ぼうとしたが間に合わなかった。
カルの体は猛烈な衝撃を受けて吹き飛ばされる。
「うっ…!日本語発音なのになんて威力や」
カルは地面に叩きつけられ、体が痺れるような痛みに耐えながら、何とか立ち上がろうとする。
だが、白神の攻撃は止まることなく続く。白神はイェシカ先生の先輩にあたる。
なので当然イェシカ理論やイェシカ式英語発音を教わっていない。
故に英語の詠唱も日本語発音なのだが、それでもとんでもない威力を誇っていた。流石Sランクと言うべきだろうか
再度、白神がその冷徹な目でカルを見下ろし、剣を構える。
その姿はまるで氷の王のようだ。火属性なのに
「Aランクの自分を強者だと思っているのか。お前のような者が、Sランクと戦えるわけがない。そして生まれつきの魔導士じゃないお前みたいなカスには覚悟がない。」
その一言が、カルの胸に深く刺さる。
日本魔導士連盟大阪支部の中ではBランク以上が上級魔導士と呼ばれる。
しかし同じ上級魔導士でもAランクとSランクではこれほどの戦力差があることをはじめて痛感した
だが、その言葉を受けても、カルは諦めることなく再び立ち上がる。
その瞳に宿るのは、ただひたすらに戦い抜く意志だけだ。
だが、次の瞬間、白神の魔術が再び襲いかかる。
「Inferno Crescent(インフェルノ クレセント)!」
白神が繰り出した炎の斬撃が、空を切り裂き、カルの身体に命中する。
その一撃により、カルの体は完全に宙を舞い、地面に叩きつけられた。
カルは倒れたまま動けず、その意識は薄れかけていく。
周囲の魔導士たち、宇賀神も含めて、みんなその光景を見守っていた。
カルが倒れた瞬間、彼らの心に重く沈むものがあった。
Aランクでも十分に強いと言われていたカルが、Sランクの白神には到底敵わないことを、まざまざと見せつけられたのだ。
カルが立ち上がることはなかった。白神はその勝利を軽く受け入れ、無言で周囲を見渡す。
「クズ共が。お前らのようなバイト上がりの魔導士がいくら戦っても、どうせ俺様の足元にも及ばない。弱者は黙って従え。でなければ、次はお前らだ。」
白神の言葉は冷たく、支配的だ。
宇賀神も、他の魔導士たちも、深い絶望を感じていた。
カルの敗北は、彼らにとっても大きな打撃であり、この先も白神のようなSランク魔導士たちに従わなければならないという現実に、全員が押し潰されそうになっていた。
そして、カルが倒れている間、白神はゆっくりとその場を去る。
彼の冷徹な背中が、いましも彼らにとってどれほどの重荷であるかを象徴していた
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