第2章 第5話 詐欺師っぽい同僚
大阪府東部の八尾(やお)市の街、八尾駅周辺はどこかのんびりとした雰囲気が漂っていた。
カルの住んでる家から遠くないここに、今日は倉庫関連の仕事で来ていた。
周りの喧騒とは裏腹に、カルは少し疲れた顔で宇賀神望(うがじんのぞみ)と並んで歩いていた。
宇賀神はBランクの魔導士で、年齢はもう少し上だろうが、どこか若々しい印象を持つ男だった。
体格はがっしりしており、普段はどこか頼もしく見えるが、今日はどこか柔らかな印象で、カルに対して少しばかり甘い言葉をかけていた。
「カルくん、君みたいな有能な魔導士にはもっと広い世界を見てほしいんだよ。実は俺、ちょっとしたビジネスをしていてね。」
宇賀神はにやりと笑い、商売人のように手を広げた。
「ビジネス?」カルは少し不安そうな顔をした。「怪しい話じゃないんですか?」
「そんなことはないよ。君のような力を持つ者にとっては、これ以上ないチャンスや。少しだけ話を聞いてくれれば、君にもきっと得があると思うでよ。」
宇賀神の笑顔は優しさを装っていたが、どこか引っかかるものがあった。カルはしばらく考えてから、うなずいた。
「わかりました。ちょっとだけ話を聞いてみますよ。」
彼は宇賀神の誘いに乗りかけた。
どうやら、宇賀神が紹介しようとしているのは、何やら裏社会との関係が深いビジネスのようだった。
金銭的な成功を得るためには多少の危険を冒す必要がある、という内容だったが、カルはまだその話が現実のものとは思えなかった。
いや、日本魔導士連盟の仕事もおなじ様なものかもしれない。
それならなおさら乗る必要もないのでは??
その時、突如、通信機から声が飛び込んできた。
「全魔導士、出動命令!八尾の近鉄アリオ付近でDire Mass(ダーイァ メース)が出現!直ちに現場に向かえ!」
「え!?このちかくで!?」
宇賀神の顔が険しくなり、すぐに腰を抜けるように魔法の杖を取り出した。
「さぁ、話は後や。急げ!」
カルはすぐに駆け出し、宇賀神と共に近鉄アリオ前へと向かう。
あっという間に、二人は現場に到着し、白神義影がすでに指揮を取っていた。
この前の蛭子光一もいる。
Dire Mass(ダーイァ メース)。その名前の通り、何十もの頭を持つ恐ろしい怨獣であり、今や八尾の街にその姿を現していた。
その巨体はビルの高さにも匹敵し、無数の頭が互いに喧嘩をしながら、その場を荒らしている。
「白神さん、指揮をお願いします!」
宇賀神は少し嬉しそうに言うと、すぐに魔力を集中し、攻撃の準備を整える。
だが、その時、白神が冷徹な目で周囲を見渡し、指示を出した。
「全員、戦闘準備。相手はDire Mass、まずは防御を固めろ!」
戦いが始まる。
その瞬間、Dire Massのいくつもの頭が互いに激しくかみ合い、吠え合いながら戦闘態勢をとった。
その隙をついて、宇賀神は瞬時に攻撃を仕掛ける。
「今や!」
宇賀神は杖から炎のビーム魔法を放ち、Dire Massの中心部を狙って突き刺す。
宇賀神は杖を使うタイプの魔導士らしい。
轟音と共に、魔法のエネルギーが怨獣の一つの頭に命中した。
その頭は激しく崩れ、爆発的な煙とともに沈んでいく。
だが、その瞬間、白神が冷徹な目で宇賀神を見つめ、素早く反応した。
「宇賀神、出過ぎや!」
白神は魔法を放ちながら、宇賀神が接近している位置に目を向けた。
そして、冷徹な命令を下す。
「宇賀神、お前ごときに手柄など、取らせん!」
その言葉と同時に、白神の魔法が宇賀神に向かって放たれた。
予想だにしなかった攻撃に、宇賀神は反応が遅れ、直撃を受けてその場で倒れ込む。
「う、うそやろ…」
宇賀神は顔をゆがめ、血を流しながら地面に崩れ落ちた。
カルはその光景を目の当たりにし、心の中で怒りが沸騰する。
「白神!」
カルは咆哮し、全身に炎と風を巻き上げる。「仲間になんてことを!許さない!」
Dire Massの方を向き、カルは怒りのままにその全力をぶつける。
風と炎が一つになり、凄まじい勢いで怨獣に突進する。
Dire Massの一頭がカルの攻撃を受けて爆発し、巨大な爆音が響いた。
その隙をついて、カルは白神に近づき、その視線は怒りに満ちていた。
「白神!これで終わりや!ボクはもう、あなたのやり方に耐えられない!」
白神はこたえる。
「仲間???カネのために戦ってるような、それもBランク魔導士など仲間だと思わんが」
「いやお前さっき手柄は渡さんぞとか叫んでたやん」とカルは呟く
カルは白神を睨みつけると、冷ややかな目で応じる白神に向けて、決闘を申し込む。
「ボクと戦え、白神。お前と決着をつける!」
白神はその申し出を一瞬黙って聞いた後、静かに答えた。
「構わん。が、覚悟はできとんのか?」
その瞬間、カルは心の中で誓った。
日本魔導士連盟のこんな腐敗は終わらせてやる、と
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