第1話 道を決める時は木の枝で


「うん? ここどこだ?」



 俺は確かあの扉を開けた。そこまではしっかりと覚えている。だが、気づけば良くわかないところにいる。記憶喪失か? もしかしてとうとうボケてきたか? 俺まだ18なのに?



「……なんか、うるさ………え?」



 あまりにも上がうるさかったので見上げてみた。俺の目に飛び込んで来たのは鳥、だが普通の鳥ではない。翼が4枚ある鳥だった。



「えー? 嘘だろ?」



 そして周りを見渡すとうっすらと月が見える。しかも2つ。



「あーうん。なるほど。これはあれだな。異世界転移って奴だな!!」



 俺はウッキウキになる。まさか別の世界に転移出来る日が来ようとは思ってもみなかった。



「もしかして魔法とかも使えちゃったりする!? そうなると俺嬉しさで死ぬぞ!?」



 興奮が抑えきれない。もしかするとここならクールキャラとして生活出来るかも知れない。更にカッコよく魔法が使えちゃたりするかも知れない。俺は期待で胸が膨らむ。膨らみすぎて弾けそうになる。



「そうと決まればまずは人がいるところを探さないとな」



 俺は適当に拾った木の枝をコテンと倒す。どこに行けば良いのか分からないのでこれで決めることにした。


「よし、向かうだな」



 俺は木の枝が倒れた方向へ進む。



「え?」



 背中から急に嫌な汗が流れる。拒絶反応に近い現象。そして呼応するように周りの動物が森から逃げ出して来た。



「や、やべぇな。こりゃ相当まずいパターンなんじゃないか?」



 これは結構やばい事態だ。俺の勘がそう告げている。


「よし、逃げるか」


 これは逃げるのが最善だな。うん、この森からなるべく離れて行動しよう。俺は森から離れて歩く。



「くっ、僕が時間を稼ぐから2人とも早く逃げるんだ!!」



「嫌だ! 私も戦う!!」



「………まじかー」



 森の中から聞こえて来る女の人の声。状況から見るにこの嫌な予感の元となる何かと声の持ち主は戦っているはず。でも、この嫌な予感の感じはかなりやばい奴っぽいんだよな。



「けどなぁ」


 見捨てるのは駄目だ。俺の心に良くない後味を残す。ならば、助ける一択だ。



「いや、待てよ?」


 そこで俺は思いつく。これクールに助けられる絶好のチャンスなんじゃないのか? 今こそクールを発揮する時なのでは?



「そうだ。その通りだ!!」



 きっと俺には強力な魔法が神様的な奴から与えられてるはずだ。ならば、これはそれを試す絶好のいい機会なのではないか?



 だんだんと頭が熱くなっていくのが分かる。



「しゃあ!! 魔法でボコボコにしてやるよ!!」




 俺はウキウキの気分で森の中へ入る。

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