【駒三神駅】 プーカと鬼ごっこ

 駒三神駅こまみかみえき歩道橋。

 トンネルから出てすっかり明るくなった空の下。

 スッキリした環境で、祥観は大きく深呼吸をした。

「ふうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………………………はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………ふうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………………………………」

「ヒヒイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーンッ! 」

「ヒヒイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!! 」

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーん………………うるさあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーい! 」

「ううん! 」

 ボガンッ!

「ええ?! 」

 祥観は、急に現れた黒い馬達にイライラした。

 その時でた、大声にイライラしたハートが祥観を殴ろうとする。

 しかし、レミングが祥観をかばい頭を殴られた。

 ハートには、祥観を冷静にさせたいと言う気持ちがある。

 だが、レミングにとっては祥観は守るべきもの。

「ふぅぅぅぅぅ……………………」

 ハートは、そっと拳を下ろした。

「んで、レミング、これからどこに行くの? 」

「とりあえず、市役所。偉い人なら知っている」

「当てになるのかしら? 」

 祥観とハートは、レミングを先頭に市役所を探した。

 まずは、北方向の黒い建物。

「いらっしゃいませー! どの洋服をお探しですか? 」

 行った先にあったのは、衣料品店。

 馬面男も馬耳娘もキレイにおしゃれをしている。

「僕は、その穴が開いた…………」

 バゴンッ! 

「うぅぅぅぅぅ……………………」

「恥じらいなさい! 」

「ハートは、全裸じゃん! 」

「『モンスターは全裸でも問題ない』って知っているでしょう! 」

「そうだった……………………」

「とにかく、次へ行きましょう! 」

 続いて西方向の白い建物。

「へい、いらっしゃい! 」

 シャァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーー…………………………

「はぐうっはぐはぐ………………」

「ズズズズズズズズズズズズッズズズッズズズッズズズッ! 」

 行った先にあったのは、ラーメン屋さん。

 馬面男や馬耳娘がいるのに、みんなチャーシューを食べたり麺をすすっている。

「何だかカオスだね………………」

「祥観、この世界では普通よ! 」

「ううん…………まぁ、いいや、次へ行こう! 」

 次に行ったのは、南方向の赤い建物。

 ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ…………

「いらっしゃいませー! 」

 行った先にあったのは、トレーニングジム。

 馬が乗れるくらいの大きさがある木製のランニングマシーンがあった。

「あのトレーニングマシーンは、魔王城で使わなくなった機械を再利用しているようね」

「そんな、無駄知識はいい。早く市役所へ行こう! 」

 次に行ったのは、東方向にある青い建物。

「ランランララランラ~♪ ラ~ラ~♪ ラ~ラ~♪ 」

「盛り上がっているかぁーーーーーー! 」

「いらっしゃいませー! 」

 行った先にあったのは、カラオケボックス。

 プーカらしい施設だが、どうしてこの世界にあるのだろう? 

 しかし、祥観達は、深く考えずに店を出た。

「結局、市役所は見つからなかった…………」

 と、レミングがガッカリしたその時。

「ううん? 下を見て! 」

「ええ?! 」

「ええ?! 」

 祥観とハートは、歩道橋に開いた大きな穴を見た。

 何と、駅の下に『市役所』と書かれた場所があるのだ。

「普通、市役所は駅の一緒じゃないよねぇ」

「固いことは考えるな。祥観。今すぐ、行こう! 」

 

 コンコンコンッ!

「お客様がお見えです」

「入れてくれ」

 ガタンッ!

「こんにちは! 」

「こんにちは!! 」

 祥観達は、市長室へ入った。

 そこでは、馬面の黒い獣人が回る椅子に座っている。

 祥観達は、向かい合うように三つ椅子一人ずつ座った。

「用件は、秘書から聞いている。変身魔法を手に入れたいらしいな」

「はい、僕はプーカが教えてくると思った。だから、来たんだ。方法があれば教えて欲しい! 」

「方法はある。十二体のプーカのお尻を叩けばいい」

「市長のお尻は、ダメですか? 」

「叩いてもいいが、魔法を与えることは出来ないぞ」

「どう言うこと? 」

「変身魔法を与えられるのは、お尻に魔方陣があるプーカだけだ。わたしは、右肩に魔方陣がある。右肩上がりと言う験担ぎみたいなものだな」

「験担ぎのためなら仕方ない。教えてくれてありがとうございました! 」

 レミングはお礼を言った後、祥観とハートを連れて市役所を出た。


 歩道橋に着いた三人。

 レミングは、ニコニコした様子で目当てのプーカを探していた。

「おしり~♪ おしり~♪ おしり~おしり♪ おしり~♪ おしり~♪ おしり~おしり♪ 」

「ウハハハ………………」

「変な魔法少女だね………………」

 祥観とハートは、苦笑いをしながらレミングを見る。

 祥観達にとって、レミングの変態ぶりには嫌ともいいとも言えないのである。

 しばらして、レミングの足が止まった。

「あった! 」

 ダッダッダッダッ!

「ええいっ! 」

 レミングは、勢いよく走って魔方陣が描かれているお尻を叩こうとした。

 と、その時。

 グオンッ! バゴンッ!

「ぐおっ! 」

 プーカのダブルキックかレミングの腹に炸裂。

 ダンッダンッダンッダンッ!

 レミングは、腹から血を吹き出しながら転がるように倒れていった。

 タッタッタッ!

「大丈夫? レミング? 」

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………………………

「大丈夫…………僕は、不死身だよ……」

 ポカポカポカッ…………………………

「酷いことをするわね、魔法少女さん! 」

「ううん?? 」

 祥観とハートは、後ろを向いた。

 やって来たのは、レミングにダブルキックをしたプーカ。

 起こっている様子だが、レミングに恨みがあるのだろうか?

 しかし、ダブルキックをしたプーカの答えは違うものだった。

「ごめんなさい! そんなに、嫌がってたなんて! 」

「嫌がてはいないわ」

「プーカ族は、お尻を叩かれるのが好きなの。気にしないでいいわよ」

「よかった……………………」

「それより、あたしと鬼ごっこをしない? どうやら、魔法少女さんは、変身魔法が欲しいようね」

 ヒユンッ!

「ああ、変身魔法が目当てだよ」

「駅の屋上に行きましょう。プーカがたくさんいるわよ」

「あ、ありがとう! 」


 駒三神駅屋上三駒神社。

 二体の馬の石像と黒い鳥居がある神社。

 その前で、黒い馬の姿をしたプーカ達が鬼ごっこをしていた。

 ポカラッポカラッポカラッポカラッポカラッポカラッポカラッポカラッポカラッ…………

「ヒヒイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーンッ! 」

「ヒヒイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!! 」

「馬の鳴き声が多くて賑やかね! 」

「この神社では、黒、白、茶色の三体の駒神様を祀っているの。ここで行われている鬼ごっこは、昔は崇拝のために行われていたわ。今は、冒険に行くための訓練や娯楽のためにやっていることが多いわ」

 話しが終わった後、神社を案内したプーカは祥観の後ろにたった。

 ズズズウッドンッ!

 頭を上げたと思っていたら、祥観がプーカの背中に乗っている。

「ええ? 」

「祥観! 」

「ヒヒイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーンッ! 」

 ポカラッポカラッポカラッポカラッポカラッポカラッポカラッ………………………

「う゛うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 プーカが走っている間に、祥観の体が見ると変化。

 天女ヘアーは耳となり、体小さくなってウサギのような姿になる。

「祥観に何てことをするんだ! 」

「悔しかったら、変身魔法を手に入れなさい。その魔法でプーカの呪いを解けるわ! 」

「ううん! 」

 シュトンッ!

 レミングは、変身魔法を手に入れるためにプーカのお尻を蹴り上げた。

 シュトンッシュトンッシュトンッ!

 お尻に魔方陣が無いプーカは、蹴り上げる。

 パシンッパシンッパシンッパシンッパシンッパシンッ!

 お尻に魔方陣があるプーカは、叩きながら進んで行った。

 シュトンッシュトンッパシンッ! シュトンッパシンッ!

 シュトンッパシンッパシンッ!

 これらを繰り返した後、レミングは、十一体目のプーカのお尻を叩いた。

 パシンッ! シュトンッ!

 レミングは、祥観を連れ去ったプーカの所に前に見事着地。

 後は、目の前のプーカのお尻を叩くだけである。

「さすが、魔法少女さんね。神超えるモンスターなだけあるわね」

「うん! 僕は、邪神を倒したことがあるからね」

「けれど、あたしがここで、負けを認めるとは思わないでよ! メタモルフォーゼ! 」

 ジユンッ……バンッ!

「ううん? 」

 目の前にいるプーカが姿を変えた。

 炭ように黒いショートヘアーと炭ように黒い肌、『病み闇』と言う文字が書かれたパーカーを着た爆乳の馬耳娘である。

「あたしの名前は、ヤミヤミドーナツ。最強のプーカ族よ。プーカ族は、苗字が禁止されていて文字数が二文字から九文字までなの」

「説明しすぎだよ」

「とにかく、お尻かけてあたしと戦いましょう! 」

「ああ! 」

 ヤミヤミドーナツとのバトルが始まった。

「先行は、あなたに譲るわ」

「いいんだね! 」

 ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーー…………………………

 レミングは、両手から黒くて丸い球を一つ作り出す。

 そして、ヤミヤミドーナツに目がけて放った。

「中堅魔術『シェーバースフィア』」

 ビユンッ!

「メタモルフォーゼ! 」

 ビユンッ…………バンッ!

 ヤミヤミドーナツは、黒いウサギに変身。

 黒い球は、屋上の外へ飛んで行ってしまった。

 ビコンッ!

「ううん? 」

 レミングは、上を見る。

 黒いウサギが頭に乗ったと思ったその時。

「メタモルフォーゼ! 」

 ブシャァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!

 レミングが黒い馬に押し潰された。

 ドンッドンッ!

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー………………

 ビユンッ!

「あら、潰しても復活するのね」

「僕は、不死身だよ! 」

「解ったわ…………………………」

 これ以上戦えないと思ったヤミヤミドーナツ。

 レミングの方に向けておしりを見せた。

「あたしのおしりを叩きなさい! 」

「解った! 」

 パシンッ!

 レミングは、十二体目のプーカのおしりを叩くことに成功。

「やったぁ。これで、祥観を助けられる! 」

 レミングは、祥観の前にやって来て頭を触った。

「チェンジ! 」

 ビコンッ…………バンッ!

「ええ? わたしは一体? 」

「元の人間に戻ったんだね。よかったぁ! 」

「人間に戻った? あたしが? そう言えば、周りいつもよりうるさかったなぁ」

「とにかく、次の駅へ行こう! 」

「結局、この駅はダンジョン駅ではなかったね」

「都合だよ、都合! まぁ、次こそは、ダンジョン駅だよ! 」

「楽しみだね! 」

 ヅァッヅァッヅァッヅァッヅァッヅァッヅァッヅァッヅァッヅァッヅァッヅァッ…………

「…………………………ううん………………あたしをほっとかないで………………………」

 とにかく、色々あったが、レミングは変身魔法を手に入れた。

 そして、祥観達は神社へ行く時に使ったエレベーターで、3番乗り場へ下りていく。

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