【天女吉財前駅】 神殺しの魔法少女は、孤独だった
天女吉財前駅駅前ホテル。
それは、鳳凰台駅から四つ先にある、天女吉財前駅西口の付近にあるホテル。
そのホテルの真ん中に、一件のお寺があった。
吉財天女寺。
吉祥天と弁財天の掛け軸が飾られている小さなお寺である。
その中に、祥観とレミングがいた。
「あの女神、祥観に似ている。祥観が人間だと言うことに、僕気づかなかった。ごめん、祥観! 」
「そう言うことないよ。もう済んだことだし。それに、この髪型は、女神信仰のためでないから」
ガサガサガサッ!
「ううん? 」
祥観は、バッグから団扇を出した。
そこには、天女の髪型をした男が描かれている。
「これは? 」
「天津様よ! あたしの推しのアイドル。推しのキャラになりきるためにこの髪型にしたの」
「推し?! 祥観は、僕のものじゃないの? 」
「そうよ。あたしは、アマツ様のためのものなの? 」
シュインッ!
「ええ?! 」
「祥観は、僕が守るべき人。祥観を奪う天津は、許さない! 僕の祥観を奪う神は…………神殺しの僕が引き離してやる! 」
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!
フワァンッ!
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!
フワァンッ!
「うわぁっ! うわわっ! 」
天津のことが許せなくなったレミング。
彼女は、ナイフを振りまして団扇に襲いかかった。
しかし、祥観は、団扇を一枚二枚と後ろに隠しす。
「よくもおっ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 」
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!
「よおっと! 」
ドンッ!
確実に、天津を倒したいレミング。
しかし、祥観に馬乗りにされて動けなくなってしまった。
「団扇を渡せ………………祥観をその神から引き離す……………………」
「だったら、レミングもアマツ様を推したら? そうすれば、あたしは、レミングのものになるよ! 」
「祥観が僕のもの…………………………」
キリリンッ!
ドサッ! ムギュゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーー!
「ええ?! 」
安心したのだろうか?
祥観は立ち上がり、レミングは、ナイフを落とした。
そして、レミングは祥観にハグをする。
ギュウギュウギュウギュウギュウギュウギュウギュウギュウギュウギュウギュウ…………
押しつけ合うおっぱいが、祥観への大好きな気持ちを表している。
「ありがとう、祥観! 」
「ど、どういたしまして! 」
「僕、天津のこと、全て知っているわけではない。知らないことは、教えて! 」
「うん! 任せて! 」
「祥観、レミング! 夕食だよーーーーーー! 」
「はーーーーーーーい!! 」
祥観とレミングは、お寺の階段を下りてホテルの扉を通った。
そして、ハートを先頭に、二人は食堂へと歩いて行く。
トットットットットットットットットットットットットットットットットットットッ……
夕食の時間。
ホテルの食堂にある長方形のテーブルの前に、祥観とレミングとハートが座った。
「いただきます! 」
「いただきます!! 」
目の前には、三種類のメニューが置かれていた。
右に湯豆腐、真ん中に野菜天寿司、左にはお麩のステーキが置かれている。
どれも、植物性のものだけを使った料理である。
お寺があるホテルらしいメニューだ。
「湯豆腐から食べもうかなぁ? 」
祥観は小皿を持ち上げた。
「ううん? 」
祥観は、違和感に気づく。
思っていたよりも小皿が重い。
祥観は、席に戻って確認する。
「何で重いの……て、そう言うことか! 」
急に重くなった小皿の謎がやっと解けた。
すでに、湯豆腐が入っていたのである。
しかし、まだ謎が残る。
誰が湯豆腐を入れたのだろうか?
祥観は、左を向いた。
「ううん? あたしじゃないわよ! 」
ハートを疑う祥観。
嘘を疑いたくもあったが、とりあえず本当だ信じて左を向いた。
「むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむ…………ううん?! 」
祥観は、驚いた。
レミングが手を上げていたのだ。
しかも、テーブルクロスの上には『僕がやったよ』と書かれたメモ書き。
わざとらしいくらい暗い正直者アピールが強かった。
しかし、レミングが本当に湯豆腐をよそったのか?
祥観はレミングに話を聞いた。
「本当に湯豆腐をよそったの? 」
「証拠は、あるよ! 」
レミングは、お玉を見せた。
お玉には、湯豆腐がくっついている。
「ハート、見せて! 」
「見せるわね…………」
ハートはお玉を探した。
「あれ? 」
ハートはお玉を探したが、お玉はどこにもなかった。
「祥観は持っているかしら! 」
「左手にもっいるよ! 」
祥観がお玉を見せた。
ピカピカのキレイな茶色で、湯豆腐はついていない。
どうやら、本当にレミングが湯豆腐をよそっていたようだ。
しかし、まだ謎が残る。
どうして、レミングが湯豆腐をよそったのだろうか?
その動機について、祥観が再びレミングと話をする。
「あなたは、どうして湯豆腐をよそったの? 」
「僕は、祥観のための魔法少女だからだ。祥観のためなら何だってする! 」
「うーん………………………」
「どうしたの? 」
祥観は、レミングのおせっかいが少し迷惑に感じた。
レミングは寂しいのだろう。
神殺し魔法少女にも、甘えることも必要だと思った。
「ありがとう。甘えたい時は、あたしに甘えて! 」
「あ、ありがとう! じゃあ……………………」
キンッ!
「あーん! 」
「あーん! むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」
祥観は、スプーンですくった湯豆腐を食べた。
薄味の豆腐ではあるが、舌を撫で回すように動く旨味、自分で食べるよりも感じやすくなっている。
「次は、菜の花の天ぷらのお寿司! あーん! 」
「あーん! バリバリバリバリむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……うーん……………………」
祥観は、箸で運ばれた天寿司を食べる。
落ちることなく器用に運ばれたそのお寿司は、非常に苦味が強かった。
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……………………ゴクン! ううん? 」
しかし、苦味は五秒をた経たずに消えた。
天ぷらの衣とシャリの味が苦味を和らげたのである。
「口に合わなかった? 」
「ううん? 美味しいよ! 」
「よかったぁ! 最後は、お麩のステーキ! あーん! 」
「あーん! むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……うーん! 」
祥観は、一口大に千切られたお麩のステーキを食べた。
他のメニューと比べて、喜びの表情がはっきりと浮かびあがっている。
モチモチの食感と甘辛いおろし醤油が祥観の口にあっていたのだろう。
「お麩のステーキ、美味しい! 」
「よかったぁ! 僕、嬉しいよ! 」
長い夕食の時間が刻々と過ぎていく。
そして、夕食の時間は、終わりを迎えた。
「ごちそうさま! 」
「ごちそうさま!! 」
「祥観。推しに会える魔法道具があるから、一緒に見よう! 」
「いいよ、けれど、お風呂が終わってからね! 」
ボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシボシ……
祥観は、頭を拭きながら歩いている。
天女のような髪型は、入浴のために解いていた。
服はブレザーではなく、ホテルで用意された青い寝巻きをしている。
そんな姿の祥観は、レミングが待つ寝室に向かっていた。
「どう言うことなのかなぁ? あたしの世界とつながっとどうやって繋げるの? 」
ガタッ!
「ええ? ああ………………」
「待ってたよ! 」
祥観は、寝室のドアを開けた。
レミングが全裸でベッド上にいるのである。
しかし、祥観はすでに見慣れていた。
レミングは、ホテルに来た時から全裸なのである。
この世界では、モンスターは全裸でもいいとされているからなのだ。
そのことは、祥観はすでに知っていた。
「祥観も全裸になりなよ! 全裸は、気持ちいよ! 」
「…………そうだね、どうせ室内だし…………」
祥観は、寝巻きを脱いで全裸になった。
そして、レミングが四角いいたを光らせる。
ブンッ!
「何? この板? 」
「賢者の石で出来たタブレット。通称『賢者のタブレット』」
「賢者のタブレット? 」
「そう。これは、異世界の様子が映る魔法の道具。推しに会える便利アイテムだよ! 」
「推しに会えるの? 見てみましょう! 」
祥観とレミングは、賢者のタブレットを見た。
タブレットには、クイズをやっている人間がたくさんいる。
その中に、財前天津の姿があった。
「では、第一問! 」
ダダッ!
「アマツ様♡天然っぷり見せてぇ♡」
「みんなの大好きなラーメン。漢字書くと……」
『拉麺』
「と、表します。さて、『拉麺』の『拉』の意味は何? 駿夫氏でフリップでお答えください! 」
ヒンホーンッ!
「葦毛の芦屋さん! 」
『手からビーム』
ブッブーーーッ!
「残念! 」
ヒンホーンッ!
「アタゴの宍戸さん! 」
『手から汗が……』
ブッブーーーッ!
「残念! 」
ヒンホーンッ!
「石地蔵に蜂 八田さん」
『テニス』
ブッブーーーッ!
「残念! 」
ヒンホーンッ!
「セブンオーシャン 印田さん」
『手塩に掛ける』
ブッブーーーッ!
「残念! 」
ヒンホーンッ!
「七つの大海
『糸で切る』
ブッブーーーッ!
「残念! けれど、5%近づいた! 」
ヒンホーンッ!
「
『伸ばした(麺)』
ヒンホーンッ!
「財前さん正解でーーーーす! 」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチッ!
「ええ?! 天津様って、こんなキャラ? 」
「これは、納得! 」
「ええ? 」
祥観は、レミングの方を見た。
なぜ、レミングは納得したのだろう?
そのことについて、祥観はレミングに聞いた。
「レミングは、おバカキャラが好きじゃないの? 」
「最初の内は。けれど、人もモンスターも、何時までも未熟じゃない。バカは、努力したら馬鹿じゃなくなる。これが、自然」
「そんなぁ………………」
祥観は、天津の成長にガッカリしてしまった。
おバカだった推しは、もういないのだと。
「もういい、寝る! 」
バササッ!
愛した推しを忘れたい祥観は、すぐに布団の中に入っていった。
「さぁ、クイズの続き、見よう」
レミングは、祥観をほっといてクイズ番組を最後見続けた。
二時間後。
パチンッ!
タブレットの時間が終わった。
レミングは、タブレットをバッグにしまう。
その後、祥観が寝る布団の中に入る。
そして、布団の中で、レミングは祥観のお腹を優しく撫でた。
「ううぅぅぅぅぅぅ………………」
「祥観には悪いけれど、天津が成長したのは事実。彼のかんがえは変えられないよ。これでよかったね。僕のための祥観になってくれて………………」
ギュギュッ!
「大好き、祥観♡」
その後、レミングは祥観を抱きながら眠りについた。
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