デジタルガーデン
@endolu_hiro
第1話 結衣
窓の向こうでトラストシティのビルは夜を知らずに輝き続ける。
寝静まった部屋の中、
学校に向かう坂の手前で
これが歩生の毎日の習慣。決して犯罪などではない。一途な思いなのだと毎日自分に語り掛ける。
中学生の恋はあまりにも未熟で、友人にすぐに話したくなる衝動に駆られる。歩生も例にもれず、
中学生というのは恋したからバカになるんじゃない、恋の匂いの周りにはハイエナのように他人の恋に飢えた猛獣であふれかえっている。結衣は特別だれかに寄生しがちな女子社会のなかにあって、その立ち回りは男女問わずどの生徒からも睨まれることなく、それでいて幅広い交友関係を上手に調節する所謂"オタサーの姫予備軍"。典型的なコーディングヲタの歩生がラノベのヒロインと結衣とを照らし合わせて気になって仕方がなくなるのは想像に難くない。知らぬうちに1・2軍女子による結衣防衛隊なるものができていた。
それでも結衣はやはりオタサーの姫予備軍、放課後の教室で歩生に話しかけた。その瞬間、窓際でBeRealの通知に沸いていた結衣防衛隊の女子たちが歩生を睨みつけた。結衣は防衛隊によって半ば強引に歩生と別れた。
歩生は防衛隊の覇気に圧倒され、2・3日委縮していた。
弁当を片手に歩生のボヤキを静かに聞いていた咲間は歩生の大きなため息に爆笑した。
咲間「ハハッ、こりゃ傑作だなおい。女子のBeRealのテンションを冷ますなんて並大抵の事じゃない。NVIDIAのGPUラックをデータセンタごと水冷するくらいの偉業だよ。」
歩生「いや、マジで覇王色すぎて死ぬかと思った。」
歩生は防衛隊が自分を過度に意識して結衣を遠ざけようとしていることを咲間に伝え、結衣の男写しの咲間に防衛隊の凶行を止めさせるように頼み込んだ。
歩生「このままじゃ話しかけられないからチャンスもない。頼むから防衛隊なんとかしてくんない?」
咲間「いや、無理だろ。防衛隊なんて結衣への独占欲の塊なんだから。歩生が結衣に好意を向けさせないように一生懸命なんだ。外野が口出せないよ。」
歩生「うちの代のディカプリオ~、お前恋したことないからわかんないだろうけど、今すっごーく重大な危機に直面しているんだ。親友だろ?人生の危機に立ち向かう仲間を応援しようって気にはならないのか。良心に問いかけろよ。」
咲間は笑いながら教室に帰っていった。
歩生が教室に帰ると、咲間と防衛隊がなにやら楽しそうに談笑している。なんだ、咲間いい奴じゃないか。防衛隊をうまく懐柔できてる。このまま任せておけば、防衛隊も話を分かってくれるようになるだろう。
歩生は上機嫌で放課後咲間にサーティーワンを奢った。咲間がワッフルコーンのレギュラーダブルを注文した時は少し引いたが、それでも咲間は恩人だ、部活帰りのスプリンターはよく食べるんだろう。800円くらい構わない。
??「あれ、咲間じゃん!」
背後から色めく女子の声がする。嫌な声だ。あれ、待てよ。そういえば咲間が説得してくれたんだった。
??「誰と遊んでんの?」
咲間「
そうだ、柚香だった。たしか防衛隊の1軍女子のトップだ。たしか咲間の幼馴染で仲がいいからクラス会で男女の意見が割れたときとか喧嘩もこの二人がうまくまとめ上げてる。防衛隊の件もうまくやってくれたんだろう。
柚香「歩生くん?あー結衣のこと好きなんだっけ?ごめんけど防衛隊とか存在しないから。あと、あの子たちも結衣が好きで集まってるだけだから悪く言わないであげて。」
は?
柚香「さくまー、明日は一緒に帰ろー。ほら、バレンタインだし。それじゃあ歩生くん、またねー。」
は?
歩生「え?どういうことなん。俺が悪いん?」
咲間「なにが。」
歩生「いや、話違うやん。防衛隊、結衣!」
咲間「いや待て、覚えてない。」
覚えてない?んな訳あるか!今日の昼相談したばかりだろ。親友を助けるために良心に従って防衛隊を説得してくれたんだろ。
咲間「なんの話だっけ。」
歩生「話聞けよ、 アイス奢ってやっただろ、食べるの止めろよ!」
咲間「?」「ごめんけど、歩生に結衣に関してなにか約束した覚えはない。防衛隊についても俺は柚香と同じ意見。」
歩生「説得してくれてたじゃん、昼。」
咲間「いや、歩生が言ってたこと柚香と話してただけ。特に何か頼んだりはしてない。」
裏切りやがって。俺が言ってたことあいつらにリークしたのかよ。
あの日以来、咲間とは話していない。結衣とも距離ができた気がする。あの後咲間は柚香とバレンタインデートに行って付き合ったらしい。唯一の話し相手と決別して、誰からも相手にされなくなったから詳しくはわからない。前の席の奴らが柚香が告白宣言してたって話をしてた。どうせ一軍のあいつらと俺とじゃ交じり合わない。思想が細胞レベルから違うんだ。
ああ、なんかイライラしてきた。あいつのこと考えるのはやめよッ!ウッ!!
あぶねーな、誰だよ。
To Be Continue...
デジタルガーデン @endolu_hiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。デジタルガーデンの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます