俺は陰キャをやめる!!




     Welcome to Revant Ragnarok.


 煌々と輝くタイトル画面、迫力のあるBGM、背景に映し出される広大な世界。もう始めから神ゲーの匂いがぷんぷんする。こりゃ人気にもなるわ、と始める前から俺は勝手に理解していた。まだ始まってないのに。


 タイトル画面を押すと最初にまず、この世界での自分自身となるアバターのキャラメイクをするように指示された。


「おぉ、これ全部キャラパーツか!?目だけで百種類以上はあるじゃねーか!」


 カーソルをいくら下にスクロールしても、まるで終わりが見えない。目。鼻、口、耳、頬、肌質、極め付けは骨格まで。その種類は俺の想像を遥かに超える量であった。


「顔だけじゃなく体型、髪型、装飾、性別まで変えられんのかよ!‥クソめんどくせぇ‥ん?オートメイク?」


 どうやら、要望した特徴を打ち込むだけでAIが自動で自分の姿を作ってくれるらしい。特にキャラメイクにはこだわりもない俺は、ゲーム外で時間をかけない為にオートメイクを使うことにした。


「特徴…か。あ、どうせだしリアルの俺とは正反対な、明るい感じのアバターにしてもらうか!そしたら目はこんな感じで…鼻は…」






「よし次は‥職業選択?ってうわ!これ全部職業!?」


 キャラメイクの特徴決めが終わり、オートメイクの結果を待っていると次に映し出されたのは、自身の職業を決める選択画面。

 そこには先ほどの見た目とは比べ物にならないほどの量の文字がズラーっと並んでいた。


「戦闘職に商業職、探検職に開拓職‥だぁ!数え切れるかこんなもん!!とりあえず戦闘職!」


 戦闘職を選択すると、さっきよりかはいくらか減った職業欄が映し出される。


 細かく分けるとキリがないので割愛するが、戦士や武闘家などといった見慣れた職業から、人形師パペットマン調教師まものつかい、スナイパーなんてものもある。

 これには少し俺の少年心が揺らいだが、選んだのは「暗殺者アサシン」の「ナイフ」使い。

 暗殺者は素早い動きと奇襲ができるスピードタイプの職業だ。しかしその分耐久性は皆無であり、中々PSが必要になる職業‥らしい。


 暗殺者が最初にもらえる武器はいかにも貧弱で壊れやすそうなナイフだった。だがまぁ、ゲーム開始時は自動的に最初の街へ飛ばされるようだし、そこで買い換えればいいか。

 長々と書かれていた説明文に軽く目を通し、職業選択を確定する。


「やっぱゲームはいかにノーダメージでクリアするか、だからな。敏捷特化のほうがおれには合ってる」


 すると、最後には『難易度設定画面』と『プレイヤー名設定画面』の二つが、同時に映し出された。


「えーっと何々?『難易度は敵の強さ、ドロップ排出率などに影響します。初心者の方はピースフルを選択することをお勧めします。なお、難易度は途中で変更することはできません』なるほど。」


 難易度は大きく分けて四つ。まずは『ピースフル』。初心者おすすめということで一番簡単なのだろう。可愛いフォントがそれを物語っている。


 次に『ノーマル』。ピースフルよりかは難しいが、普通に優しい部類に入ると思う。


 そして3つ目は『ハード』。文字の色を見るに中々過酷な設定であることは間違いない。なんか赤黒いもん。


 最後にデストロイ。‥うん。なんかもうすごい。色々と。この世の終わりみたいなフォントしてるよ



「まぁ俺はデストロイ一択だな」



 俺は一通り確認した後、先ほどまでとは打って変わって素早く確定画面を押す。‥おいこら。誰だ今ドMとか言ったの。


 弁解しておくが俺はいたって正常者常人性癖だ。1人のゲーマーとして、そこに難しい難易度があれば挑戦するのはもはや条件反射。何故山を登るんですか?という質問に「そこに山があったから」というのと同じ感じ。


「まぁ難易度はいいとして、プレイヤー名か。確か既にいるプレイヤーと同じ名前は出来ないんだよな。」


 あまりにもユーザー数が増えすぎた結果、運営がとった対策の一つである。まぁ要はキャラメイク同じにしてプレイヤー名も揃えられちゃ、プレイヤーからしたら誰が誰だかわからないから差別化してね、ってことだ。これに関しては懸命な判断だと思う。


「じゃあいつも通りショウMAっと‥お、行けた行けた。」


『真渕翔子』の頭文字をそれぞれとってショウMA。我ながらネーミングセンスに光るものを感じる。…ゲーム内くらい男らしい名前を味わいたいんだ。いちいち突っ込むなよ。


「よーしそれじゃあゲームスタート!リスポーン値は最初の街のどこからしいし、早速動作確認と洒落込も………あ、いやちょっと待てよ」


 俺はスタートボタンを押す直前、視界の端にあるメニュー画面を開き、レヴァラグとは関係のないスマホのメールアプリを起動させる。


「せっかくだし、クロにもレヴァラグデビューしたの言っとくか。あいつも確かレヴァラグやってるって言ってたし、タイミングが合えばどこかで会えるかもだしな!」


 『クロ』というのは、俺の数少なーいネッ友の1人だ。昔やっていた過疎ゲーでたまたま出会って以来、たびたび連絡を取り合っている。


 クロみたいな友達が一人で良いから現実にもいたらなぁ…。自分で自分の心を抉りつつ、レヴァラグデビューの旨を伝える簡単な文面のメール作成、そして送信した。よし、もはや思い残す事なし。


「よし!それじゃあ気を取り直していきますか!レッツ、レヴァナント・ラグナロク!最初はひとまず動作確認といくかー!」


 スタートボタンを押したと同時に、徐々に視界が暗くなっていく。いやはや、いくつになっても新しいゲームを始めるというのはどうしてこんなにワクワクするんだろうか。

 俺は楽しみな気持ちをそっと胸に留め、ゲームの仕様に従い目を閉じた。








 しかーし!この時、翔子はまだ知らなかった!難易度デストロイに設定した場合!初期リスポーン地は最初の街『スターティア』ではなく!離れた『初狩の森ビギナーフォレスト』のどこかになってしまうということを!



 次回!ショウMA、初めての遭難!デュ◯ルスタンバイ!!

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