第18話 体育祭の種目
学校に着き、ロングホームルームが始まった。このロングホームルームで体育祭に出る種目を決めるようだ。そして、司会進行は学級委員長が務めている。
「えー、体育祭の種目は、リレー・短距離走・二人三脚・障害物競走・借り物競走・綱引き・玉入れ・騎馬戦です」
「一人最低一種目は出る必要があります。出たい種目があれば手を挙げて立候補してくださいね」
「ではまずは、リレーから」
早速、数人が手を挙げた。そういえば、前のホームルームで種目の説明があり、なにを選ぶか決めておくように言っていた気がするが考えてなかったな。
とはいえ、おれは運動は得意なほうだから、まあ、なんでも、いいですけれど。と、思いつつどうするか考えていたら話が進んでいた。
「次は二人三脚です。これは、体育祭実行委員のとある女子生徒の要望で男女混合になったそうです」
ふむ、女子がそんな要望を出すとは意外だが、なにか理由でもあるのだろうか? そんなことを考えていたら、いつの間にか教室がざわついている気がする。主に男子からの、
(男女混合二人三脚キターーーーー)
(俺はこれにしよう、いや特に変な意味はないんだけど)
「これは、女子と肩を組もうして『は? キモイんだけど』などと罵ってもらえるチャンスでござるなあ」
などという心の声が聞こえてきた気がする。おい、ちょっと待て、最後のやつ口に出してるじゃねえか。
そんな男子の空気を感じ取ったのか、それとも最後のやつの台詞が聞こえたせいか、女子は誰も立候補しない。
男子のほうもそんな女子の空気を感じ取ったのか、それとも堂々と手を挙げるのは恥ずかしいのか、女子同様に誰も立候補しなかった。その状況に学級委員長が困ったように声を上げる。
「すいません、誰かいませんか。最低でも一クラス一ペアは必要なんですが……」
だが、残念ながら立候補するものは現れそうにない。と、思っていたら一人の女子が声を上げた。
「なんだ、誰もいないのか。仕方ない、ならアタシがやってやるよ」
そう言って手を挙げた女子を見て男子達がざわついた。
(おいおい、よりによって鬼咲かよ。確かあいつヤンキーで男子をぶっとばしたりしてるんだろ)
(あいつと組んだらやばいんじゃないか。下手したらぶん殴られそうだ)
「ふーむ、それがしは精神的な攻めは好物ですが、肉体的な攻めは趣味ではござらんなあ」
などという心の声と物理的な声が聞こえてきた気がする。おい、最後のやつは自重しろ。おまえはさっきからなにを言ってるんだ。いや、もしかして罵ってもらいたくてわざと声に出してるのか?
そして、そんな男子の声とは裏腹に女子からは、
「さっすが鬼咲さん」
「頼りになるー」
「素敵です、姐さん」
などという声が聞こえてきた。どうやら、鬼咲さんは女子からは慕われていて、さらに一部の女子からは姐さんと呼ばれているようだ。確かに、ほかの女子が嫌がるなか率先して手を挙げたのはかっこいいな。
「では、女子は鬼咲さんで。あとは、男子のほうは誰かいますか?」
そんな学級委員長の声を受けても男子は誰も手を挙げない。どうやら、鬼咲さんがペアになるので萎縮してしまっているようだ。
このままではらちが明かないと思い、おれは手を挙げる。そんなおれを見て、学級委員長はほっとしたような表情を見せた。なお、他の男子からは、
(おいおい、天方のやつ度胸あるな)
(このままだとくじ引きとかで決める可能性があったが、おかげで助かったぜ)
「もしや、天方氏はエムでござるか? タイプは違えど存外、それがしと仲良くできるかもしれぬなあ」
などと言った声が聞こえてきた気がする。おい、やめろ。おれはエムでもドエムでもないし、もちろんドM・ケツハットでもないぞ。
「では、男子は天方君で。それでは、次の種目は障害物競走です」
無事、二人三脚の出場者が決まり話が進む。まあ、鬼咲さんのヤンキーうんぬんの話は気になるし、確かに見た目はそんな感じだが、だからといって真偽不明のうわさや見た目で人を判断してはいけない。
だってほら、人は見た目が九割って言葉もあるしな。いかん、これだとほぼ見た目で判断することになってしまう。
そのあとは比較的スムーズに話が進み、無事にクラス全員の出場種目が決定した。結果として、おれは二人三脚と借り物競走に出ることになった。おれは特に希望種目もなかったし、まあ、なんでも、いいですけれど。
さて、琉奈のほうはといえば、よりにもよって騎馬戦に出ることになっていた。どうやら、ほかの種目を希望したが人数が多くジャンケンで決めることになり、それに負けて騎馬戦を選ばざるを得なかったようだ。
しかし、騎馬戦は危なそうで心配だな。琉奈が怪我することなく無事に体育祭を終えれるといいのだが。
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