第17話 体育祭の始まり
目先の問題であった中間テストが無事に終了した。いや、無事ではないな。中学のときと比べ明らかに成績が落ちているし。
特に、五教科の中じゃ最強と言われる家庭科さんが厄介だった。一応、言っておくと五教科とは国語・英語・社会・理科・家庭科である。数学? いえ、知らない子ですね。
それに、家庭科と言えば、とある家庭科部には伝説の掃除屋が所属していたりするので恐ろしい教科である。
まあ、そんな冗談はおいておき、なぜこうも成績が落ちたのか。確かに高校は自分と同じくらいの学力の人間が集まった場所なので、中学のときとは違うのはわかる。
だが、おれはちゃんと家で毎日、アニメを見たり漫画を読んだりツイッたんを見たりしてるのに。おい、全然勉強してないじゃねえか。
あ、そういえばツイッたんって少し前に名前が変わったんだよな。確か、遠い銀河の彼方から、数多の星々飛び越えて、青く輝く地球へと降り立った一筋の流れ星に関係する名前だったような。……そうだ、思い出したぞ。『エーーックス』だ。
*****
そんなこんなで中間テストの結果が出たあとの朝。
「テスト結果はどうだった、日希くん?」
「かなりまあまあ、いや、そこそこまあまあかな。琉奈のほうは全力でまあまあだったよな」
「なんかまあまあばっかりだね……。うん、わたしは上位のほうだったけど」
「さすがだなあ。やっぱすげえよ琉奈は」
「……ありがと」
琉奈は照れ笑いを浮かべながらそう答えた。
「おれも期末テストはもっと頑張らないとなあ。さて、どうしたものか……」
「あ、じゃあ良かったらわたしと勉強しようか。分からないところとか教えるよ」
「いいのか? それたぶん琉奈にはメリットないぞ?」
おれが琉奈から教わることはあっても、逆におれが琉奈に教えるパターンはありそうにない。
「……そんなことはないと思うけど」
琉奈は頬を少し赤くしてそう言う。
「そうか?」
「…………ほら、人に教えることで、自分の理解も深まったりするし」
「そういえば、そんなことを聞いた覚えがあるな。まあ、そういうことならそのうち頼む」
「うん、じゃあそのうちね」
「さて、期末テストの前にまずは体育祭だな」
「あ、そうだね。そっちは嫌だなあ……」
琉奈は見るからに憂鬱そうな顔をしていた。
「琉奈は運動は苦手だしな」
「うん、だからなるべく苦手でも大丈夫そうな種目にしようと思う」
「そのほうがいいだろうな」
「日希くんは運動は得意だよね。いいなあ」
「まあ、そんなにすごいわけでもないけどな。……ああ、そうだ。もしかすると、体育祭で関わる機会が増えるかもしれない。だから……」
「あ、うん。学校では天方くんって呼ぶね」
「ああ、おれは姫宮さんって呼ぶから」
「昔は大変だったよね。小学校の高学年くらいだっけ?」
「そのくらいだったかな。周りから変なうわさを立てられたからなあ」
あのころは学校でもよく一緒にいたから、おれと琉奈が付き合っているのかとかそんなうわさが立ったなあ。まだ、おれ達は子どもだったこともあり、そういううわさを立てられるはしんどかった。
その対策として、それからは学校ではお互いなるべく関わらないようにし、その甲斐あってそれ以降は妙なうわさもなくなって良かったと思う。
「そういえば、登下校は一緒のままでいいのか?」
「うん、なるべく人が少ない時間帯にしてるし大丈夫だと思う」
「そうか」
「……それに、本音を言えば学校でももっと一緒にいたいし」
「なんて?」
「……ううん、ただの独り言だから」
琉奈が最後に言った言葉は本人の言う通り独り言だったようで、声が小さくなんて言ったのか分からなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます