第03話 思いもよらない提案
琉奈と話す前に龍心との話し合いで決まった内容について確認しておこう。
まず、龍心の言う『完璧な作戦』、これがプランAだ。次に、おれが考えた『琉奈様は告らせたい作戦』、これがプランBだな。別に、戦争計画を止めるみたいな大層な話ではないのだが、恋愛は戦なのでやはりこれも重要な作戦と言える。
というわけで、これから姫宮琉奈の恋を成就させるための作戦、オペレーション〈
*****
放課後になり、おれと琉奈は昨日の恋愛相談を再開した。
「改めて、昨日は悪かったな、琉奈」
「ううん、全然。日希くんの体調が回復してよかったよ」
「で、昨日の相談の続きなんだが、要はその気になる人と……つ、付き合いたいってことでいいんだよな?」
「…………まあ、言わなくても話の流れでわかるよね。そうだよ」
「やっぱそうか」
「どうしたらいいかな?」
「一応、二つほど方法を考えてみたんだが――」
まずは、プランAを説明する。
「うーん、どうなんだろう? やっぱり、いきなり告白っていうのは難しい気がするけど」
「でも、告白さえできれば、まず大丈夫だと思うんだよな。だって、お前はモテるし実際すごい可愛いし」
「っ!」
本来は可愛いとか恥ずかしくて言えないが、失恋した今となっては気にすることでもないかと思い、おれは素直に本音を言った。
その後、琉奈のほうを見るとその顔がみるみる真っ赤に染まっていった。うーん、本人も自覚はあるだろうし照れることでもないと思うんだけどなあ。その反応を見て、おれの方も恥ずかしくなってきてしまった。
「えっと、その、ありがと……。嬉しいよ……」
まだ恥ずかしいのかだいぶ小さな声で返事をしてきた。顔のほうはというと照れつつも嬉しそうな笑顔だった。
「あ、でもこれは友達の話だからわたしがその、……か、可愛……とかは関係ないんだけど……」
「あ、すまん。そうだったな」
そうだった、そういう話になっているのを忘れていた。
「まあでも、大丈夫だろ。男子高校生なんて彼女が欲しいって思っている奴が大半だろうし」
「……ふーん、そうなんだ。……ち、ちなみに日希くんもそうなの?」
「おれか? おれも一応男子だからなあ。そうだよ」
「そっか、そうなんだ……」
そう返す琉奈の声はやや弾んでいるように思えた。
「とりあえず、一つ目に方法に関してはそんなとこだな。次に、二つ目だが――」
そうして、プランBの説明を終える。
「うん、こっちの方法のが良い気がするかな」
「そうか。まあ、最終的な判断は任せるから、今の話を友達に伝えといてくれ」
「うん、分かった。相談にのってくれてありがと、日希くん。このお礼はあとで必ずするから」
「いや、別にいいって。大したことしてないし」
「そんなことないよ、わたしは助かったし。だから、絶対するからね」
ここまで言われると、断るのも逆に悪いか。
「ああ、分かった。でも、別に急がなくていいからな」
こうして、琉奈との恋愛相談は無事に終わった。
*****
それから、数日後のいつもの帰り道。
「……あのさ、日希くんってその、……アニメとか好きだよね?」
琉奈がそのようなことをおずおずと切り出してきた。
「ん? そうだけどそれがどうかしたか?」
「……えっと、その……、実はわたしも最近アニメに興味が出てきてなにか見てみたいなあとか思ってて……」
「そうなのか。なにかきっかけでもあったのか?」
「き、きっかけ!? ……えーっと、きっかけは……、そ、そう、友達とそういう話になって」
おれの問いに対し、なぜか琉奈はあたふたしながらそう答えてきた。
「なるほど……。最近できた友達の趣味がアニメで見るのを勧められたとかそういう感じか?」
「え? あ、うん、そんな感じかな。そ、それで、なにかお勧めの作品とかないかなあって思って」
「お勧めかあ……。あれでも、そういうことならその友達に訊いたほうがいいんじゃないか? 同じ作品を見たほうが話も合うだろうし」
「あ……。そっか、そうだよね…………」
おれの言葉を聞いた琉奈はしゅんとしてしまった。特にがっがりさせることは言ってないと思うのだがなぜだろう。あれ? そういえば、友達とか趣味とか最近そんな話をどこかでしたような………………!! まさか、そういうことなのか!?
「……まあ、おれのお勧めでも構わないってことなら教えるけど。琉奈はそれでもいいか?」
「えっ!? あ、うん、もちろんいいよ」
そう言って、琉奈は顔をぱぁと輝かせた。ふむ、やはりそういうことか、完全に理解した。
つまり、琉奈は気になる相手がアニメ好きだという情報を得たが、そいつに見ている作品を訊くことができなかった。そこで、とりあえずアニメを見るところから始めようとして、おれにアドバイスを求めたってところだな。
しかし、琉奈はおとなしい子だと思っていたがそこまで奥手だったとはな。まあ、そういうことならもちろん協力してやろう。そもそも、琉奈のことを応援するって決めてるしな。
「じゃあ、どうするかな。琉奈って自分用のパソコンは持ってなかったよな?」
「うん、持ってないよ。もし、持っていたとしても使い方があんまり分からないかなあ。スマホやテレビじゃ駄目なの?」
「スマホだと画面が小さくて見づらいだろうし、テレビだと専用の契約とかしないと見れる作品がだいぶ限られるかな。いや、正直な話、おれはほぼパソコンで見てるからそっちはあまり詳しくないんだが……」
まあ、今はググール先生に訊けば大抵のことはわかる時代だ。後でそのあたりを調べ、まずは琉奈の部屋のテレビで色々な作品を見れるようにするところからかな。おれがそう考えていると、琉奈が口を開いた。
「あ、だったら、とりあえず日希くんの部屋のパソコンで見せてもらってもいいかな?」
「…………………………は?」
琉奈の思いもよらない提案に、おれはだいぶ間抜けな声を出してしまった気がする。
「あ、ごめん、いきなり部屋に行きたいとか迷惑だよね。ほら、昔はよく遊びに行ってたからついその感覚で考えちゃって……」
「いや、別に迷惑ではないんだが……、琉奈のほうは、その、……平気なのか?」
そう、問題は他にある。お互いもう高校生だし、女子が男子の部屋に来るというのはなんというかよろしくない気がする。というか、そのへんは女子のほうが気にしてるんじゃないの? いや、気を付けるといったほうが適切か?
「……平気? ……ごめん、なにがいけないかよく分からないんだけど……」
「……いや、気になることがないならまあいいんだけど……」
うーん、これはもしかしてあれかな。幼馴染みであるがゆえにおれ達の関係を兄妹みたいに捉えていて、おれを男として見てないとかか? 幼馴染とはラブコメになるわけないとか言うしなあ。いやでも、それはさすがにショックなんだけど。
もしくはあれか、琉奈はピュアっピュアでたまに一般常識に欠けているときがあるし、そもそもそういう知識に疎いのかも知れない。実際、初〇〇の意味を問われて「キッスのことでしょう」って答えちゃう、超がつく程の箱入り娘だって世の中にはいるしなあ。
そして、そんな箱入り娘かもしれない琉奈が先ほどの話の続きを口にした。
「それじゃあ、明日は日希くんの家に行ってもいいかな?」
「……ああ、大丈夫だ」
そんなわけで、明日は琉奈が家に来ることになった。
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