第4話 衝撃の事実!?
「失礼いたしました。ここは我らドラゴンにとって生誕の地。卵からかえる場所なのです」
しばらくして落ち着きを取り戻したレッドドラゴンが説明を始めてくれる。いや、気絶したグリーンドラゴンを放置したままだし、実はまだ冷静とは言い切れないのかもしれない。
ところで、こちらの扱いがやけに丁寧になっているようなのは気のせいだろうか?
「
妖精人というのはエルフにドワーフ、ピグミーの三種族のことで、それぞれハイエルフ、エルダードワーフ、ソースピグミーが原種に当たるのだとか。そこにヒューマンと
ドラゴンは人間種やその他の知性ある生命を下に見ている訳ではないけれど、そもそもの価値観が大きく異なっているため余計な軋轢が生じないよう交流自体を自制しているらしい。
そんな彼らだけれど、大陸でも最高峰の山脈に囲まれた盆地に集まって暮らしているのだとか。ボクの記憶にある『竜の里』のようなものかな。
中には好んで他種族と共に生きている者や、集落から飛び出して勝手気ままに暮らす跳ねっ返りや反抗的な若者もいるようだけれどね。まあ、どこにでもあるよくある話だ。
価値観が異なるといったが、この生誕の地もそんなドラゴン独自の変わった風習の一つだと言えるのかもしれない。簡単に言うと、産まれた卵を放置して自力でかえるのを待つ、ということになるかしらん。
「自らの力だけで卵の殻を打ち破ることで、世界にその存在を主張するのです」
あー、えっと、とにかくそういうことみたい。
地熱で温かな場所だったり、卵の下に毛皮を敷くのはせめてもの恩情ということのようだ。もしくは温情。
「つまりボクもドラゴンの集落の誰かが産んだ卵からかえった、ということ?」
「その通りです。そして置かれていた卵はただ一つ。我らドラゴンの
待って!いきなり重大な情報の供給が過剰になったんだけど!?
というかツッコミどころが多過ぎて追いつかないよ!?
「ちなみに、ハハムート様のご母堂は先代の長である『魔導龍ババムート』様です」
だから待って!?お腹がはちきれそうになっているところに
えーと、生みの親であるパパンやママンたちの名前はひとまず置いておくとして。どうやらボクは集落で暮らすドラゴン一族の中でも権威ある存在ということらしい。
と、ここで職業の『覚醒龍姫』のことを思い出す。なるほど。長の娘ならお姫様と言っても過言ではないわね。ドラゴンのお姫様だから『龍姫』だったのか。
残るは『覚醒』だけど、これはエッ君だった頃の、お母さんたちとの記憶があることと関係しているのかもしれない。
「なんと御子様、エルネ様は前世の記憶をお持ちなのですね!?……恐らくはご両親の力の影響ではないかと思われます。
排他的なドラゴンの集落だけれど好奇心が旺盛な個体も少なからずいるそうで、主にそういった連中がドラゴニュートへと進化しているのだとか。彼らは他種族との交流の窓口になっている他、人間種の街や村へとこっそりと入り込んでは最新の世情を集めてくれているそうだ。
とはいえ、やはり卵からかえったばかりの最初期の時点で、進化した姿になっているのはとても珍しいことらしい。
「これ以上は集落に戻りパパムート様方に相談するしかないかと」
「まあ、それしかないよね」
エッ君時代の記憶があるから、両親に会うのはちょっぴり不安なものがあるのだけれど、だからといって無視はできないだろうし。
「それにしてもエルネ様が御子様だと気が付かなかったばかりか、危害を加えようとしただなんて……!この駄龍、どうしてくれようかしら?」
お互いの情報を擦り合わせて状況の確認が終わったところで、レッドドラゴンが怒りをあらわにする。お、おおう!彼女の背後にゴゴゴゴゴ……!と怒りの波動が見えるようだよ!?
なお、その強烈な感情の向かう先は未だに伸びたままのグリーンドラゴンです。んう?冷や汗みたいなのをダラダラ流してプルプル震えているようだけど、まだ意識は戻っていないよね?
「一から鍛え直して自身の分というものを再認識させるは当然です。が、それだけでは甘いわね。最近はドラゴン至上主義なる胡散臭いものに傾倒していたようですし、ここは外で暮らす方々の元で身のほどというものを思い知るべき……」
なにやら剣呑な単語も飛び出しているけれど、知識や見分を広げるのは良いことのはず!
あと、グリーンドラゴンの震えがガクガクと大きくなっていたけれど、きっと単なる見間違いだろう。うん、きっとそう!
「それではエルネ様、集落へご案内しますので私の背に乗ってください」
「飛ぶくらいならできるよ?」
エッ君だった頃は素早く飛び回ることは難しかったけれど、今ならそれも楽々にできてしまえそうなのよね。
「確かにエルネ様であればそれも可能でしょう。ですが、生誕の地で卵からかえった子どもたちは成龍の背に乗って集落へと戻るのが慣例となっています。そして同時に、その役目を果たすことはとても栄誉なことなのです。エルネ様、どうか私にその栄誉をお与えいただけないでしょうか」
うわー、この人意外に策士だー。そんな風に言われて、だが断れる人なんてそうはいないと思う。特にボクなんて今の今までこの世界のことを色々と教えてもらっていたのだ。ノーと言えるはずがない。
「はあ、了解。それじゃあ、集落までよろしくお願いします」
嬉しそうに体を伏せるレッドドラゴンの背に、えっちらおっちらと登る。やれやれ、
体力的には問題ないのだけれど、こう、ね?あまり足を大きく広げる毛皮の裾が捲れちゃいそうでして……。女の子としてはそういうはしたない格好はどうなのかと思う訳ですよ。
うーむ……。まさかここまで思考が女の子寄りになるとは、ボク自身もビックリだよ。これ、エッ君だけじゃなくてお母さんやミル姉、ネイ姉の感覚も受け継いでいるのではないかしらん?
ふわりふわりと慎重に上昇を開始するレッドドラゴンの背中で、ボクはぼんやりとそんなことを考えていたのだった。
余談だけど、放置されたままのグリーンドラゴンがちょっぴり哀れでした、まる。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
〇人間種のおおよその比率。
ヒューマン……40% セリアンスロープ……25%
ピグミー……15% ドワーフ……15% エルフ……5%
作者の脳内イメージなので後々変更される可能性ありです。
ハイエルフたち妖精人の原種は、おとぎ話扱いされているような存在。
ハーフは存在せず異種族間で結婚した場合、子どもは両親のどちらかの種族になる。稀に先祖返りが発生することはある。
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