第2話 最高で最低な1日
恒星が地平線を越え、辺りはより一層暗くなっていった
土地勘なんてものは持ち合わせておらず、自分の家の形ですらこの暗さでは分からず、
まさに八方塞がりだ
もうただ呆然と空を見ることしかやることがなくなり空を仰ぐとーー
おぉ…!
雲ひとつない満天の星空が一面に広がっていた
見惚れるほど綺麗だ。というか見惚れて長い時間空をじぃーっと見てしまったよ
仕事もないし今日は本当に最高の1日だな!
しばらくして心も体もウッキウキになりながら自宅を探していると
ズシン!
耳が潰れるほどの何かが動く音に大地が震える
音の方向を振り向くとキラリと光る大きな球が2つほど現れた
…うんきっと幻覚だろう。異世界に飛んで疲れてるんだろう。そうだそうだそうに決まってる
目を擦りまぶたを再度開けるも2つの球、否2つの眼球と目が合う
ギロリと俺を睨み付けるその視線、時々月光で見える強靭な歯…
魔物ですね!
全長おおよそ7メートルの二足歩行でムキムキなその魔物は俺をロックオンして離さない
口をムの字に変え
体を回れ右して
音を立てずに
その場から全力で逃げた
ワンチャン音に反応するタイプの魔物なんじゃね?というふざけた考えは妄想に終わった
ドシンドシンドシンッ!!
凄まじいスピードで俺めがけて走ってくる
ですよね〜
「いや〜〜〜〜!!!!」
熊みたいに目を合わせて逃げればよかったかな!?
俺は涙目に叫びながら逃走を続ける
しかし魔物の方がずっと速い
ぐんぐん近づいてくる
角を曲がり、いよいよ死が目前に迫ったとき
しめた!
茂みを見つけた俺はバッ!と茂みに身を投じ全身傷だらけになりながらもなんとか身を隠すことに成功した
思い出したぜ。ティラノサウルスは動くものしか視覚出来ない
そしてこいつも怖いしデカいからほぼティラノ。つまり習性は同じというわけだ
そして茂みの陰からそっと外を覗くと
グルルルルロロロロロ…フシュー…フシュー…
再び奴と目が合った
ですよね〜
もう逃げる術はない
やつはゆっくりと近づいてくる
異世界行っても死ぬのかよっ…!!
くそっ!!なんて日だっ!!
もう 奴との距離は 無くなった
あ…
死んだ…
あまりの怖さを、その現実を受け入れることなんかできずぎゅっと目を瞑った
…
…あれ?
目の前にいる魔物は動きをぴたりと止めたかと思うと床に向かって落下した。
よく見るとあったはずの体が消え、ただの肉塊となった頭がゴロッと床に転げた。
…は?
目に前の状況に理解が追いつかない。
助かった…のか?
とりあえず周囲を確認するために茂みから顔を出すとーー
スライムがいた
俺の考えているスライムは水色なんだが、目の前には紫色のスライムがいる
「—————————」
なにか俺に向かって話しかけているようだ。何を言ってるのかよく分からない。
「は?人間?なんでいんの?」
「え?なにいって…」
「こりゃ相当なバカだな。ま、いいや。人間ってどんな味だっけ」
本能が全力で囁いている
俺は殺される。こいつに一口で食い殺される…
いやだっ!
そんなのいやだっ!死にたくない!
誰か!誰かいないのか!?
誰でもいい!誰か!
「助…け…て…」
「ふふ、みっともないね」
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