第7話

タイトル:指先の檻


ジャンル:ソフトSM × 官能 × 恋愛心理ドラマ

テーマ:触れずに支配し、触れることで壊れる──触れない愛撫が解放へと至る物語


第7章:触れない支配


部屋に静かに雨音が響く。

静香はソファに深く腰掛け、ワイングラスを指先で揺らしていた。

その目の前で椎名は静かに立ち、指先をグラスの縁に滑らせる。


「触れないのね。」


静香がぽつりとつぶやく。

椎名は目を細めて彼女を見つめる。


「触れませんよ。」

「ずっと?」

「そうですね。触れなくても、感じさせることはできますから。」


静香は微かに笑う。

触れないことで生まれる“緊張”が、触れる以上の熱を持つことを知っていた。


「……意地悪。」


椎名は静香の頬に触れようとし、ほんの数ミリ手前で止める。

その指先が触れたかどうかもわからない空気が、静香の肌を撫でた。


「感じましたか?」


静香は目を伏せたまま、静かに息を吐く。


「感じたわ。」

「じゃあ、まだ触れる必要はないですね。」


静香はワイングラスを置き、椎名の視線を受け止めるようにまっすぐ見上げた。


「焦らされるのも悪くないけど、たまには触れてもいいんじゃない?」


椎名はゆっくり首を振る。


「触れないからこそ、求めたくなるんです。」


静香の手がソファの縁にそっと触れる。

その指先は、まるで触れられることを待っているかのように、わずかに震えていた。




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