失血

@wasabineko825

第1話 朝

 目が覚めた。何もない。血の流れるのを感じる。

 

血とは何かを考えたことはあるだろうか。

身体を絶え間なく流れるこの液体は私の体に栄養や酸素を送っていると教師は私に教えた。血というのは生きる上で必須だと医者も言った。

 

私の朝は気だるいものだ。無理に身体を動かして、なんとか仕事に間に合うように準備をする。仕事は嫌いだ。私は金を稼がないと生きていけない社会に生まれたことを恨んだ。


世界とはなんだろう。それは物の見方だとフランスのえらい哲学者はいう。またフランスの高校の哲学教師は世界には今よりも先に存在があるという。「考えるゆえに我あり」という有名なフレーズは世間では淘汰されている。

では、意味を求めず、考えもせず生きているただ存在するだけの我々はなんだろうか。


玄関の扉を開けると、向かいの家の車のガラスは白くなっていることに気づく。冬の訪れである。

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