第4話 二人の思い、生まれる絆
雷鳴が轟き、激しい雨が降りしきる中、牛殿地位人(槍間来都の姿)と槍間来都(牛殿地位人の姿)は、落雷地点の公園で、びしょ濡れになりながら空を見上げていた。
あの日と同じ状況を作り出し、再び雷に打たれることで、元の体に戻れるかもしれない。
淡い期待と大きな不安が入り混じった複雑な感情が、二人の胸を締め付けていた。
しかし、雷は二人を避けるように、遠くの方で小さく光り、鳴り響くばかりだった。時間だけが刻一刻と過ぎていくーー。
「ダメ、みたいだな…」
地位人(来都の姿)は、肩を落とした。来都(地位人の姿)もまた、失望の色を隠せていない。
「…もう…元には戻れないのかもな…」
来都(地位人の姿)が呟くと、地位人(来都の姿)は、彼の肩を力強く叩いた。
「諦めるな!きっと…きっと、何か方法があるはずだ!アニメみたいに!」
地位人の力強い言葉に、来都(地位人の姿)は、少しだけ勇気づけられた。
それから数日、二人は元の体に戻る方法を探し続けた。
図書館で古書を読み漁り、インターネットで情報を集め、あらゆる可能性を模索した。しかし、決定的な手がかりは見つからないままだった。
そんな中、二人は互いの体で生活する中で、それぞれの視点から世界を見ることで、多くのことを学び、成長していった。
地位人(来都の姿)は、来都の体で過ごすことで、これまで知らなかった世界を知ることになった。
来都は、学校だけでなく、様々な分野で才能を発揮していた。生徒会活動、ボランティア活動、スポーツクラブ…どれもこれも、地位人にとっては未知の世界だった。
地位人は、来都の体を通して、様々な人々と出会い交流することで、視野を広げーー人間的に大きく成長していった。
特に、生徒会活動を通して出会った、副会長の
百合は、優しく聡明で、誰からも慕われる存在だった。誰にでも分け隔てなく平等で、イケメンの来都に黄色い声援を上げる事もなかった。
地位人(来都の姿)は、百合の誠実な人柄に触れ、感銘を受けた。
百合は地位人が生まれて初めてまともに話ができる同年代の女子でもあった。
一方、来都(地位人の姿)は、地位人の体で過ごすことで、これまで見下していた世界を知ることになった。
地位人の生活は、来都が想像していたよりもずっと過酷だった。両親からのプレッシャー、周囲からの冷たい視線、孤独な日々…来都は、地位人の苦悩を身をもって体験することで、自分の傲慢さを深く反省した。
そして、地位人の趣味であるアニメやゲームの世界に触れることで、新たな喜びを発見しつつあった。
最初は抵抗があったが、地位人の部屋を埋め尽くすほどの漫画やゲーム、アニメのDVD…次第にその魅力に引き込まれていった。
特に、『魔法少女マジカル♡りりかる』は、来都の心を深く揺さぶった。
魔法少女たちのひたむきな姿、仲間との友情ーーそして、困難に立ち向かう勇気に、深く感動したのだ。
「…俺…、地位人の趣味をバカにしてた…。こんなにもーー素晴らしい世界だったとは」
来都(地位人の姿)は、地位人の部屋で一人、呟いた。
ある日、地位人(来都の姿)は、百合に相談を持ちかけた。
「変なこと言うけど…実は…俺、来都じゃないんだ。俺、本当はチー牛…牛殿地位人なんだ!来都と俺、雷に撃たれてから体が入れ替わってるんだ…」
地位人は、勇気を振り絞って、百合にすべてを打ち明けた。
百合ははじめは驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「…そうだったのね…。最近の槍間くん、今は牛殿くんかしら?なんだか違ってたもの。辛い思いをしたでしょう…」
百合は、地位人の話を真剣に聞き、優しく慰めてくれた。
そして、一緒に解決策を考えてくれた。
「…もしかしたら…その黒い石に何かヒントがあるのかもしれないわ…」
百合の言葉で、地位人は、再びあの黒い石のことを思い出した。
翌日、地位人(来都の姿)と来都(地位人の姿)は、再び黒い石のあるの公園を訪れた。
そして、二人は石を手に取り、互いの過去、互いの苦悩を語り合った。
「…俺は…両親の期待に応えられなくて…!ずっと苦しかった…」
地位人(来都の姿)が言うと、来都(地位人の姿)は、優しく彼の肩を抱き寄せた。
「…俺もだ…。本当の自分を隠して生きてきた…辛かったよな…」
二人は、互いの苦しみを分かち合い、涙を流した。
ーーそして、初めて、二人に本当の友情が芽生えた。
その時、再び雷鳴が轟いた。二人は、顔を見合わせた。
「…今度こそ…!」
地位人(来都の姿)が呟いた。
「元に戻れるかも…!」
来都(地位人の姿)が続けた。
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