第3話 入れ替わりの秘密!?繋がるチー牛とイケメンの過去
翌日は生憎のどんよりとした曇り空。
時折、遠くでゴロゴロと鈍い雷鳴が轟く。
まるで、あの雷に撃たれた時と同じような天候だった。牛殿地位人(槍間来都の姿)と槍間来都(牛殿地位人の姿)は、沈黙のまま、並んでもう一本の雷が落ちた場所へと向かっていた。
そこは、街外れの小さな公園だった。
「…ここか…」
地位人(来都の姿)が呟いた。来都(地位人の姿)は、何も言わず、じっと地面を見つめていた。
二人は、公園内をくまなく探し始めた。何か手がかりがないか、少しでもあの日に繋がるものがないか。
植木の根元、ベンチの下、植え込みの中…あらゆる場所を調べたが、何も見つからない。
「やっぱり無駄だったか…」
地位人(来都の姿)が諦めかけたその時、来都(地位人の姿)が何かを発見した。
「これは…!」
来都(地位人の姿)が指差した先には、小さな石が落ちていた。
黒曜石のように黒く、表面は滑らかで、パチパチと不思議な光を放っている。
二人は、同時に石に手を伸ばした。指先が触れた瞬間、二人の脳裏に、強烈な閃光が走った。
そして、二人の過去の記憶が、走馬灯のように流れ始めた。
地位人は、両親がデザイナーベビー計画に大きな期待を寄せていたことを思い出した。
両親は、地位人に最高の教育を与え、完璧な人間に育てようとした。
しかし、地位人は、何をやっても上手くいかない。勉強もスポーツも、何をしても平均以下。両親の期待に応えることができず、常にプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。
「…地位人、お前はもっと頑張らなければいけない。生まれ持ったものが悪いのだから」
「どうして、こんなに可愛くないの?…ちゃんとデザインしたのに」
両親の言葉は、常に地位人の心を傷つけていた。
地位人は、自分は欠陥品だと感じ、自己嫌悪に陥っていた。
そして、唯一の心の拠り所となったのが、アニメやゲームだった。二次元の世界に没頭することで、現実の辛さを忘れようとしたのだ。
しかし、両親は、地位人のオタク趣味を厳しく非難した。
「…そんなくだらないものに時間を費やすな!もっと勉強しろ!」
「地位人、ちゃんと現実を見なさい」
地位人は、両親に理解してもらえない悲しみと、自分の存在意義を見失う苦しさに苛まれ、孤独な日々を送っていた。
一方、来都は、裕福な家庭で何不自由なく育ったが、常に完璧を求められるプレッシャーに苦しんでいた。
両親は、来都を将来のリーダーとして育てようとしていた。勉強、スポーツ、芸術、あらゆる分野でトップレベルの成績を収めることを要求された。
「来都、お前は将来、世界を背負って立つ人間になるのだ」
「あなたの人生に、失敗は許されないわ」
両親の言葉は、常に来都の心に重くのしかかっていた。
来都は、自分の本当の気持ちを押し殺し、両親の期待に応えようと努力した。しかし、それは同時に、本当の自分を失っていくことでもあった。
来都は、本当はアニメやゲームが大好きだった。
しかし、両親に知られることは怖くてできなかった。
地位人のような、自由奔放にオタク趣味を楽しんでいる姿を見て、羨ましく思うこともあった。しかし、同時に、地位人のような人間は、自分とは住む世界が違う、劣った存在だと見下してもいた。
二人の記憶が交錯し、互いの境遇、互いの苦悩を知った時、二人は初めて、お互いを理解することができた。
「…俺っ!来都のことを…誤解してた…かも」
地位人(来都の姿)は、涙を流しながら呟いた。
「…俺もだ…。地位人のことを、見下していた…。許してくれ…」
来都(地位人の姿)もまた、涙を流していた。
二人は、石を握りしめ、静かに涙を流し続けた。そして、二人は確信した。
この石こそが、自分たちの魂を入れ替えた原因だと。
その時、再び雷鳴が轟いた。二人は、顔を見合わせた。
「…もしかして…」
地位人(来都の姿)が呟いた。
「もう一度雷に打たれたら、元に戻れるかもしれない!」
来都(地位人の姿)が続けた。
二人は、再びあの雷に打たれることを決意した。元の体に戻るため、そして、新たな自分になるために。
空は、さらに暗くなり、激しい雨が降り始めた。二人は、雨に打たれながら、じっと空を見上げていた。
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