第6話

「さて。新しい船も手に入ったし仕事を探すか」

トキノリはそう言って端末で登録している運送ギルドにアクセスする。

「割りのいい仕事はと・・・」

搭載量が増えたことにより今までは受けられなかった依頼も候補に入ってくる。

「よし。これに決めた」

トキノリが受注したのは貴金属の運搬の仕事だった。

宇宙なので重量は問題ないがこの量が問題だ。

前の輸送艦では選べなかった依頼だ。

このクラスの依頼を受けるとなると中型の輸送艦が2隻ほど必要になる。

だが、この万能戦艦雪風ならば単艦で引き受けることが可能なのだ。

さらに言えば今は持っていないが艦載機用の区画に荷物を載せればもっと量が多くても問題がなかった。

艦載機は最大で10機の運用が可能だ。

しかし、艦載機を買うことが出来ても肝心のパイロットがいない。

ならば今は考えても仕方ない。

しばらく待っていると運送ギルドの職員が荷物を持ってやってきた。

「おい。ハラヤマ。この船どうしたんだ?」

「カタギリのおっさんか。どうだ?凄いだろ?」

「で、どうしたんだ?」

「実は宇宙くじが当たってな。その金で買った」

「買ったって・・・。どうみても安くないだろ?」

「何とそのお値段80京だ!」

「80京?馬鹿か。お前・・・。それだけの金があれば一生遊んで暮らせるじゃねぇか」

「そうかもしれないけどさ。俺は宇宙船乗りだぜ?仕事してなんぼだろ」

「まぁ・・・。お前の金だ。自由に使えばいいさ」

「荷物の積み込みの方は頼むぜ」

「あいよ」

カタギリのおっさんは慣れた手つきで積み荷を船の中に運んでいく。

「積み込みは終わったぞ」

「確かにOKだな。さてと新しい船での初仕事だ。何事もなく終わってくれるといいんだが・・・」

「おいおい。そういうことは口に出すと本当になるんだぞ」

「知ってるけどな。まぁ、この船なら何がきたって大丈夫か」

「無事に帰って来いよ」

「おう」

トキノリはブリッジに入り船のパラメーターを確認する。

どこも問題ない。

前の船ではここでエラーのオンパレードだったがそれもない。

それを考えると少々物足りなさも感じる。

「よし。行くか」

管制に連絡を取り出航準備を行う。

「こちら雪風。管制聞こえるか?」

「こちらアンタレス軌道ステーション管制。感度は良好です」

「出航したいんだが手続きを頼みたい」

「了解。出航許可は10分後になるが問題ないか?」

「了解した。10分後だな」

この短時間で出向の許可が出るとは驚きだ。

前の船の時は数時間単位で待たされたものだが・・・。

これはトキノリは知らないことだがドックの規模による優先処理の結果だった。

大型の船の方が優遇されており小型の船はその待ち時間が長くなるのだ。

10分後、トキノリを乗せた万能戦艦雪風は無事にアンタレス軌道ステーションを出航した。

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