第9話

子供が生まれてからの私の人生は、生まれる前と比較すると断然良くなった気がする。


目が見えないかもしれないと知らされた時には目の前が真っ暗になったけれど、

私の人生上手くいくわけないしね、とも思ったけど、

やることは倍増、仕事も倍頑張らなくてはいけないし支出も倍増したが、

働く目的が出来た。

何のために働くのかの意味が出来た。


生きる理由が出来た。

アメリカに居る理由も出来た。 


結婚する理由も出来た。


結婚した理由は、結婚していないと、両親が籍を一緒に入れていないと子供が生まれても日本国籍が与えられないから。


仕方なく籍を入れる結婚をした。



旦那の仕事がアメリカでだったので

日本に帰ったら仕事ないよ、

あっても安いよ、と言われ。




世界も広がった。何十倍にもなった。


子供が居なければ絶対に知り得ることの無かった環境、社会があることを知れた。

アメリカの託児所から幼稚園、公立の学校。


託児所と幼稚園は私立だったので公立の学校に入らない限りは貧富の格差やリアルアメリカ人の各家庭の事情など一切知り得なかっただろう。


アメリカ人から受け入れられるようになった。



私自身のことを考えることが出来なくなった。


子育てに精一杯。


働くことと子育ての両立。

送迎との両立。


収入と家庭のやりくり。



子供の父親は朝から夜中まで仕事でいなかったので、子供が生まれてから10年はほぼ片親状態。

相手は土日も仕事だったのでどこにも行けず。



それでも収入は足りないので私も一生懸命正社員職を探し、子供の健康保険もサポート出来る環境を整えるのに必死。



日本で正社員で働いていたけれどもアメリカに来たらもう一度いちからなんだ。


経験など最初は殆ど使わないし関係ない。

日本のやり方は通用しない。

高校卒業後にアメリカに来て大学に入って出た新卒の皆さんが先輩だったり、で。


ゼロからやり直しました。



子供が居なかったらそんなこともしないと思うし、恐らく日本の実家に帰ることにしていただろう。

スーパーなどのレジのパート職でも良いかとも考えていた。


アメリカにいる理由も無い。


だけれど子供が出来た。


生まれた。


目は不自由な面があるけれど、 

頭はおかしくない。


自力で生活するだけの能力は得られるだろう。


私と違い周りから認められることが多い。

人付き合いも上手い。


一方で一人でいるのも全く平気。


勉強もそつなくこなす。


子供には、私はもう一度自分に生まれ変わりたいとは絶対に思わないけれど、

貴方のお母さんになれることが分かっているなら私でいい、

と伝えています。


何度も。


それぐらい私の人生は変わった。

守られるようになった。

個を維持できるようになってきた。

入られないように、使われないように、守れるようになってきた。


子供がいることで、仕事のし過ぎで過労で倒れることもブレーキをかけて防げるようになった。


子供がいることで、私しかケアする人がいないことで残業も無駄にしないようになった。


時間を一番効率よく使うようになった。



大変なことの方が百万倍あるけれど、

一人だったらラクなことは沢山あるけれど


変わった。

世界が変わった。

人生が変わった。


一つの自信が持てた。子供がいるという自信。


自己評価が周りの誰よりも低かったので

(今も低いけれど)

存在してはいけないのではという状態だったので

自分は邪魔な存在だとしか思っていなかったので

少しの自信は生きていく、存在する上で必須。


そのレベルの自信なのだから高慢、傲慢だと思わないで頂ければ嬉しい。

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