第4話 We will(4)
「ピアノ???」
斯波はいきなりの竜生の『おねがい』に戸惑った。
「ね、いいでしょ??」
竜生は斯波の返事も聞かずにいきなり、ピアノの蓋をあけて弾き始めてしまった。
モーツアルトのピアノソナタ11番。
第三楽章があの『トルコ行進曲』になっている
斯波は否応なくそれを聴かされることになった。
彼がいきなりなぜそんなことを言いだしたのか、とか
聴きたいことはあったが
職業柄、聴いてくれと言われると思わず真剣に聴いてしまう。
竜生はとうとう第三楽章のトルコ行進曲まで弾ききってしまった。
音が途切れてハッとした。
竜生はものすごい真剣な顔で
「・・どう、おもう?」
と聞いてきた。
「えっ、」
いきなり感想を求められて一瞬言葉が出なかった。
というか。
竜生のピアノを聴くのは確か高宮と夏希の結婚パーティーで余興で弾いたのを聞いたのが最後だから
1年以上前になる。
その頃と比べたら
まるで別人か?と思うくらい進歩していた。
目をつぶって聞いていたら
9歳の子供が弾いてるとはちょっと思えないレベルだった。
竜生は斯波の答えをじっと
何とも言えない表情で待っていた。
それにふっと気づいて
「・・うん。 うまい、と思う、」
どう答えていいか迷ったが、普通に言った。
「うまい?? ほんと?」
竜生は斯波に縋るように食いついた。
「うん・・。 まあ、9歳にしては、うまい、かな。」
正直、きちんとしたピアノの先生についてレッスンを受けるようになってからの竜生のピアノを知らなかったので
やはり教える専門家につくと、こうも変わるんだな
と、素直に思った。
なにより
そのピアノを弾く姿が
真尋にそっくりで
実はそこばかりを見てしまった。
鍵盤に指を落とすときの格好
乗ってくると頭が前後に動く仕草
足の位置
そういう細かいところまでそっくりだった
これは別に彼から教えられたわけではなく
自然とそうなった、
みたいな感じで。
斯波はあまり子供のピアノを聴いたことがなかったので
何ともいえないが
ジュニアクラスの子たちにも引けをとらないだろうと思った。
3歳からピアノを始めた自分の9歳のころを考えても
かなりのレベルだということは感じた。
「そっか・・」
竜生は斯波のリアクションを聞いて小さな声でそう言った。
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