第3話 We will(3)
「はい、これ。 竜生にはかわいいシャツあったから買ってきたよ、 たぶんサイズだいじょぶだと思うけど、」
その晩、南が仕事を終えて絵梨沙たちのところにやってきた。
竜生と真鈴に服を買ってきてくれた。
「いつもすみません、」
「ああ、いいって。 甥っ子、姪っ子に服買ってあげるのが楽しみなんやから。 柊はもちょっと大きくなってからね。 今は竜生たちのお古もいっぱいあるだろうから、」
竜生は南から袋を手渡された。
「わー! ひらひらのわんぴーす~~~ みーちゃん、ありがと!」
真鈴は無邪気にそれを広げて喜んだ。
しかし竜生はそれを手にしたまま黙っていたので
「竜生、」
絵梨沙が少し怒ったように促すと
「・・・・」
また不機嫌そうに無言でそれを手にすっと部屋に戻ってしまった。
「竜生! ちゃんとお礼をして!」
絵梨沙がその背中に声をかけたが、ドアがバタンとしまってしまった。
「も~~~~。 ほんと、すみません・・」
南に申し訳ないように頭を下げた。
「ああ、いいって。」
「このところ。 ずうっとあんな調子で。 何か言うとすぐ反抗的になって反発して来て、」
絵梨沙は困ったように言った。
「ま、反抗期ちゃう? 子供も成長するといろいろあるもんね、」
南は笑い飛ばした。
「なんだか私も柊に構いっきりだし、真尋はあんまりこっちに帰ってこないし、竜生や真鈴のことあまり気にかけてあげてないかなって、」
「でも。 その分、お義母さんやあたしたちが一緒に面倒見てるし。 みんなで見られるのも幸せなことやん。」
南は柊をあやしながら言った。
「・・なにか。 悩んでるのかな、」
絵梨沙はポツリと言った。
「んじゃあ、来週は雑誌の撮影とインタビューだから。 真尋の来週の日本でのスケジュールの詳しいのは置いてく、」
「はい、わざわざありがとうございました、」
斯波が仕事帰りのついでに真尋宅に寄って絵梨沙に仕事のことを伝えに来た。
そのまま帰ろうとすると真尋宅の玄関を出たところで、いきなり
「・・ねえ、」
声がして振り向いた。
竜生が思いつめたような顔で立っていた。
「び、びっくりした。 おまえ、またでっかくなったな・・。」
斯波はいきなり声を掛けられて本気で焦っていた。
「ねえ、しーちゃんにおねがいがあるんだけど・・」
そんなことには構わず竜生はボソッと口を開いた。
「おねがい????」
「勝手に入っていいのか?」
「いいよ。 別に悪いことするわけじゃないもん、」
竜生は手慣れた様子で地下のピアノ室の鍵を開けた。
電気をつけてピアノのカバーを外す。
「しーちゃん、おれのピアノ、きいてくんない?」
竜生は斯波にいきなりそう言い出した。
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