第14話 ケチな実
肩をゆすられて起きる。なかなか目が開かない。
パッと目が開かない日は、なんだかうまくいかないことが多い。
朝から気分が乗らない。
やっと目が開けばデイリーミッションが目に飛び込んでくる。
NEW デイリーミッション
・声に出して挨拶を10人とする 10ポイント
・50枚皿洗いをする 10ポイント
・牛乳をコップ一杯飲む 8ポイント
・間違えずに計算を10回する 8ポイント
・反復横とび30回 7ポイント
・6キロ歩く 7ポイント
・5人以上に頭を撫でてもらう 5ポイント
・人を笑わせる 3ポイント
あ、今日は新しいミッションがある。
人を笑わせる、だって。3ポイント1回につきかな、ひとりにつきかな。それとも1日のうちで一回そうできたら3ポイント入るってことなのかな?
黒板に文字を書いての対話になるので、笑わせるのは難しそう。
ああいうのってタイミングが大事だからさ。
デイリーミッションは新しいのが増える日もあるし、そのままの日もある。
そして今までやってもやらなくても、ミッションとして残っている。
お店を手伝うのに街へといけば、50枚の皿洗いと計算と6キロ歩くと頭を撫でてもらうで30ポイントをゲットすることができた。
ステータスの実は食べられることがわかったので、全部一通り買ってみた。
・生命の実 10p
・魔力の実 10p
・パワーの実 3p
・ガードの実 3p
・素早さの実 3p
・知識の実 5p
・熟しの実 5p
・回避の実 30p
一揃え買っても69ポイントだったからね。最初の特典として3万ポイントも貰えたのがラッキーだった。
ひとつずつ食べてはステータスを見てみた。どれも1しか増えない、ケチくさい。
でも言わば、努力とかじゃなくて、実を食べるお手軽なところでステータスをあげているのだから、1でも上がるのはすごいことなのかな?
回避は上がらなかった。 30ポイント捨ててしまったようなものだ。
幸運は最初から対応してると思える実がなかった。
そこで考える。今のステータスは、それだけあれば生活に問題なかった。十分暮らしてくれた。
何をあげていくのが、これからの利点となるのか。
平均的にあげていったら、あんまり意味ないと思うんだよね。
元々飛び抜けてる数字はなかった。きっとゆるゆるとどれも同じぐらい上がっていくんじゃないかな、普通に暮らしていたら。
だってこういうのって経験値で上がっていくって言ってたもん、クラスメイトが。
年齢や経験値でそれなりには上がっていく。だけど、なかなか上がりにくそうなもの、それを補っていくのがいいと思う。補うも重ねて突きでれば、それがわたしの個性となる。
それらの点でステータスが上がったらいいと思うもの……。
知力か素早さってとこかなと思う。
でも知力ってどう上がるんだろう? ひらめき具合が良くなるとか、計算が早くなるとか、かな?
……素早さにしてみよう。どれくらい上がったら、自分で素早くなったと思えるかも考えていこう。
そう思って、そこからは毎日素早さの実を2つ買って食べてきた。
と言うわけで、現時点のポイント総数は30685ポイント。
そしてステータスは
名前:ミルカ(5) 人族
性別:女
レベル:3
職業:???
HP:50/51
MP:151/151
攻撃力:31
防御力:31
敏捷性:41
知力:51
精神:71
回避:90
幸運:80
スキル:生活魔法(火・水・土・風・光・無)
特記:ロングミッションクリア
身体能力アップ
最初より素早さは10あがった。10あがると実感できるみたい。
何かをさっとつかむとか、そう言うのが素早くなった気がする。
朝のルーティン、ポイントとステータスをチェックして、アドと顔を洗いにいく。
それから自分で髪をまとめる。
ひとりでトイレに行き、戻ろうとする。
「ミルカ」
呼び止められて驚く。ディックだったからだ。
直接話しかけられたのは初めてな気がした。
「昨日さ、街で見かけたんだ。商業ギルドに入っていかなかった?」
笑っているけど、目は笑ってない。
前世のお母さんが、誰かに「大丈夫?」って言われた時と同じ顔。
お母さんは「大丈夫よ。心配してくれてありがとう」といつも微笑んでいたけれど、同じように目は笑っていなかった。
そしてそう問いかけられた日は、いつもに増して痛くされた。
大丈夫って聞かれたのに、馬鹿にして!って家では怒ってた。目が吊り上がってた。思っていることは違う、そんな危うい何かを感じる。
わたしはのろのろと黒板を出す。
ーーお兄さんが行くから、連れてってもらった
わざとはっきりさせないで書く。
「お兄さんって、ダンジョン屋の人だよね?」
うなずく。
「毎日ダンジョン屋に行ってるよね、何してるの?」
少し考える。
「エバ兄ダンジョン入るとき、ダンジョン1階いたら冒険者に意地悪された。お兄さん、店にいていいって。お手伝いすればって」
言葉足らずにつけ足すように書けば、そういうことかとディックは納得したみたい。
「でもさー、あんまり甘えてそういうことするの、よくないんじゃないかな?」
ーーミルカ、よくわかんない
どうだ? これ以上何も言えないだろう?
案の定、わたしに言っても無駄だと悟ったのか、ディックはわたしの頭を撫でて歩いて行った。
エバ兄に聞いた。ディックは人にやらせるのだと。わたしたちのこと気にしてる。気をつけた方が良さそうだね。
案の定だ。街から帰ると院長先生にわたしたちは呼ばれた。
この頃毎日街に行っているようね? と確かめられた。
「街の人に迷惑をかけてはいけません。あなたたちの行動は孤児院みんなの評価となります。評価というと難しいかしら? あんたたちの勝手なことをすると、あの孤児院の子たちはみんな勝手だと思われてしまうの。だからしばらく街へ行くのはおやめなさい」
わたしは黒板を持ってこの部屋に入らなかったことを後悔した。みんな絶対「はい」って言っちゃう!
でもそれは覆される。エバ兄は言った。
「先生、おかしいです。先生はなぜ俺たちが迷惑をかけたと決めつけるのですか?」
先生の目が大きくなる。
「俺たちは確かに毎日街に行っています。ダンジョン屋のお兄さんのところでお手伝いをしています。しっかりと手伝うことができると褒美で物をいただいたりしています」
そう言って、わたしが髪を纏めているシュシュを指した。
「お兄さんが俺たちを迷惑だというなら、俺たちはもう行きません。けれど、明日も行く約束をしています。戦力になったと言ってもらっています。先生、信じてください!」
ファン兄も隣で力強くうなずく。
「……わかったわ。明日は先生も一緒に街へ行きます。そのダンジョン屋さんに本当に迷惑でないか聞きに行くわ。それでいい?」
わたしたちはもちろんうなずいた。
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