第13話 シュシュ

「あ、アド?」

「うまい。ポッポする。でも大丈夫。ミルカ、次からはこれ食べても平気」

 うっ。

「大丈夫? 本当に大丈夫なの?」

 ファン兄がアドを揺らしている。

 アドはうなずく。

 食べちゃった。食べられてしまった。

 アドはわたしがこっそり食べると思って、毒味をしたんだと思う。

ーーアド、素早くなった感じする?

 アドは小首を傾げる。そしてうなずいた。

「早くなったかも」

 うーーー、アドばっかり成長してどうすんのよ。あれ、ステータス画面ってみんなもそれぞれあるのかな?

ーーステータスって言ってみて

「「「ステータス」」」

 みんなきょとんとしている。何も起こらないらしい。

 あの画面もわたしだけの特別なものなのか。

「ただいま」

 お兄さんが帰ってきた。

 明日、商業ギルドに一緒に行くことになった。ラーメンは明日はお休みにするそうだ。毎日だと大変だから、1週間に一度お休みをとることにすると言った。

 代わりに商業ギルドに細かい打ち合わせに行くそうだ。

 わーい!


 翌日、わたしとエバ兄とお兄さんで商業ギルドへ行った。

 人がいっぱいいる。大人がいっぱいだ。踏まれないようにの配慮か、お兄さんが抱き上げてくれた。

 窓口に行くと

「ライアンさま」

 と声をかけられ、第三面談室に行くように言われる。

 ライアンお兄さんはさすが商売人、顔が広いようで、行きすがら声をかけられっぱなしだけど、不思議そうに抱っこされているわたしを見ていた。

 面談室に入り、椅子に座らせてもらったけど、机まで視界が届かないので、結局ライアンお兄さんの膝に座らせてもらう。

 ノックがあり、男性と女性が入ってきた。男性は父さんぐらいの年代で、髭を生やしている。女性は若く見えるけれど経験が豊富そうな自信がみなぎっている。

「こんにちは、はじめまして。私は商人ギルド職員のリム・トウセーと申します」

 男性の方が挨拶をすると女性も続けた。

「はじめまして。ラフラ縫製店のラフラです」

 ふたりは子供と幼児のわたしたちにしっかりと挨拶をしてくれた。

「はじめまして。エバンスです。それから妹のミルカです。よろしくお願いします」

「ライアンさまから聞いてはいますが、確認させていただきます。エバンスくんは10歳、ミルカちゃんは5歳で間違いないかな?」

「はい、間違っていません」

 エバ兄はハキハキと答えた。

「では、エバンズくんに商業ギルドのカードを作りますね」

 え? 商業ギルドのカード?

「彼は冒険者ギルドのカードをすでに持っていますので、それに上乗せしていただけますか?」

「承知いたしました」

 わたしたちが驚いて見ていると、お兄さんは言った。

「ミルカが考案しているけど、年齢でまだカードを持てない。だからエバンスのカードで特許を取るんだ。私がふたりの後見人となるから心配しなくていいよ」

 エバ兄と目があう。

 いいのかなー。

 面倒なことを引き受けてくれることの対価として、マージンをとってもらおうと思っていたんだけど、エバ兄のカードで作るとすると、面倒なことだけお兄さんが請け負うことになってしまう。

 お兄さんはギルドの人たちに向き合う。

「きのうお願いした通り、表向きは私が店を手伝ってもらうふうに。

 けれど非常に将来が楽しみな子たちですので、商業ギルドでもよろしくお願いします」

 お兄さんがわたしたちのために頭を下げてくれた。

「ライアンさま、とんでもないことでございます。我らは良い商品となりそうなことに引き合わせてくださることに感謝しております。こちらこそよろしくお願いいたします」

 お兄さんから、わたしが作りたいと言ったものは簡単に説明されていたようだけど、ちゃんと説明することになった。

 微かにふたりは、エバ兄ではなくわたしが説明することに驚いていた。それも黒板に書いているし。

 わたしはまず髪を結っているシュシュを解いて、テーブルの上に置く。

ーーシュシュです。簡単に髪を結ぶことができ、見栄えもするものです。

 触っていいかと聞かれうなずくとふたりは触って見て、中のゴムの飲み縮みに驚いている。

「これで髪を結ばれていましたね?」

 と言われ、わたしはシュシュを受け取り、ポニーテールにしてみた。

 解いてから、さっきまでと同じお団子にしてみる。

 二人はほーとかはーとか感嘆の声を上げている。

 わたしはずた袋からお兄さんの許可を得てもらった、髪ゴムとハギレを出す。

 ハギレを折り、こことここを縫うと指で指示する。

 そして中のゴムを結び輪っかのゴムにする。

 ハギレの端と端を縫えば中のゴムが見えないシュシュとなる。

 二人は感動している。

「これは、いいわね。簡単だけど布が違えば、印象も変わるし、布によって貴族が使えるようなものにもなるわ!」

「この、ゴムというのはどれくらいお持ちなのですか?」

 きらりとトウセーさんの目が光る。

「これはシュシュで頼む分しかおろしません」

 ええっとトウセーさんの顔が歪んだ。

 髪ゴムだけでなく、使えるものだとわかったんだろう。

 でもいずれ違った形態のものも作りたいから、この在庫は押さえておいて欲しいとお願いしておいたのだ。他のゴムもね。

 ダンジョンのどこで出るかわからないから、気軽に調達できないんだもの。

 トウセーさんはラフラさんにシュシュを作れそうかを尋ねた」

「はい、技術的には難しいことではないですから。これは売れると思います」と自信を漲らせた。

 そこからの細かい打ち合わせはお兄さん任せだ。わたしは膝の上でうつらうつらしてしまった。

 ライアンお兄さんは、もしシュシュが成功したら、また違うものをお願いしたいと思っていると告げて、商業ギルドを後にした。

 元手の話をしてからだけど、これで収入もある。やったー!


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