第4話初デート?
星奈に会う日がやってきた。
仕事は相変わらず多忙を極めていたが、今日のことを思うと頑張ってこれたし、時間があればどんなことを話そうか夢想していた。
とはいえ、今日は 2 対 2 でランチをするだけだ。
ここで自分のことを知ってもらえれば次は 1 対 1 で会えないか誘ってみよう。
ホテルのレストランを予約しているため、ホテルのロビーで成瀬と一緒に星奈たちを待っている。
レストランは高すぎず安すぎずというライン。もちろん成瀬チョイス。
「そんなに緊張はしてなさどうだな。」
「今日はサシじゃないしな。また会えるという喜びの方が勝ってるかも。あ・・・」
ホテルに入ってきた女性に目に入り、思わず声がでる。星奈だ。
「星奈さん!」
思わず笑顔になり軽く手をあげる。星奈もこちらに気づいて笑顔になる。
清楚な見た目にぴったりな落ち着いた綺麗系の服を来ている。
眼福だ・・・ん・・・?
一緒にやたらゴツい男がついてきているぞ。
寒いとまではいかないが、だいぶ涼しい時期になってきたにも関わらず半袖のシャツを着ており、太い腕が目立つボディービルダーのようなおじさんだ。
もしかして星奈さんの連れはこのおっさん・・・?
「碧川さん!遅れました!」
「いえ、今来たところですよ。時間ぴったりですね。」
星奈たちが目の前にやってきた。
「今日はわざわざありがとうございます。僕の同僚の成瀬です。」
「いえ、初めてのお店なので楽しみです。お店の店長の渋川さんです。」
お互いに挨拶を交わす。
やたらゴツいおじさんはコンビニの店長だったのか・・・どう見てもボディビルダーなんだが・・・。
やっぱり警戒されてる?
「渋川さんはすごい筋肉ですね。何かされているんですか?」
「昔はいろいろやっていたが、今では趣味でトレーニングをしているだけだな。」
「傭兵で文字通り世界中を飛び回って回ってたそうですよ。」
たった 1 回の会話なのに情報が多い。初対面の会話ってこんなに大変なんだっけ?
え、なに、今日悪いやつ認定されたら俺消されちゃうの?
イケメン成瀬も笑顔が若干引きつっているのがわかる。
「非常に興味深いというか、興味深すぎて話が終わらなくなるのでとりあえずお店に行きましょうか。」
そう切り出し、お店に移動した。
ーーー
「乾杯!」
お互いの自己紹介をしながら、ファーストドリンクが来たところで乾杯をした。
「成瀬さんは碧川さんと同期なんですか?」
「そうですね。今は同じプロジェクトに配属されているので話す機会も多かったので今回のことも成瀬に相談していて。」
「碧川は真面目で色恋の話はまったく聞いたことなかったんで驚きましたよ。いきなり告白してきたんでしょ?」
「うむ、店の中から飛び出すべきか迷っていたぞ。」
「その節はどうもご迷惑を・・・」
一歩間違えば俺の命はあの日潰えていたかもしれないのか・・・。一瞬体がぶるっとした。
「まあいきなりだと警戒しますよね。お前、生きてて良かったな。明日生きてるかは今日の結果次第だけど。」
「あ、別にそういう目的で渋川さんを連れてきたわけじゃなくて、友達があまりいないので今日は渋川さんにお願いしたんです。」
「星奈くんの人の見る目は確かなので心配しておらん。今日は友人として参加させてもらっておる。」
そう言いながら渋川の目は笑っていない・・・。
「星奈さんは今のお仕事は長いんですか?」
「半年ぐらいですね。」
「星奈くんが来てから客が増えた気がするな。たまに悪い虫がいるので駆除しておるが。」
こっちを見ながら言うのは怖いのでやめてほしい・・・。
「渋川さんはいつからあのお店を?」
「2 年ぐらいかな。」
「その前は傭兵をしていたんですか?どこかの国の傭兵部隊とか?」
「まあいろいろだ。別に犯罪になるようなことはしとらんが、あまり気軽に人に話せる内容でもないな。2 年前に引退して今の仕事をやってる。」
このおっさん、謎すぎる。キャラが強すぎて星奈さんに全神経を注ぎたいのに渋川さんのことが無視できない。
「渋川さんはモテるんですよ。」
「やっぱり筋肉か・・・筋肉が全てなのか。」
「確かに筋肉は嘘をつかんな。」
成瀬が深刻な顔をして言う。自分の筋肉を確認する。
「お前がこれ以上イケメンになったら困るので筋肉は現状維持にしてくれ。」
「星奈さんはマッチョが好きですか?」
「私ですか?強いに越したことはないと思いますけど、あまり考えたことないですね。・・・あ、私に敬語はいらないですよ。年下ですし。」
「じゃあお互いタメ口にしよう。」
そう言うと、我々若者たちは口調を崩した。
「というか、お前ずっと硬い口調でやり取り続けてたの?」
「いや、タイミングがわからず・・・」
ここからは若者たちで会話が弾んだ。
最初は渋川さんから見定められている気がしていたが、今は完全に保護者ポジションで暖かく見守っている感じだ。
もしかすると最初からそのつもりで、勝手にこっちが緊張しすぎていただけなのかもしれない。
ーーー
「今日はありがとうございました。」
あっという間に食事の時間は終わり、解散の時間となった。
碧川と成瀬は 2 人、並んで歩きながら駅を目指す。
「星奈さん、めちゃ可愛いな。」
「だろ。めちゃ可愛いんだよ。」
「渋川さん、謎だな。」
「キャラ強すぎるだろ・・・最初、俺はここで終わるんだと思ったよ。」
星奈さんの笑顔を反芻したいのに心の中には渋川さんの筋肉が蘇る。
「別に悪い印象はないだろうし、次は 2 人でのデートに誘ってみろよ。」
「そうだな、誘ってみる。」
「じゃ、俺はここで。また会社でな。」
「おう、ありがとう。」
そういうと成瀬は 1 人、地下鉄の階段を降りていった。
ーーー
まだ食後の昼下がり、空はだいぶ明るい。家に帰るのも早いなと思い、特に目的もなく目に入った書店に入りブラブラと見て回る。
欲しい本があるわけでもないのだが、書店の本がたくさん並んでいる感じがなんだかワクワクして平積みの見て回る。
ふと、携帯が鳴る。
もしや星奈さん?
ドキドキしながら見ると、妹からだった。
碧川には大学生の妹がおり、地元の大学に通っている。
仲は良く、たまに他愛もない連絡が来る。
『くんくん・・・女の匂いがする・・・』
え、なに、俺、監視されてるの?
思わず周りを見回すが、もちろんいるわけはない。
続きのメッセージが来る。
『ゆーくんの恋愛運、爆上がりのストップ高らしいよ。今のうちに全力で信用買いするべしって神社のおみくじで出たよ。』
地元には神社があり、そこの子供が幼馴染だった。
妹とも仲が良いので神社に会いに行くことがあり、そこでおみくじを買ったのだろう。いない人の分をそこでなぜ買うのか不明だが。
とはいえ、神様からも応援してもらえている気がして勇気がもらえた。
『暴落しないことを祈っていてくれ。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます